荷物持ち
推定ヒロインのシェリーが順調に第二王子と仲良くなっているのを横目に、ひっそりと一週間を乗り越えた私は今日も元気にダンジョンだ。
ヴィクトとテオドールがいれば11階のホブゴブリン相手には苦戦なんて一切しないのでレベリングは捗る。
だけど、たくさん倒せる分ホブゴブリンの素材を全部持って帰ることができないことが前回の探索で判明した。
なので、今日は荷物持ち係として新しい魔物と契約することにした。
魔法鞄はまだ弱い私が手を出していいものではない。単純にお金もないし。
だからここは召喚士の利を活かした手数で勝負。
荷物持ちの魔物を増やすというシンプルな解決策である。
そんなわけでやってきたのは王都ダンジョンの4階。
「ホラーだなあ」
ここに出てくる魔物は『
名前の通り、人間の骨格模型のような姿をしたアンデッドだ。
怖い人は怖いだろうな。
11階まで進んだ中で荷物持ちができそうな魔物はこの
他は動物型だったりして荷物を持たせるには向かなそうな魔物ばかり。
動物型でも大きければ駄獣にできるだろうけど、良さげな魔物はいなかった。
「ゴブリンは嫌だし、ホラーだけど契約するならこっちだよ」
ゴブリン系は見た目もあるし、ちょっとイメージが良くない。
ということで抵抗感があったので、
一応、同じ魔物でも個体差で能力の違いがあるので、鑑定で能力を見て少しでも強いやつを探してみる。
荷物持ちとはいっても、それだけしかさせないわけじゃない。
戦わせる場面もあると思うから妥協はしない。
とは言ったものの正直なところただの私の凝り性だ。
そんな感じで
骨格から見た感じ、多分二体ともメス。
身長は低めの私よりは高いけど、成人男性ほど高くはない。
まあ、専門家じゃないので骨格で男女差なんてあまりよくわからないのでどっちでもいいか。
そもそもヴィクトもテオドールも性別がわからないし、そもそもあるのかすらわからない。
なんとなくだけど、多分ヴィクトとテオドールはどっちもオス。
この
「君たちの名前は……荷物持ちだからクーリエとミュールね」
安直などと言ってはいけない。
この二体は他の
荷物持ちだけど。優秀な荷物持ち。
「それにしても、これは召喚士ってよりネクロマンサーだよ」
私の前に並ぶ魔物たちを見て呟く。
動く鎧こと
分類で言えばみんな見事にアンデッド。
ヴィクトと契約したときはそんなこと気にしてなかったし、テオドールと契約したときは成り行き。
クーリエとミュールは荷物持ちに適した魔物ということで効率重視。
望んでいたわけではないけど、結果としてネクロマンサーみたいになってしまっている。
別に嫌ってわけではないけど、勘違いされてしまいそうだ。
「まぁ、召喚士もネクロマンサーも似たようなものか」
それはさておき、クーリエとミュールに持ってきた大きなリュックを背負わせる。
これで荷物持ちの完成だ。
この二体にも少しは戦闘させるけど、あくまで荷物持ちがメイン。
それでもヴィクトとテオドールが魔物を倒せば多少の経験値はもらえる。
実際に魔物を倒すよりも経験値は少ないけどレベリングにはなると思う。
余裕を持って倒せるくらいの敵と戦わせる感じかな。
「よし、今日も狩るぞ〜」
荷物持ちは確保したけど、まだ時間はありそうなので11階に行ってホブゴブリン狩りを始める。
ヴィクトとテオドールが強くなってるので前回以上のペースでホブゴブリンを狩れるし、クーリエとミュールの荷物持ちのおかげで素材回収も万全。
レベリング作業がより効率的になって満足。
しばらくホブゴブリンを狩っていると、早くもクーリエとミュールが進化できるようになった。
「F級でレベルも低いからあっという間だ」
直接戦っていないとはいえ、E級魔物の経験値の分け前をこれだけもらえばF級の二体のレベルはもりもりと上がっていくのだ。
すぐに二体を進化させることにした。
今回も進化先は一択。選ぶ必要もない。
「
光に包まれた二体が進化すると、テオドールのときとは違って変化があった。
今まではただの骨格模型で、渡したリュック以外何も身につけていなかった。
それが進化した結果ボロボロの布切れを衣服として纏った姿へと変化した。
「バークラント……浮浪者だっけ」
進化した種族はE級魔物の『
ただの骨が進化して、浮浪者の骨になったというわけだ。
それでいいのだろうか。
能力は魔力方面に特化したテオドールと違って、全体的に上がった感じ。
やっぱりもとの能力の高さが原因か、すでにこの階層のホブゴブリンよりも強そうな能力をしていた。
「これなら戦闘に参加させても良さそうかも」
ホブゴブリンから現地調達した棍棒を二体に渡すと、ぶんぶん振り回して狂気乱舞している。
骨だけどちょっとかわいい。ちょっとね。
二体を戦闘に加えたことで、ホブゴブリン狩りのペースはさらに上がっていく。
いくら荷物持ちがいるとはいえ、棍棒は大きすぎるので回収できない。
魔石と薬の素材になるらしい角を回収していく。
クーリエとミュール、それと私自身が背負う三つの大きなリュックのおかげで大量の素材を回収できているので換金が楽しみだ。
だけど、今日の探索を切り上げようというタイミングで問題が発生した。
「これ、どうやって持って帰ればいいんだろ」
ダンジョンに来る時はいいのだ。
空のリュックなんて軽いもので、三つくらい平気で持って来れる。
しかし、ダンジョンを出てからギルドに行くまで、この素材がパンパンに詰まってものすごく重くなったリュックをどうやって持っていくかが問題だ。
今になって気づくのは我ながら間抜けだった。
「どうしよ……」
当然だけど、クーリエとミュールの骸骨コンビを街中で出しっぱなしにするわけにはいかない。
一般人はみんな怖がるだろうし、衛兵がすっ飛んでくる恐れがある。
かといって、私の腕力じゃ重たいリュックを三つ持っていくのは無理があった。
才能的な問題なのか、レベルアップしても私の能力は魔力ばっかり伸びて身体能力はあまり上がらないのだ。
直接戦闘しようなんて思わないので、この成長曲線は悪くないのだけど今回ばかりは不運だった。
「仕方ないかあ」
悩んでも名案は浮かばず、もう開き直ることにした。
二つのリュックをヴィクトに持たせるのだ。
大剣と大盾は出し入れ自由らしいのでしまう。
そうして空いた両手にリュックを持たせてギルドまで運んでもらうことにしたのである。
ヴィクトも見た目が人外に見えるけど、骸骨よりはマシなはず。
「いけるかな?」
ちょっと不安だった。
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