第70話 スターとの面会
「おおっ! 嬉しいのじゃ!」
ネフィリムさんはご機嫌そうに言葉を返している。しばし楽しそうに話を楽しむ。
「いつも見ているのじゃ。歌──歌詞も素晴らしいのじゃ」
「そこまで言われると、照れますね」
一方、ろこさんは──完全に固まってしまっていた。ちょっと、刺激が強すぎたかな?
「あ、ろこさん。応援してますよ。頑張ってくださいね」
「あ、あっっっありがとうやぁ~~」
相当緊張しているのか、肩を震わせガチガチになっている。まあ、後で会うチャンスはあるから、そこで話そうか。
そして、HIASOBIさんはマイクを片手にこっちに視線を向けてきた。
「こっちも、璃緒さんの配信見てますよ~~。強さもトークもすっごいですね。
尊敬しますよ」
「そっちこそ、ロボットアニメの主題歌を任されて、おまけに時の人になるなんてすごいですよ」
「ははは、璃緒さんだって負けてないですよ。互いに、スター目指して頑張りましょうね」
そう言って、互いに手を振った。
あくまで、彼女のコンサート。これ以上私たちが出番を奪うわけにはいかない。それに、この後時間をとっているしね。
「そちは素晴らしい歌手のようじゃな。そちの歌──とってもきれいじゃたぞい。また、歌を聞きに来てもいいか?」
「ありがとうございます。また来てくださいね。待ってますから」
ネフィリムさんも、さいきんはからすみさんのおかげで知名度を上げているようでざわざわとみんなが噂をしている。本当はもっと話したいんだけど、時間が押しちゃうし、この後も話すチャンスはある。
「まあ、これはHIASOBIさんのライブなのでこれくらいにしましょう。応援してますから、~~」
そう言って、手を振って私たちは観客席に戻っていった。そして、またライブは続く。
それからも、会場は大盛り上がり。色々な歌を歌って──特にサビの部分は全員で叫ぶことになったくらいだ。
ネフィリムさんとろこさんも、サビの部分で歌詞を叫んだり、楽しんでいたのがわかる。ネフィリムさんは大はしゃぎ。ろこさんは、最初は固まっていたものの徐々にテンションが上がっていって気が付いたら私たちと一緒に盛り上がってぴょんぴょん跳ねる感じになった感じだ。
それから、数曲ほど歌を歌ってコンサートは終了。
大盛り上がりで、フィナーレの時などはこれまでに見たことがないくらいの大歓声だった。
そして、コンサートは終了。続々と観客たちが帰っていく中、私たちは最後まで残った。
最後まで残って、人少なくなると、私たちはドームの中へ。
周囲の人たちが満足げな表情で帰路に就く中、HIASOBIさんの控室へ向かう。
「まあ、人がいっぱいで楽しいし、そちも話していてとても楽しかったのじゃ」
「そうやな。楽しかっったで。でも、本当に控え室に行ってええんか?」
「大丈夫です。約束してますから。一緒にお茶するって」
さっきまでとは違う、関係者だけが入れる空間。物静かで、緊張した空気が走る。そして、控室の前にたどり着く。私がコンコンとノックをすると、Gパンと苦労Tシャツ、サングラスを着ているHIASOBIさん。
これなら、本人だと周囲からはわからないかな。これから、静かな場所へ移動するのにぴったりの服装だ。
「じゃあ、行きましょうか。タクシー、もうすぐ着くそうです」
「そうですね。じゃあ行きましょう」
有名人なので周囲の目線が気にならない場所を案内してくれるそうだ。
裏口からドームを出て、目の前にあるタクシーに乗り込んだ。タクシーは都心のおしゃれな街並みを行く。
「いつも、人と会ってる場所がある。案内するよ」
「確かに、人目を気にせず話せるところがいいですね」
タクシーの中でも、日常会話を楽しむ。日頃の事とか、配信あるあるとか。
しばらく大きな街を走って、たどり着いたのは大きなホテル。王国ホテルというかなり高級なホテルだ。お金を払って、タクシーを降りてホテルの中へ。
豪華な内装のホテルを進んで、エレベーターで30階まで登る。
エレベーターを出ると、広いカフェ。
スーツ姿の男の人に、窓際のテラス席に案内される。30階から見下ろす席だけあって、東京の景色が一望できる。ネフィリムさんは窓に両手をつけて、興味津々そうに景色を見ていた。
「ぬおおおっ! 素晴らしい景色なのじゃっ!」
「喜んでもらえて光栄です。ネフィリムさんの世界では、こういった建物はなかったんですね」
「そうなのじゃ。今度魔王場を作るときは、こういうガラス張りの建物にしてみるのじゃ」
「出来る人がいるといいんですけどね」
ネフィリムさんの世界で、それができる技術があるのかな? 思わず苦笑いしてしまう。
ファンタジー世界で、ガラス張り。ちょっとミスマッチになりそう。
今度はろこさんに視線を向ける。両手でメニューを掴んで、ガタガタと震わせていた。
「なんやこの値段は──流石は璃緒さんとHIASOBIさんや、うちら庶民とは、レベルが違うやでぇ」
「まあ、そうでしょうね。私も最初見た時は似たような反応をしました」
コーヒー1杯で800円。ケーキを頼んだら1500円ほど。確かに、街のカフェではありえない値段。知らない人にとってはびっくりしてしまうだろう。
「でも、璃緒さんがHIASOBIさんと知り合いやったのは、意外やな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます