第61話 撤退戦
「わかった」
「任せろなのじゃ」
そして璃緒が2人を担いでゆっくりと山を登っていく。魔力があるとはいえ二人をいっぺんに。体鍛えてるのかな? 絶対に逃げ切ってくれ。
そんな璃緒を追いかけようとする八岐大蛇。俺とネフィリムが再び間に入って対峙。
意識が俺とネフィリムに集中していく。
そのままこっちに突っ込んできた。首をハンマーのように振り回したり、光線や火の玉を吐いてきたり。
力任せの攻撃だが、どれも威力がすごい。
直撃したら致命傷になりそう。
「恐らくじゃが、こやつに力を与えている奴がいる。そいつをひっ捕らえる必要があろうぞ」
「なるほどね」
確かにこの強さは──魔王であったネフィリムの障壁を破壊するレベル。普通ならもっと有名なはず。
こいつに力を与えている奴がこのダンジョンのどこかにいるという事か。何の目的何かな?
そして、連続攻撃を仕掛けてくる八岐大蛇の攻撃を後退しながら受けていく。まともに戦ったらこっちも痛手を負いそう。
別に今勝つ必要なはい。無理に攻撃に出ずに光線をかわし、殴り掛かった攻撃を受け流す。
「確かに強い──が力任せなのじゃ! イノシシと同じなのじゃ!」
「ああ、2人で連携してかわせば、攻撃はかわせる」
ネフィリムとの息もあっている、まあ命を懸けて戦ってきて来た関係なのだから当然だ。
攻撃をかわし、後方を振り向くと璃緒はすでに崖を登り切り、トンネルへと入っていった。もう大丈夫だろう。
少しずつ後退しながら崖を登っていく。時間はかかったが、山の獣道へ。
「これをお見舞いするのじゃ!」
ネフィリムが剣を八岐大蛇に向けた。今までにないくらいの──それこそ俺との最終剣戦で見せたくらいの巨大な魔力が魔剣にこもる。
「カオスに秘めたる聖なる雫。大いなる道筋──虐げられものに運命を切り開く力与えよ。
ダークネス・カオス・テンペスト」
ネフィリムの術式が、大爆発を起こす。
流石の八岐大蛇も大ダメージを受け、肉体が吹き飛び山の崖を転げ落ちるように落下。
途中の木に引っかかって落下は止まったもののこっちに這い上がるには時間がかかりそう。
「今のうちなのじゃ!」
「うん」
それでも、肉体が消し飛んでいないのはさすがというべきか。そして俺たちはトンネルへと入っていく。
「なあネフィリム。何なのじゃ?」
「八岐大蛇、倒せるかな?」
「わらわとそちがいて勝てないなんて知ったら、あっちの世界の奴らに笑われるぞい」
「そうだな」
「そうだな」
八岐大蛇。確かに魔力自体は強いけれど、力任せて突っ込んでくる以外何もしてこない。
こいつより弱くても、俺たちを倒すために策を練ってくる奴なんていくらでもいた。
今度来た時は、万全の態勢で仕留めに行こう。
そして、もと来たトンネルを抜けていく。すぐにこのダンジョンから脱出。
何とか現実世界に戻ることが出来た。ほっとする。
周囲を見回す。璃緒とネフィリム。そして俺の部屋の中。何とか無事だったが──表情に疲労が出ている。
思わぬに強敵に、相当疲弊いていたのだろう。少しの間、戦いはやめた方がよさそう。休む時間を与えないと。
「お疲れ様です。何とか戻ってこれましたね」
「璃緒、お疲れ様。疲れてないか?」
「まぁ……2人を抱えて、警戒を怠らずの移動ですからね。ちょっと疲れちゃいました」
そして──問題は加奈とろこだ。相当傷を負っていたはず。
とりあえず、電話してみよう。すぐにスマホを取り出して──電話を掛ける。
なかなかでない。3コールほどして、加奈が出てきた。よかった。
「加奈、今どこにいる?」
「あ、澄人……うっ」
反応した言葉からも十分わかる。明らかに衰弱している。声が弱弱しくて、息も上がっていてかすれている。
すぐにそっちへ行かないと。
「大丈夫? 今そっちに行くから場所を教えて」
「はぁ……今、家に……る」
「わかった。すぐに行くね」
そして立ち上がると、ネフィリムと璃緒も立ち上がった。璃緒は──立ち上がった瞬間よろけてしまった。
無理はさせない方がいいな。体を掴んで、璃緒の身体を支える。
「あっ、璃緒は休んででいいよ。消耗してるみたいだし」
「い、い、いいですよ……これくらいなら大丈夫です。2人が無事なのか、最後まで見届ける義務がありますから」
そう言って、じっと俺を見つめてくる。強い意思を持った、人をまとめる立場の目つき。
責任感が強い璃緒らしい目だ。
そう言って、じっと俺を見つめてくる。強い意思を持った、人をまとめる立場の目つき。
責任感が強い璃緒らしい目だ。
まあ、十分休養はとるしここまで強く願っているのに断るのは逆に失礼だろう。
自分がボロボロでも周囲のことを考える璃緒らしい言葉。
「わかった。一緒に行こう」
「ありがとうございます」
とのことで俺たちは3人で加奈の家へと向かった。
閑静な住宅街を数分ほど歩く。中学まで同じだっただけあって、家にはすぐ着く。
そして、2階建ての普通の一軒家にたどり着いた。
「ここ」
そして「ピンポン」と呼び鈴を鳴らす。
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