第73話 八岐大蛇への再挑戦


 何とか、ろこさんも戦う決意をしてくれた。大丈夫、ろこさんはとっても意思が強いから、トラウマを克服できるはず。


「頑張ってくださいね。私も、時間があるときはろこさんの動画、見てみますから。時々コメントもしますね」


「あ、ありがとうございます!!」


 みんなから勇気をもらい、ろこさんは決意してくれた。

 ろこさんは大丈夫。加奈さんと2人でダメなら、私やネフィリムさん、からすみさんだっている。


 みんなで、乗り越えていこう。大丈夫、加奈さんだってろこさんだって、芯が強い人だ。

 それから、ホテルのカフェを出てHIASOBIさんと別れる。


「じゃあ、また会いましょうね。今日は忙しい中、本当にありがとうございました」


「いや──こっちこそ。久しぶりに息抜きできたよ。また、こんな感じで会えたらいいね」


 そうね。楽しい時間だった。あなたこそ、頑張ってね。


 私達は──その後も東京を楽しんだ。スカイツリーを登ったり。


「おおっ! こんなに高い建物はなかなかないのじゃ」


「スカイツリー、いつも混んどるって聞いたからな。こんなに景色がいいとは思わなかったわぁ」


 色々ショッピングを楽しんだり。


「ろこさん、お嬢様風の服も似合ってますよ」


「そうか? うちがフリフリのワンピースとか、似合わないと思ったんが」


「そんなことないのじゃ。ろこ殿は、とってもかわいいのじゃ。言葉使いを変えれば、お姫様にだってなれるぞい」


「お、お世辞ありがとうな~~」


 謙遜しているが、ニヤニヤしながら両手を頬に当て、顔を赤くしている。ちょっとうれしそうにしているのがわかる。


「そうですよ。ろこさん、本当はとってもかわいいと思いますよ。たまには、そういう服を着てファンを驚かせるのだって、全然悪くないと思います!!」


「そ、そうかぁ……」


 いつものろこさんとの違いに、みんな驚くと思う。ろこさん、大人しくしていればとってもかわいいと思うもん。


 そして、一休憩してから帰りの時間となった。



 陽が落ち始めている渋谷駅の改札口。私達が顔を合わせる。


「今日は、うちのためにいろいろありがとなー」


「大丈夫なのじゃ。ろこ殿のためなら、これくらいなのじゃ。それに、東京めぐり、とっても楽しかったぞい」


「そうですよ。みんなで楽しめましたし。ろこさんもどこか明るくなったように見えます。一緒に遊べてよかったです。同じ配信者として、また頑張りましょうね!」


「そうやな。ちょっとずつだけど、また頑張れるような気がしたわ。本当に恩にきるで」


 にっこりと、満面の笑みを浮かべるろこさん。本当に戦えるかどうかは、これからやってみないとわからない。


 でも、前を向くことができたろこさんなら──きっとまた、戦えるようになるはず。

 大丈夫、ろこさんと加奈さんなら。



 今日のろこさんを見て、自然とそう思えた。ろこさん、私たちも力になるから、一緒に頑張ろうね。








 俺は加奈、璃緒とネフィリムはろこと一緒に遊んだ日から一週間後。

 俺たちは、再び八岐大蛇に再挑戦することとなった。


 ダンジョンに潜って、再び八岐大蛇がいる前のトンネルの前へ。


「じゃあ、今度こそ八岐大蛇を倒そうか」


「はい。加奈さんとろこさんだって、頑張ってるんですから。勝利を届けましょう」


「そうなのじゃ」



 加奈とろこは──別のダンジョンに行っている。それも、俺たちよりも難易度の低い初級ともいえるダンジョン。

 本当は、俺と一緒にダンジョンで戦いと加奈は言っていた。


 しかし、いきなり強敵と戦うのは早急すぎる。間違いなくこっちの傷つくし、

 突然トラウマがなぶり返してしまう可能性だって十分にある。


 最初は難しくないダンジョンでリハビリを続けて、少しずつ、難易度を上げていけばよい。


 難易度の低いところから始めて、しっかりトラウマを克服できたら一緒にダンジョンを攻略しよう。


 加奈はどこか残念そうな表情をしていたから、「また今度、加奈が戦えるようになったら一緒に配信しよう。応援してるよ」と言葉を返したら加奈は嬉しそうな表情になって納得してくれた。


「えーと、澄人君。応援してるから、頑張ってね。私も、早く強いダンジョンに挑めるよう努力するから」


「ありがとう、加奈も無理しないでね」


 また今度、2人が大丈夫になったら一緒にダンジョンに行けるといいな。行けると願って、俺たちはダンジョンを歩き始めた。


 真っ暗なトンネルに入ると、トンネルの先から悲鳴のような声が聞こえ始める。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「逃げろぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 璃緒、ネフィリム顔を合わせ、コクリとうなづいた。


「間違いなく、誰か戦っていますね」


「助けに行った方がいいのじゃ」


 確実に、誰かが魔物と戦っている。助けないと、また致命傷を負ってしまうかもしれない。

 早足で、トンネルを抜けていく。


 トンネルをかける中でも、何度か悲鳴の声が聞こえた。それも、1人や2人じゃなくて複数の声。集団で戦っているのがわかる。


 トンネルを抜けると──。


「やっぱり戦闘中ですね。行きましょう」


「そうなのじゃ」



 またか10メートルはあろう巨体、8つの首と尾ひれ。禍々しい姿。

 八岐大蛇があった。そして、今回も俺たちだけじゃない。


 戦っている冒険者は10人ほど。しかし、その戦いは一方的なものだった。


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