第97話 5人の結束


 アルセルライドは俺と璃緒が接近しようとした瞬間大きく背後に飛んで、攻撃をかわす。俺たちの攻撃は届かない。


 後方にある大きな岩の上に立ったアルセルライドが、余裕そうな表情で言う。


「貴様の戦術はだいたい理解している。強い相手でも、必ず臆することなく向かっていく。今回も、絶対に来るとおもっていた」


「随分と、俺のことを研究済みなんだな」


「当然だ。二度と、貴様たち負けるつもりはない」


 負けるつもりはない」


 俺の動きを、研究しているという事か。やはり、本気で俺たちを倒そうとしているのがわかる。ここまで俺たちの動きを読んでくるとは。それなら、俺たちだってこつぇ得ないと。



 そして──くる。俺の直感が叫んだ。アルセルライドが杖をこっちに向けてきた。その魔力から、攻撃が来るというのがすぐにわかる。


「流石だ、コンビネーションは完璧。素晴らしい、だが──これにはかなうまい」


「負けないのじゃ。こっちも応戦するのじゃ」


「はい、行きましょう。自分たちの全部をぶつけて」


「そうだな」


 アルセルライドの杖の先端、大きな球状の魔力の塊。向かってきたのをよけてきたところで爆発からは逃れられなさそう。それなら、打ち勝っていくしかない。それに、アルセルライドだって俺たちに勝とうと全力を出してきている。それなら、俺たちだって全力で立ち向かっていくのが筋だ。




「カオスに秘めたる聖なる雫。大いなる道筋──虐げられものに運命を切り開く力与えよ。

 ダークネス・カオス・テンペスト」



「集いし願いの結晶よ・今悠久の時を超え、聖なる力を放て・スターダスト・スレイシング!!」


 2人とも、最大火力の術式を放っていく。俺も負けずに続かなきゃ。

 そして俺。今までで一番大きな術式をアルセルライドに放っていく。手加減は一切いらない。俺たちの、一番強い攻撃をぶつけるために。


「勇者の咆哮よ、今赤く光り輝く力となれ、シューティングスター・エアレイド!」


 俺が作り出したのは、赤い色の風。それが、大嵐となって2人の術式と合体。

 そして、一斉にアルセルライドへと向かっていく。そして、両者の攻撃は衝突。



 3人とも全力で応戦しようとするが、少しずつ、押されてしまう。ここまで強いとは──このままでは負ける。


「まずいです。私が最後まで、ここにいるので2人は逃げてください」


 璃緒が、必死に魔力を出しながら叫ぶ。自分を犠牲にしてでも周囲を守ろうとしているのはさすがだと思う。俺たちと会う前も、こうして周囲のために行動していたんだろうな。



 それ自体はすごいし、さすがはリーダーだって感じる。けど、そんなこと──俺自身が許せない。

 璃緒だけ犠牲にして、自分は助かろうなんてこと、あっていいはずがない。


「そんなことはさせない。璃緒を一人で置いていくなんてことはしない」


「わらわも同じ意見なのじゃ!!」


「そんな……」


 ネフィリムも強気に言う。当然だ。ネフィリムだって同じことを考えているのだろう。俺だって、そうだ。仲間を見殺しにして、おめおめと一人変えるなんてできない。



「璃緒──それをするなら、このパーティーでは俺だ。だって、俺がリーダーなんだから」


「そ、そんな」


 そうだ。璃緒はあくまで、他パーティーの人間。この状況で一番逃げていい存在だ。そして、璃緒が言っていた行動をとるべきなのは、どっからどう考えたって俺。


 迫ってくる攻撃。俺が逃げたら璃緒とネフィリムが攻撃を受ける。だから逃げるわけにはいかない。


 そして、もう少しで攻撃が直撃しそうになったその時。


「うちらがいるでー!!」


 後方から叫び声が聞こえたかと思うと、2発の光線がアルセルライドの攻撃に直撃。そして、その攻撃のおかげか俺たちの攻撃は少しずつ押し返していく。


 そして──アルセルライドは押されているのを理解したのか攻撃をやめ、体を投げて回避。俺たちの攻撃がアルセルライドにがいた場所に直撃して大爆発を起こす。何とか危険なところは回避できた。


 誰かが応戦してくれたようで、いったい誰なんだろうか。


 俺たち以外に戦っている人なんていたっけ──。心の中で首をかしげながら、後ろを振り向く。



「誰だ? こいつらの技ではないぞ」


 アルセルライドが驚いてこっちを見る。誰なのかは、俺も気になる。その姿を見て、安心した。


 ああ、おまえたちだったのか──

 そこにいたのは、かなとろこの姿。ここまで走ってきたのか、軽く息を上げながらこっちを見ていた


「澄人君、間に合って本当に良かった」


「そうやで。あと少し遅かったら、あんさんたちは星屑みたいになっとったで」


 確かに、その通りかもしれない。本当に、2人に命拾いさせてもらったという感じだ。



 加奈はほっとしたような、ろこは腰に手を当て、自信満々の表情で言う。まあ、本当に2人が来てくれて助かった。

 璃緒とネフィリムも、安心したような表情をしている。


「加奈さん、ろこさん。助かりました。ありがとうございます」


「そうなのじゃ。助かったのじゃ」


 しかし、疑問は残る。


「どうして、2人がここにいるの?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る