第74話 再戦


「これでどうだぁぁぁぁ!!」


 冒険者の一人が、八岐大蛇にビームを放つが、全く聞いていない。そして、八岐大蛇はそれに気づいてビームを打った冒険者に突っ込んでいった。


 冒険者は障壁を張ったものの、障壁は一瞬で崩壊。そのまま八岐大蛇の突進が直撃。冒険者は大きく吹っ飛んで崖の下へ落っこちてしまった。


「やっぱり強敵なのじゃ、援護した方がいいのじゃ」


 厳人は慌てて応戦するが、力の差がありすぎてまったく勝負にならない。八岐大蛇が、一方的に厳人に攻撃を加えていく。


「ぎゃああああああああああああああ。助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


「グォォォォォォォォォォォォォォ」


 厳人は攻撃を受けたり障壁で守ろうとするが、障壁は一瞬で破壊され、受けはあまりの威力に通じない。



「厳人は──ほかの配信者の後ろで隠れながら、その人が魔物を倒そうとすると、最後の一撃だけ攻撃を加えて戦果を横取りしようとするハイエナみたいな戦い方をするひとです。『ハイエナの厳人』と呼ばれています」


「わらわも配信者の調査で聞いたことがあるのじゃ。族に言う、迷惑系配信者とかいう奴じゃ」


「そして、他の配信者が倒した魔物を自分が倒したと主張して、その成果を自慢するんですよね。困った人です」


 ……たまにいるんだよな。実力で戦うだけだと埋もれてしまうからと言って、周囲と違うやり方で目立とうとする人。

 加奈なんかもそのタイプだが、中には人に迷惑をかけたり、足を引っ張って目立とうとしたりする人がいる。



 急いで八岐大蛇の元へ向かおうとすると、後ろから叫び声が聞こえた。


「なんだよなんだよなんだよ。もう反撃できねぇのかよぉ。弱えぇ奴らばっかりだなぁ」


「うるっせぇぇぇぇぇぇ。これは、俺様の獲物なんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 みんなが必死に戦っている中、安全なところで罵声を浴びせている人物がいた。サングラスをかけて、それをくいっと上げてニヤリと笑みを浮かべているすらりと背が高い男の人。

 なんだあれ……。


 そう思いつつ、剣を手に取ると隣の璃緒が話しかけてきた。


「あああっ、厳人も来ていたんですか? これはちょっと面倒な事になりそうです」


「厳人? 誰それ」


 聞いたことがない名前だ。俺も配信者のはしくれとして、トップクラスの配信者の名前くらいは知っている。

 それでも、そんな名前は聞いたことがない。



「厳人は──ほかの配信者の後ろで隠れながら、その人が魔物を倒そうとすると、最後の一撃だけ攻撃を加えて戦果を横取りしようとするハイエナみたいな戦い方をするひとです。『ハイエナの厳人』と呼ばれています」


「わらわも配信者の調査で聞いたことがあるのじゃ。族に言う、迷惑系配信者とかいう奴じゃ」


「そして、他の配信者が倒した魔物を自分が倒したと主張して、その成果を自慢するんですよね。困った人です」


 ……たまにいるんだよな。実力で戦うだけだと埋もれてしまうからと言って、周囲と違うやり方で目立とうとする人。

 加奈なんかもそのタイプだが、中には人に迷惑をかけたり、足を引っ張って目立とうとしたりする人がいる。


 その一人が、彼だという事か。そして、そういう人には人を罵倒する言葉好きな人が集まる。そして、そう言った人を満足させるために配信者はさらに過激な行動に走る。


 その流れで、周囲から恨まれるといった流れだ。中には、あまりの無法っぷりに収益化を剝奪されたものだっている。


「ちなみにさ、彼の本当の実力はどんな感じ?」


「えーと、確か実力はせいぜいBランク程度だったです。弱いわけではないですが、トップ勢と比べるとそこまではって感じです」


 つまり、八岐大蛇に打ち勝てる力はないってことだ。そして、八岐大蛇は大声に反応、厳人の方を向く。


「な、なんだよ」


 八岐大蛇は厳人の大声に反応したのだろうか、一直線に突っ込んできた。


 何度も八岐大蛇の攻撃を受け、気が付けばボロボロに。さっきまで戦ってた人たちは、誰一人として助けようとしない。


 こいつがさっきまで、彼らにどんな態度をとっていたのか、容易に想像できる。


「普通なら、見捨てますよ。からすみさん、どうしますか?」


 璃緒が言う。確かにそうだ。別に、俺にこいつを助ける義理はない。

 こいつは──さんざん周囲に迷惑をかけていたんだっけ……。自業自得ともいえる結果かもしれない




 それでも、俺の答えは決まっていた。


「助けるにきまってるよ。ついてきてくれるか?」


「澄人殿、答えなんて決まっているのじゃ」


「そうですよ! 見捨てるなんてあるわけないじゃないですか!」


 2人とも、答えは決まっていたみたいだ。予想はしていた、璃緒もネフィリムも根っこはやさしくて、攻撃を受けている人がいたら間違いなく助けるタイプの人だ。


「じゃあ、助けるぞ」


「わかったのじゃ。行くのじゃぁぁぁぁ!」


 そして、俺たちは八岐大蛇に突っ込んでいった。俺たちに気が付いたのだろう。八岐大蛇はこっちに突っ込んできた。


 突っ込んできた八岐大蛇が殴り掛かってくる。俺たちは一度アイコンタクトを取ってから攻撃を受けた。


「やっぱりこのパワー、ケタ違いですね」

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