第87話 次が最後??


「あーそういえば、璃緒はんがからすみはんと一緒にいるのって、期間限定やったんやったな」


 そうだ……ろこの言うとおりだ。今まで当たり前のように璃緒と一緒にいたが、

 璃緒はもともと「エンシェント・ロマン」の一員。今は仲間たちが負傷している影響で俺たちのコラボという形で一緒にいるが、仲間たちの怪我が治れば必然的に「エンシェント・ロマン」に復帰することとなる。



 ネフィリムだって、いつまでもここにいるかわからないし、加奈とろこだって、俺たちと別行動になる。そういう意味では、離れ離れにはなるな。


「そういえば、他の人たちは退院しそうなんですか?」


 加奈の質問に、璃緒は口元に人差し指をくっつけて答える。


「そうですね……ほかの人たちは──来週から退院して、復帰するそうです。時期的に、あと2回くらいですかね、からすみさんと一緒にダンジョンを潜るのは」



 今まで一緒にいて、それが当たり前になっていたからもの寂しい感じだ。


「そういえば、璃緒はんのところの優愛はん──やったな。こないだソロで実況しているのをみたで」


 ああ……璃緒のパーティーにいた、金髪で棘のある女の子だっけ。


「確か『ちびまりこたん、おこずかいギャンブル大作戦』の配信をしていたんだっけ」


「そやそや。そんで、理不尽に金取られてむっちゃキレてたで」


「ああ……配信者の中でも、ひどいって噂になってますね」



 いわゆるバトルをしないキャラゲーってやつか。どんなゲームか俺はわからないが、視聴者の一人が内容を知っているらしく、コメントしてくれた。どれどれ……。



 いわゆるバトルをしないキャラゲーってやつか。どんなゲームか俺はわからないが、視聴者の一人が内容を知っているらしく、コメントしてくれた。どれどれ……。


“静岡県の町全体がさ、現金をかけてギャンブルをする場になってるんだよね。そこでさ、小学生の女の子が友達やじいちゃんばあちゃんとギャンブルをして金を増やして欲しいものを手に入れるゲームなんだって。ちなみに現金をそのまま賭けてるという”

“完全に賭博罪で草”

“ちなみにそのゲームもスロットにチンチロ、じゃんけんみたいに運ゲーばかりだとか”


「コメントの言うとおりです。優愛が突っ込みまくってました」


 引きつった笑みを浮かべる璃緒。優愛から聞いた言葉が、相当だったという事がわかる。


「ギャンブルですが、完全に運ゲーでどうしてもお金が尽きるときがあるそうです。そしてその種銭がなくなると、神社の賽銭箱の前で何度も周囲を探さなければいけないらしいです」


“それで、一定確率で再選を探しているうちに10円が落っこちているから、それでギャンブルを戦えってことみたい”


「それ、賽銭泥棒だよね?」


“ああ、一応。泥棒ではなく「たまたま」賽銭箱の近くに10円が落ちてたってことだからね”


「わかった。たまたまねたまたな」


 あれも、クソダンジョンとして有名になっているらしい。

 賽銭泥棒みたいなことをしてなんか笑えるな。けど、おかしいのはそれだけじゃないとか。


「おまけに、家に帰るといたやろ? あのカミナリを落とすお母さん」


「ああ、まりこちゃんのお母さんね」


「あれさ、たまに帰ってばったり出くわすとまりこちゃんが貯めたお金を没収されちゃうんやって。今までギャンブルで貯めたお金が全部なくなるという」


「一応『お母さんが預かっておく』っている体裁なんですけどね……帰ってくることはないです」


「そこは現実を準拠してるんだね」


 とても理不尽なゲームだというのは理解できる。そういうゲームって、俺みたいにそれに慣れ切ってる感じならいいけど、初めてやった人ならゲーム自体をぶん投げてもおかしくないからな。


 感情的にならないだけよくやっているとは思う。


「まあ、優愛さんも少しずつ復帰しているし、他の人もしっかりといい状態というのは事実です」



「じゃあ、璃緒と一緒に戦う配信はもうすぐ終わるというわけだね」


「はい。せっかく一緒になれたのに残念ですが、事務所の意向もありますし、こればかりはどうしようもないです」


 残念そうな表情で璃緒がつぶやく。


 そうだ、璃緒ほどの大スターなら、事務所だって早く復帰してほしいと願っているはず。

 それに、いつかは別れが来ることはわかっていた。



「時間的には、あと1回か2回ですかね」


「了解」


 それなら、最後の配信を精一杯やって、素敵な思い出を作ろう。一緒にいて、よかったってしっかりと思えるように。


「そうだね。次のダンジョンは思い出に残るものにしようね」


“じゃあさ、パーティーが終わった後既成事実を作っちゃえばいいじゃん”

“からすみと璃緒ちゃんの事か、めっちゃ強そうじゃん”

“じゃあ、既成事実を作ってるときの配信もしてくれ。何ら動画も欲しい”


「待ってください。大炎上しちゃいますよ~~」


 茶化すようなコメント。璃緒は、顔を赤くして頬を抑えている。


「もう、からかわないでくださいよ」


「まったく、どうしてこいつらはこんな質問ばかりするのか」



「という事で、璃緒と一緒にダンジョン攻略はもうすぐで終わりそうです。それまで、楽しい時間を過ごしたいと思います」




“そうだな。頑張れよ”

“からすみのハーレム要因が一人減っちまうのか、寂しいな”

“逆に考えるんだ。これで加奈一本に集中できると考えるんだ”

“でも、一緒に行動したよしみでもあるし、璃緒ちゃんもこれから応援するよ”


“私も、璃緒ちゃん推しだけどこれからはからすみとネフィリムも応援するよ。頑張ってね”


 俺以外のコメントからも、互いに応援しようという人がちらほら。これなら、コラボ配信する意味も十分に意味があるというもの。周囲が進んでやりたがるというのも理解できる。これでできたファンたちを、これからは大切にしていきたい。



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