第44話 結束の力


「じゃろうな、わらわといた時より、ずっと強くなっておる」


「時には苦痛も伴うものがあった。自身の肉体を改造し、限界以上に自身の魔力を引き出していた。血反吐を吐くことだってあった。死にそうになることだってあった、それでも俺は乗り越えたんだ。越えられなかったお前たちを超えるために。俺を、敗れてもなおついてきてくれる奴らを、最後まで守るためにな」


 そこまで強い思い入れがあったのか──とはいえ、こっちだって負けるわけにはいかない。加勢しなきゃ──セラフィールクラスにうまくいくとは思えないが、一人で戦わせるわけにはいかない。


 そう思って1歩踏み出そうとすると、ネフィリムが止まれとでも言わんばかりに手のひらをこっちに向けてきた。


「わらわに、語らせてほしい」


「わかった」



「そちへの強さへの渇望。生まれやついてきてくれた者の事を思えば当然なのじゃ」


 セラフィールの口調が強くなる。それだけでなく剣筋も、強く──早くなっていく。それだけ強い気持ちで戦いに望んでいるという事だろう。


 でも、ネフィリムだって負けてはいない。何とか攻撃に対応しながら、真剣なまなざしでセラフィールを見つめている。何か、部下だった彼女に対して思う事でもあるのだろうか。


「よきよき、そちの強さへのこだわりや、守りたい者たちへの想いは伝わった。それなら納得じゃ。貴様がここまで腕を上げた理由がな」


「その割には、悟った顔をしねぇな。言いたいことでもあるのかよ」


「じゃがな、わらわだって決して遊んでいたわけではない」


 ネフィリムの攻撃、心なしか威力が強くなったように感じる。ネフィリムにも考えがあるのだろう。考えたら、ネフィリムだって色々学んだんだよな。


「どうして自分たちが負けたのか、民たちがわらわではなく勇者たちを選んだのか。考えて、時には旅をして声を聞いて──少しずつ分かってきた。強さだけでは、人はついてこぬと」


「甘いな。どれだけこっちが正論を叩きつけようとも、力にはあらがえない。すべては力だ」


「だからそちには限界があったのじゃ。周囲の気持ちや、背景を理解しなければいくら正論を叩きつけてもついてこぬ。力でわからせるしか能がなかったそちにはわからぬ発想じゃがな」


「うるせぇ!! そんなの、弱いやつの発想だ。強ければそいつらを痛めつけて、わからせてやる!」


「力にしか興味がなかった。それが。そちの限界なのじゃ」


 そう言って、ネフィリムはこっちに一瞬だけ視線を向けた。不思議と、何の意味かは理解できる。俺も璃緒も一気に2人のところに向かっていく。


「いくら一人で強く成ろうとも、信頼しあった人たちに勝てることは出来ぬ。一人では限界がある。それを──わらわたちが見せつけるのじゃ」


 まずは璃緒がセラフィールへと突っ込んでいく。セラフィールが片手で対応すると、ネフィリムが背後に回り連続攻撃。


「がっかりだよ、勝てないから寄ってたかるのかよ」


「違います。一人では限界があります。だから、信じあえる友が必要なんです。だから、わかりあう必要があるんです」



「そうじゃ。これは勝利のための戦い。卑怯だとかいういわれはないのじゃ。まあ、

 そちはそれが限界じゃがのう」


「何が言いたい」


 互いに連続攻撃を見舞い、一歩も譲らないまま会話を続ける。


「そちが負けた時もそうじゃったな。最初は圧倒しても、力と自分に従うものにしか興味がわかぬ性格ゆえ慕ってきたもの以外には無関心。仲間が敗れ、一人で戦いを強いられ、澄人殿のパーティーの連係プレーの前に敗れ去った。また、同じ運命にあうぞこのままだと」


「だ、黙れ!!」



「現に、そちは防戦に転じているではないか。このまま押し切って、わらわたちが勝つのじゃ」


「はい、ネフィリムさん。このまま行けそうです」


 璃緒とネフィリム。初めてのタッグなのにしっかりと連携が取れてる。セラフィールが璃緒に対応すると、ネフィリムが後ろから攻撃。逆にセラフィールが攻撃を食らおうとすると、璃緒が反撃。



 互いの攻撃で相打ちになることもない、短い時間でそれができるとは思わなかった。

 璃緒もネフィリムも、出会った時は敵だったけど次第に打ち解けあった。

 どちらも、根はやさしく仲間想い。理解しあえるもの同士、協力し合える性格。後は、俺だけだ。


「こいつら」


「さあ、追い込むのじゃ!!」


「はい!」


 2人が同じタイミングでセラフィールに切りかかる。璃緒は下から切り上げ、ネフィリムは上からの振り下ろし。


「仕方ない」



 セラフィールは苦い表情を浮かべながら自身の槍を地面に叩きつけた。その瞬間、衝撃波が発生。2人は攻撃を中断し、ガードに行こう。そして、セラフィールはジャンプして上空に舞い上がった。


 その瞬間を待っていた、俺は一気にセラフィールの所へ向かっていく。


「お前ら全員吹き飛ばしてやるよ!!」


 セラフィールが槍を大きく飛り上げた瞬間、俺がセラフィールの元にたどり着き、大きく剣を振り上げる動作に入る。


「これで決める」


「いいよ、受けて立つ」


 空中に飛び上がっていたセラフィールに逃げ場所はない。

 やることはただ一つ、俺のすべての力をぶつけていくだけ。



「光に満ちたる神秘の力、闇を貫く一閃となれ サンライズ・ビヨンド・ザ・ライトニング」

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