第54話 加奈とのやり取り
数日後。
今日はネフィリムと璃緒と新しいダンジョンを潜る日。ダンジョンへの準備をして、部屋で心を落ち着けている──。
コンコンと誰かがノックしてくる。ネフィリムと璃緒に家のカギは渡していない。
家族はみんな出かけている。
という事はあいつか──。
「入っていいよ」
すぐにドアが開いて、予想通り人物がやってきた。
クリーム色のセミロングのストレートヘアー。ちょっと吊り上がった目。
「澄人、うっす」
右手を挙げて気さくに挨拶をしてきたのは、幼馴染の加奈だ。
俺が璃緒やネフィリムとダンジョンで激闘を繰り広げている中、加奈たちもまた戦果を挙げていた。
何でも、また高ランク冒険者や強力な魔物を狩ってバズったらしい。厨パーティー狩り。
略して厨パ狩りが加奈パーティーの特徴何だっけ。時折「Y」でも話題になっているとか。
両手を腰に当て、こっちを見て言ってくる。
「澄人、最近有名になってるみたいね。すごいわ」
「まあ、俺のおかげじゃないけどな」
「まあね。ネフィリムちゃんもそうだけど──まさかあの璃緒ちゃんとコラボするなんてね。やるじゃない」
「まあね。偉大だな璃緒ちゃんの力は」
俺のこと、見ていてくれたんだ。にっこりと、ご満悦な表情をしている。
「それもあるけど、澄人の実力もあるわ」
「え? しっかり実力もあるのね、見させていただいたわ実力あるじゃない。見直しちゃったわ」
「ははは、ありがとう。これからも加奈に負けないように頑張るよ」
「ありがとう。応援してるから、それで、もっと有名になったら厨パ狩りと称してやっつけてやるんだから!!」
元気そうに、にかっと笑う。そこまで言ってもらえると、こっちも嬉しい。
そうだな、もっと強くなったら加奈のターゲットにされるかもしれない。その時は、正々堂々と戦おう。
「うん。その時は、よろしくね」
「これからも、しっかり頑張るのよ!」
ご機嫌そうに俺の背中を叩いてきた。やめてくれ、痛いって……。
それから、両手を腰に当て元気な笑い声。
「応援してるからね」
明るい表情──俺を激励してくれているのだろう。加奈はいつもそうだった。いつもあんな感じで俺のことを気にかけてくれていて、時には励ましてくれたり。
配信者をしているときも、明るくて視聴者を気にかけているのが人気の理由なんだっけ。
「じゃあ行ってくるわね。あんま成果が出てるからって、調子乗りすぎないようにね。油断してると、足元すくわれるからね」
「わかったよ。加奈こそ無理しないでね。応援してるよ」
「ありがと、じゃあ行ってくるね」
そして、加奈はダンジョンへと潜っていった。
なんというか、変わってないな。おせっかいで、色々小言を言ってきても本心では俺のことを気にかけてくれている。
いつか、俺からも加奈に何かしてあげたいと思っている。また、加奈と出かけてみるのもいいかもしれない。
そんなことを考えていると、誰かが玄関をノックしてきた。時間的にネフィリムと璃緒だろう。
扉を開けると、やはりその通りだった。
「やっほ~~なのじゃ」
「澄人さん、行きましょ!」
元気そうに2人が声をかけてくる。同じタイミング……事前に連絡を取り合って同時に来るようにしていたろ。
まあいいや。その方が雰囲気も良くなりそうだし。
「そうだね。行こうか」
そして、俺もダンジョンへと潜っていく。今度は、どんな感じのダンジョンなのだろうか……。3人で行くときは、不思議と癖の強いダンジョンばかりだった。今回くらいは、オーソドックスなダンジョンを冒険してみたいな。
「そういえば、今日はどんなダンジョンへ行くの?」
璃緒が振り向く。何を隠そう今日は璃緒のリクエストだった。
「えーと、確か……」
「47(仮)なのじゃ」
「あ、そうでしたね」
色々と2人で会話していたな。しかし(仮)ってどういうことだ? しかも47の数字だけ。初めて見る名前。
どんなゲームなのか考えていると璃緒が明るい表情で言葉を返す。
「えーと、まだ試作段階で宣伝用に一部の人に参加してほしいと頼まれちゃったの」
「面白そうなのじゃ」
それなら、人が少なくて動きやすそうだ。けど、試作段階という事は変なバグとかがあるかもしれないという事か。
璃緒クラスだと、そういう宣伝にも呼ばれるんだ。他に行きたい場所があるわけでもない、じゃあそこに行ってみよう。
「すごい楽しみ。何が待っているのかな。どんなダンジョンなの?」
「私にもわかりません。見てからのお楽しみだとしか言葉にありませんでした」
どんなダンジョンかわからないか──ちょっと楽しいそう。ワクワクしてきた。
「3人でダンジョン、攻略──とても楽しみなのじゃ」
ウキウキな気分のネフィリム。そうだ、せっかく3人になったんだ。精一杯楽しもう。
もしかしたら、楽しい要素だってあるかもしれない。
「じゃあ行こうか。準備はいい?」
「大丈夫です」
「ばっちりなのじゃ」
そして、俺たちは同時にアプリを起動しダンジョンへと潜っていった。変わったシチュエーション、どんな事態が待っているかとても楽しみだ。
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