進化ラッシュ
レヴール王立学園に入学してからもう一ヶ月が経つ。
思えば私はダンジョンばかりの日々を送っている。
学生らしい青春やらなんやらとはまったくの無縁だ。
ダンジョンが楽しすぎるのがいけない。
「さあ、今日もダンジョンだ」
いつも通り11階に降りて、魔物たちを召喚するとさっそくホブゴブリン狩りだ。
魔物たちのことはこまめに鑑定でチェックしている。
レベルが上がってると、嬉しくなってモチベーションに繋がるからだ。
レベルが上がるたびに達成感を感じられる楽しい楽しいレベリング。
今日はとくに楽しくなりそうな予感がする。
魔物たちを鑑定で見る限り、そろそろ進化しそうな感じなのだ。それも全員。
最初の仲間であるヴィクトは初めての進化が近く、テオドールとクーリエにミュールは二度目の進化だ。
楽しみに決まってる。
「進化どうなるかなー」
なんてワクワクしながらホブゴブリンをしばき回す。
すると、さっそく進化可能になった魔物が出てきた。
それもほぼ同時に二体。クーリエとミュールだ。
D級のヴィクトとテオドールと違ってこの二体はE級。レベルが上がるのが速かったため、予想通りの順番だ。
「
今回の進化では、なんと二体とも複数の選択肢が出てきた。
その中から私が選んだのは『
その名前の通り近接戦闘方面に成長したクーリエと魔法が使えるようになったミュール。
面白いのがクーリエの進化先に骸骨術士がなく、ミュールの進化先には骸骨戦士があったこと。
「魔物の進化先には経験とか過程が反映されるのかな?」
骸骨戦士に関しては、二体とも棍棒で戦っていたから出てきた進化先。
骸骨術士が出てきたミュールの場合は、多分だけどそれっぽい格好をしてたことが要因。こっちはちょっと自信ないけど。
「そう考えると、しっくりくる」
それともう一つ、二人揃って『
「これって、結構すごいことかも」
この仮説が正しければ、魔物の進化先をある程度狙ってコントロールできる可能性がある。
弓を使わせていれば骸骨弓士が出たかもしれないし、剣を使わせてれば骸骨剣士が出たかもしれない。
「要検証だね」
それはともかく。
骸骨戦士へと進化したクーリエは攻撃性能が増した。
攻守に優れたパワーファイターのヴィクトに対して、骨の体の軽さを活かしたスピードファイターって感じかな。
服装もどこから出てきたのか皮製の軽鎧を着ている。
武器はもともと持たせていた棍棒よりも大きいものに変わっていた。
これらの装備はヴィクトの大剣と同じように出し入れ可能みたい。壊れても『再召喚』で修復できるようになったわけだ。
でも、スピードファイターのクーリエに荷物持ちさせると荷物の重さで速度が落ちるから悩ましい。
ミュールの方は新しく『闇魔法』を使えるようになった。
攻撃もできる魔法だけど、デバフとか状態異常付与の方が得意な魔法。
ペストマスクを被りながら毒や麻痺をばら撒く姿はあまりにも似合っていた。
こちらも装備させていたローブやペストマスクがそのまま取り込まれたみたいで出し入れ可能になっている。
ミュールは魔法で戦闘に貢献できるようになったので前衛に出る必要がなくなった。
クーリエとは逆で荷物持ちとしての性能が上がったお利口さんである。
「見た目は二体ともあまり変わらないけど」
でもこれで戦力は一気に上がったかな。
ヴィクトと並んで戦える前衛が増えたのは良いことだし、後方から攻撃や妨害ができるミュールも活躍が期待できる。
荷物持ちは、また骸骨拾ってこようかな。どうしよう。
二体が進化したおかげでホブゴブリンの殲滅スピードが一気に上がった。
そうなるとレベル上げのペースも上がり、あっという間に進化可能レベルに達する魔物が出てくる。
「
次に進化したのはヴィクトだ。
白銀の鎧がスマートで洗練された造形へと変わる。
背中には黒いマントが追加されていて、兜の頭頂部からは長い羽飾りがポニーテールのように
「わああ……かっこいい!」
D級魔物の
能力的には攻撃力、防御力、耐久力がかなり伸びている。
さらに、『斬波』というスキルが追加されていた。
どんなスキルなのか、さっそく使ってみることにする。
「ヴィクト! 斬波!」
力を溜めるように構えたヴィクトが大剣を振るうと、大きな青白い三日月型の衝撃波が発生する。
衝撃波は振るわれた剣の軌跡通りに真っ直ぐ進んでいき、その先にいたホブゴブリンを真っ二つに切り裂いた。
ホブゴブリンを切り裂いた斬撃はなおも突き進み、さらにもう一体のホブゴブリンを両断したところで霧散する。
「すご! かっこいい!」
まさかの飛ぶ斬撃だ。
溜めはいるけど、威力と貫通力のある遠距離攻撃。
ヴィクトは今まででも私の魔物たちの中でエースと言えるような存在だった。
先頭に立って大剣と大盾を使い敵を斬り、あるいは味方を守り。
頼れる前衛の騎士はその性能をより高め、さらに遠距離攻撃まで可能にした。
隙がない強さだ。
「ヴィクトは私の自慢の騎士だよ!」
私の言葉を聞いたヴィクトは大仰な仕草でマントをばさりと翻し、左膝を立てて私の前に跪いた。
なにそれかっこいい。
私はなんとなく知っていた知識を使って、なんとかヴィクトのかっこいい騎士ムーブに合わせてやることにした。
中世ファンタジーでよく見るあれ。
跪く騎士の肩を剣でポンポンとするやつだ。
だけど、私の力じゃヴィクトの大剣は重すぎて持ち上げることすらできない。
仕方ないので、解体用の短剣で肩を叩いた。手元にある刃物はこれしかなかった。
棍棒はあったけどこれじゃさすがに見栄えがね。
「騎士ヴィクト。えーっと、その剣と誇りを持って、より一層……ち、忠義に励みなさい」
なんかそれっぽい言葉を即興でかましてやった。
ヴィクトの嬉しそうな様子がなんとなく伝わってくる。
適当な感じになったけど、ヴィクトが喜んでくれるなら良かったよ。
後ろでクーリエとミュールもヴィクトを祝うように手を叩いている。
自分の能力で浮いたテオドールは私の腕からふよふよと離れてヴィクトの頭に乗っかった。
これも祝ってるのだろうか。
みんな仲良しだね。良いことだ。
その後もホブゴブリン狩りを続け、最後の仲間が進化可能になった。
テオドールの二度目の進化だ。
私はさっそくとばかりにテオドールを進化させる。
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