増える幼女
レキの進化先の候補は三つ。
今の種族である『
盗賊から派生した種族である『
最後が、一番わからない『
今のレキの役割を考えるなら、正当進化の『
だけどクーリエとミュールの進化を見届けた私は、レキの進化にはこだわりがあった。
クーリエとミュールが姉妹みたいな感じになっているのだから、レキだけ骸骨のまま仲間外れはよくない。
ここまできたら私は三姉妹が見たかった。
「『
他の進化先はちゃんと種族名に骸骨がついている。
それでは三姉妹にはなってくれないだろう。二人の姉妹と一体の骨になってしまう。
となると消去法で『
吸血鬼やリッチと比べて知名度が足りていないのか、聞いたことがないアンデッドだった。
どんな魔物なのか、ちょっと予想がつかない。
「でも、一択だよね」
そう言って、自分を納得させる。
私は幼女三姉妹を揃えたいのだから、レキを骸骨のままにするわけにはいかないのだ。
賭けだけど、召喚魔法は私や魔物たちの意思を汲んでくれる。
きっと、『
「
光に包まれるレキを固唾を飲んで見守る。
やがて光が収まっていき進化したレキの新たな姿が顕になると、私は思わずガッツポーズを作った。
「やった!」
進化したレキの姿は、やはり幼女。
クーリエとミュールと同様の真っ白い肌。真っ白の髪はポニーテールに結ばれている。
目の色は黒色。
服装は進化前の時と同じような、胸当てとショートパンツの露出の多いもの。
首に巻いた長いマフラーが口元を隠していて、なんだか忍者っぽくもある。
「あるじ様!」
三度目ともなれば慣れたもの。
さあ来い、と構えた私の腕の中にレキが飛び込んできた。
「ご主人っ!」
「マスター」
一緒になって飛びついてくるクーリエとミュール。
幼女ハーレムである。
「えへへ」
三姉妹がかわいすぎて思わずにっこりとした笑顔になってしまうよ。
さて、三姉妹との戯れもそこそこに能力を確認しないとね。
レキが進化して得たスキルは『隠密』と『消音』に加えて『
なんと三つもスキルを獲得している。
『隠密』と『消音』はスキル名通りの効果。
そして『
この三つのスキルはそれぞれひとつずつだと、クーリエの『
だけどそれぞれが支え合うようなシナジーを発揮していて、全く無駄のない強力なスキル構成となっていた。
罠解除のスキルも変わらず持っているので、罠解除要因をしつつ『隠密』『消音』を駆使した偵察もできる。
そしていざというときは『
とても優秀な能力と言えるだろう。
「レキ、あなたのスキルを見せて」
「はっ!」
目の前にいたはずのレキの姿が、霞のように消えてしまう。
音や気配すらも感じない。
私の能力が魔力以外ものすごく低いから見失っているのかと思ったけど、他の仲間たちも見失っているみたい。
恐るべき隠密能力だ。
レキを見失ったままの私だったが、突然耳元から声が聞こえてくる。
声の方を見れば、探していたレキが何事もなかったかのように立っていた。
「あるじ様! 終わりました!」
「えっ、あれ。ゴブリンは……」
「あちらに」
レキの指の示す方を見やると一匹のゴブリンがいた、
しかし、その様子がおかしい。そこから微動だにせず、動かないのだ。
ふと、何か違和感を覚える。
よく見ると、ゴブリンの首がゆっくりとズレていくのだ。やがて完全に首が落ちていく。
首を斬られたゴブリンは生き絶え、その場にどさりと倒れてしまった。
すごい。
私は隠れたレキの姿をまったく見つけられなかったし、暗殺する瞬間すら気づかなかった。
恐るべき暗殺能力。
びっくりである。
「すごい……」
「それがしはあるじ様の影ゆえ。当然のことです」
「忍者だ……」
得意気なレキを撫でると、きゃあと喜ぶ。
忍者だけど幼女であった。
リーフィスの持っていた匂い消しの迷宮器をレキに預けることにした。
リーフィスは自前で『消臭』のスキルを獲得したからもう必要なくなっていたのだ。
他に必要な仲間もいなくて、このままだと使い道がなかった。
だけど気配と音に加えて匂いが消えれば、レキはより隠密行動がしやすくなるだろうしうってつけだ。
そんなところで、次の進化はリーフィスだ。
リーフィスの進化先は一択『
悩むことは何もないので、さっそく進化させることにする。
「小さくなるスキルとか取れないかな、どう?」
「ゔぇあ゛」
そんな要望を言ってみた。
このまま一直線に進化していくとなるとどんどん巨大化していきそうな気がする。
体が大きくなるのは盾役という役割を考えるならありなんだけど、ダンジョン内みたいな閉所での行動に支障が出るから大きさが可変式だとありがたい。
そのため、今のうちになんとかできるスキルを獲得してほしいんだけど。
……我ながら無茶苦茶言ってるね。
だけど、当人のリーフィスにはよくわからない顔をされた。
この子は進化でわざわざ戦闘に関係のない『消臭』スキルを持ってくる感じのアホの子だ。
どうなるかな。
「
大きなリーフィスの体を光が包む。
それが収まると、そこには鎧を見に纏ったリーフィスの姿があった。
ヴィクトみたいな騎士鎧ではなく、肌の大部分に直接装甲が張り付いたような姿だ。
体の腐敗した部分が少し少なくなり、顔には怒った悪魔のような面が張り付いている。
ただ、大きさは今までと変わらずだった。
「スキルは……『収縮』! ナイスだよリーフィス!」
リーフィスは見事に私の要望通りのスキルの手に入れてくれた。
契約した魔物を進化させること自体すごいのに、その方向性や能力まである程度の希望が通る。
やっぱり、召喚魔法ってとんでもないチート魔法だよ。
新たなスキルの『収縮』はその名前の通り、小さくなれるスキル。
試しにリーフィスに使わせてみたら、成人男性の身長くらいまで縮むことができた。
今の大きさなら元の身長でも困る場面はあまりないと思うけど、今後の進化でもっと巨大化していくのだとしたら必須のスキルだ。
これでこの先どんどんリーフィスを大きくしていくことへの憂いがなくなるね。
リーフィスは加えてもう一つのスキルを獲得した。
防御力と状態異常耐性が上がるというリーフィスにもってこいの効果を持つ『頑健』というスキルだ。
進化によって耐久力と防御力が上がり、さらに『頑健』のスキルも得たことでますます盾役として磨きがかかった。
これでヴィクトとテオドール以外の全員が進化して、みんなC級魔物になった。
これだけの戦力を味方につけた私は、いよいよ自分の強さというものに胸を張れる。
だけど、まだまだ強くなる。
さしあたってはヴィクトとテオドールの進化。
C級の二体が進化すればB級の魔物となる。
それは、強者へと続く道の第一歩だ。
だけど時間を確認すると、もうかなり遅くなっていた。
進化させるのが楽しすぎて夢中になりすぎていたようだ。
今日は一度寮に帰って、また明日ダンジョンに来る。
レベルを見れば、ヴィクトとテオドールはすでに進化間近。
ついに明日、この二体は進化する。
今から楽しみで夜眠れるか心配だよ。
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