第69話 アイドルとの対面


 サビの直前まではアイドルのかわいらしさを表現する歌詞、そしてサビに入った直後からは熱血ロボットアニメの歌詞に様変わりするという今までにない構図の歌。


 とある動画ではサビの部分でコメントの嵐になったり、普段アニメを見ない人までアニメを見始め、軽く社会現象になったのだ。



 証拠に、会場は満員。ネットを見ていても、彼女のファンが日増しに増えて言っているのがわかるくらいだ。


 そして、時間となる。


 いつもは球場として使っている芝生。白いステージがあり、スポットライトがステージの中央に当たった次の瞬間──。


 大きな音とともに、ステージから火柱が当たる。


 周囲の人たちはいよいよだと興奮したのだろう。HIASOBIのイメージカラーであるオレンジのサイリウムを回し始める。


 火柱の隙間から、ジャンプするかのようにステージの真ん中から飛び上がってきた人物。

 黒髪のロングヘアにすらりとしたスレンダーな体系の女の人。


 やっぱり美人だね~~HIASOBIさん。


 火柱が消えて、軽くトークタイムに入る。トークも、丁寧で観客たちを魅了。丁寧なあいさつに、面白いトーク。


 そして、歌に入っていった。まずは──アイドルとしての自分を歌った歌詞。


 それから、サビに入っていく。入った瞬間、再びステージから大きく火柱が上がった。

 豪快な音とともに、花吹雪が会場に舞い上がる。


 周囲は大盛り上がり。ヒートアップし、大歓声がこだまする。アイドルとしての歌詞から、熱血ロボットを歌った歌詞へ。いかにも熱血アニメの歌詞と、気合の入った歌い方へと変わる。


 かわいさを意識して、アイドルっぽかった声から強く悪と戦う声へ。その変化のすごさ、同じ人の声とは思えないほどすごい。


「おおっ! すごいのじゃ」


「すごい盛り上がってるやんけ!」


「これがHIASOBIのすごい所なんです」


 歌うときも配信の時も、いつもこうして炎の演出を使い、周囲を驚かせている。

 今までに見たことがない歌詞に、リズム。それでいて一つ一つの技術力も高い。


 気が付けば、この場にいる全員がその歌声に夢中になっていた。特に、熱血ロボットの部分は──毎回全員で大合唱になったほど。


 こういうカリスマ性。私も身に着けたい──私だって頑張っているけど、彼女のように、もっと人を引き付ける素質をもった人だっている。


 そして、歌が終わりトークの時間となる。


 そして、それから数曲のアニメ曲を歌い終えた後、歌が終わりトークの時間となる。


 作曲の裏話や、日常会話などを悠長に話す。やっぱり、人を楽しませるスキルもあるんだな──。


 そして、そんな話がしばらく続いた後。

 そろそろごろ会いかな。私が手を上げると──。


「あっ璃緒さん。会えてよかったです」


 HIASOBIさんが私に気が付いたのか、こっちを向いて言葉を返してくる。


「こちらこそ、HIASOBIさんとこうして、話せて光栄です」


 そして、ネフィリムさんとろこさんの腕を引っ張る。


「行きましょ、あのステージへ」


「まじかい??」


「おおっ! 楽しみなのじゃ」


 驚いているろこさん。ええい、半ば強引に連れ出しちゃお!!

 ネフィリムさんは好奇心旺盛に、ろこさんは驚きながらも私の後をついていく。

 そして、私たちが歩いていくと周囲の人がひそひそとしゃべりだした。


「あのピンクの髪の子、璃緒ちゃんじゃね?」


「あ~~本当だ。配信者で有名な璃緒ちゃんだ。やっぱり美人でかわいいな」


「璃緒とHIASOBI? すげぇコラボじゃん」


 何か、目立っちゃった。まあどのみちバレるよね。実は、打ち合わせで一緒に話すことになっていたのは黙っておこう。

 とはいえこの大観衆の中、ちょっと恥ずかしいかな。



「璃緒さん久しぶりです」


「こちらこそ。せっかくですし、ちょっとお話ししましょうか」


 HIASOBIさんからマイクを受け取り、周囲に視線を向けながら話す。話しとはいっても、満員のドームでの話。ちょっと緊張しちゃう。


 まずは丁寧にあいさつすると、色々と会話を楽しむ。日常の事とか、初めて会って──まだ駆け出し同士だったころの会話とか。


 恥ずかしいこととかもあったけど、2人で楽しそうに語り合う。観客たちも、初耳だったのか興味津々に聞いてくれる。


 私は、これくらいでいいか。あとはYとか、ファン向けのニカ生で話してもいいし。

 本題はろこさん。大勢の前にいるからか、ガチガチに固まっている。


「あ、あ、あ……HIASOBIさん──」



「ろこさん──でしたね」


「私のこと、し、知ってるんですかかかかか?」


 完全に雰囲気にのまれてるかな? 多分、何言ってもダメだと思うから後で私達だけの時間を作るからそこで話そうか。


「知ってますよ。応援してます」


「あ──ありがとうございました!!」


 今度は、ネフィリムさんかな。目を輝かせて、興味津々といった感じだ。

「はい」と言って、マイクを渡した。確か、マイクは知ってるって事前の相談で言ってたわよね。


 マイクを持って、ネフィリムさんとHIASOBIさんが向かい合う。ネフィリムさんは、大勢の前でも特に緊張とかせずのほほんとしている。


「あっ、ネフィリムさんですか? 本物だ。会えてうれしいです」

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