第96話 本気で、ぶつかり合う
「貴様らしいのじゃ。わらわたちも、全力で戦うのじゃ」
そして、俺たちは再び立ち向かっていく。
アルセルライドがこっちに杖を向けてきた。攻撃が来そうだ。杖に込められている魔力が、強くなっていっているのがわかる。
「させません」
璃緒が攻撃をさせまいとして、距離を縮めていく。
呪文には詠唱が必要な以上、それをさせないように先手を取って攻撃をつぶしに行くという発想は悪くない。
攻撃側は自由にタイミングと場所を選べるのに対し、防御側は攻撃側がそれを選択してからしか対応できないからだ。
しかし、アルセルライドほどの敵がそれに気づかないはずがない。当然対策はしておるはず。
「お見通しじゃ!」
アルセルライドは詠唱を中断、杖を璃緒に向け、紫色の光線を放ってきた。璃緒はそれに気づいて、慌てて障壁を張るものの、攻撃が強力だったようで障壁は一瞬で破壊。
璃緒の体が大きく吹き飛ぶ。宙を舞う璃緒の体、そのスキを、彼らが見逃さないはずがなかった。
デスヒプノスとブラックドラゴンが一気に璃緒に突っ込んでいく。
まずい、何とか援護しないと。ネフィリムとアイコンタクトを取って、救援に向かう。
まず慌てて障壁を張る。璃緒が張った障壁よりも、ずっと頑丈なもの。
そこに、デスヒプノスとブラックドラゴンが急接近こっちも負けずに応戦
何とか攻撃を受けるが、押し返されそうになる。やっぱり、ラスボスだけあってパワーが違う。
まともに受けようとすると、全部力負けしてしまうくらいだ。なんとか力を受け流すようにして攻撃を受ける。幸い、この2体は頭が良くない。良くも悪くもパワーが強くて、力任せに殴ってくるだけ。
それだけなら、十分対処法はある。そう考えて応戦していると、後ろからネフィリムの叫び声か聞こえた。
「負けないのじゃ!! わらわが吹っ飛ばす。そこをどくのじゃ!」
ネフィリムの杖から、強力な魔力の気配。ああ──真っ向勝負でこいつらを倒すつもりなんだな。
ネフィリムは、からめ手を使うつもりはないようだ。あくまで、パワーで押し切って勝利するらしい。
脳筋というか、ネフィリムらしいというか。
まあ、ネフィリムがその気ならそれに任せよう。ネフィリムが強力な術式を放つ。
青白い色をした砲弾を3発繰り出し、それぞれの敵に向かって投げだす。
アルセルライドは障壁を張って攻撃を防ぐ。相当強い障壁だったようで、ヒビ一つ入らない。これは、ダメージを与えるのにかなり苦労しそうだ。しかし、デスヒプノスとブラックドラゴンの障壁は比較的柔らかかったようで一瞬で障壁を破壊することができた。
ドォォォォォォォォォォォォォォォンンンンン!!!!
大きな爆発音。
デスヒプノスとブラックドラゴンが大きく吹き飛び、デスヒプノスは後方に数十メートルほど吹っ飛ばされ、背後にある大木に激突。
空を飛んでいたブラックドラゴンは攻撃が直撃するなり、地面に落下。
そして、両者ともぴくぴくと体を動かすだけ、それ以上全く動かない。
「流石はネフィリム、素晴らしい実力じゃないか」
「礼には及ばぬ」
それでも、ゆっくりと立ち上がろうとするデスヒプノス。そこに。俺が大きく一撃を加えた。
光線状の攻撃が直撃。再びデスヒプノスの肉体は後方に吹き飛び、倒れこむ。
まあ、強かったけど決して勝てない敵じゃない。今まででも、このクラスの敵と戦ったことはある。十分倒せる相手だ。
「これで、残ったのは貴様一人じゃ。貴様の周りにいる取り巻きは、もういない、観念するのじゃ」
ネフィリムがそう言って、強い目線をアルセルライドに向けた。そうだ。これでアルセルライドは戦おうとすれば俺たち3人を一度にしなければならない。
いくらこいつが強いとはいえ、それは簡単ではないはず。しかし、アルセルライドは余裕そうな表情を崩さない。
視線を下に向け、「ククク」といった具合に笑い声をあげた後こっちに視線を上げてから、杖をこっちに向けた。
「そんなことで諦めるくらいなら、最初からここにはおぬよ。ネフィリム」
「なんじゃ? 愛の告白か?」
「貴様を倒すと、心に大きく誓った。負けるつもりは一切ない。覚悟しろ」
そして、アルセルライドは再び攻撃を仕掛けてくる。彼から発せられる魔力が、今までよりもはるかに強いのがわかる。そして、デスヒプノスとブラックドラゴンの肉体が灰色に光始める。
気配からわかる。こいつらの魔力が、アルセルライドに吸い込まれているんだ。
2匹の魔力の源が、灰色の光になって、吸い寄せられるようにアルセルライドの杖へ。
「これで、わしの魔力は貴様たちを上回った。今までよく善戦した。だがそれまでだ。この一撃で、おまえたちはこの世から消え去るのだ」
「その言葉、ハッタリでないというのがわかります。すごいですね、魔力」
「ああ。奥の手を持っていたとはな」
璃緒の言葉通りだ。アルセルライドから発せられる魔力は──さっきよりもはるかに強大。だ。デスヒプノスとブラックドラゴンの分まで強くなっている。
今まで感じたこともない、それこそネフィリムとの決戦の最終決戦の時でも。そんな魔力はなかったくらいだ。
俺と璃緒が、急いで距離を詰める。発動させたら──俺たちに対抗する術式はない。発動させないように、常に攻撃を仕掛けないと。
そう思ったが──。
「甘いな。その手はすでに読めている」
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