第13話 竜、不死鳥、氷狼の3戦士

 とある街の中央にそびえ立つ城、その城の主である醜く肥えた腹をした男は葉巻を吸ってのんびりしていた。


 男は特権階級の存在、“貴族”であり、その財力に物を言わせて様々な物を手に入れてきたが、彼の趣味は“奴隷集め”である。


 それも亜人の奴隷を集めることを趣味としており、捕まえた奴隷に対して暴力を振り、痛め付け、嘲り笑う事を至高の喜びとしていた。


 特にお気に入りは“氷狼族”であり、彼らの悔しがる顔は最高に興奮する代物であった。


「くくくっ!さぁて、それじゃあ今日も楽しむとするかぁ……!」


「だ、旦那様!!お、お逃げください!!賊です!!?」


 部屋に駆け込んできたのは、傷付き、血を流しながら肩で息をして苦しそうにしている衛兵であった。


「賊だと?数は?」


「そ、それが……さ、3人……です!!」


「はぁ!!?たったの3人?ならばとっとと殺してしまえ!!」


「そ、それが……!や、奴等は、ば、化け物で『ドゴオオオオオオッ!!!』ぎゃあああああっ!!?」


「なっ!!?」


 突然部屋が吹き飛ぶほどの衝撃が走り、報告した衛兵が無残な切り裂かれて物言わぬ肉塊となり、血が部屋を汚した。


 そんな中、部屋に黒い剣を持った少年……ブライが入ってきたのである。


「よぉ、あんたが領主さん?」


「き、貴様が賊か!?ここをどこだと思い、私を誰だと思っている!!?「いや、別にあんたに興味はない。」な、なに!!?そ、そもそも貴様!!どうやってここに来た!!?兵や将がいたはずだぞ!!?」


「全員倒したよ。確か、騎士長とか言うのがいたけど、全員倒した。」


「な、なに……!!?」


◆◆◆


 時は少し遡り、ブライが暴れている頃。


 手に槍、銘を“凰槍”を持ったホムラと氷の両刃の手斧、銘を“グレイシャ”を握っているソウガが奴隷たちの居住区画に潜入して、奴隷達を逃がしており、ブライが作った“時空竜の道”の前にはホムラがいて先導していた。


「この空間を通れば遠く逃げられる!慌てず、駆けずに種族で固まって動くんだぞ!」


 ホムラの指示に奴隷達は涙を流して、口々にお礼を言いながら進んでおり、そんな奴隷達の最後尾にはソウガと氷狼族達がいた。ソウガは仲間達を逃がしながら進んでいると、数人の衛兵が走って来ているのが見え、魔法の一撃を放つ。


「アイスヴォルテックス!!」


「「「「うわあああああああああっ!!!?」」」」


「ちぃっ!数が多いな!」


「ソウガお兄ちゃん……。」


「……みんな、本当に遅れてごめん。死んじまったじい様の……族長の為にも、必ずみんなを護る!!!」


 ソウガはそう言うと、グレイシャを構えるのであった……。



◆◆◆



「き、貴様!?な、何が目的だ!?」 


「……ここ、嫌ながするなぁ。お前、ここで“奴隷”とか痛め付けてるんだろ?床に血の臭いが染み付いてる。」


 ブライがそう言うと男は気色悪い笑みを浮かべながら答えた。


「な、なんだ!?奴隷を痛め付けて何が悪い!!まさか、奴隷を助けに来たのか?はははっ!!おかしな奴だな!?奴等奴隷に、特に亜人には人権なんてないんだよ!!!!」


「……なんだと?」


「良いか!?この世を回してるのはな、私達人間なんだよ!!?獣が人間様みたいな事、している方が『ズバァッ!!!』っ!!?んぎゃああああああっ!!!?」


 剣で斬られた男はその場に転げ回るが、ブライは男の体を踏みつけると、男に言い放った。


「あんたの糞みたいな趣味や話しに興味はない。俺がここに来たのは“奴隷解放”だよ。だけどまぁ、お前みたいなのは消しても構わないだろうな。」


 ブライはそう言って刃を振るうと、男の首は血飛沫を上げて宙を舞い、床に転がると、それを見たブライは刃を綺麗にすると、部屋を出ていき、ホムラ達と合流したのであった。


 その後、奴隷達が全て解放された城は炎に包まれて、脆く崩れていったのである……。


◆◆◆


「本当に行ってしまうのですか?まだお礼もし足りないのに。」


「いや、別に礼してほしくてやった訳じゃないから。」


「好きにやっただけだから、気にしないでくれよ。」


 ブライとホムラは新たな族長となった氷狼族の男性、ソウガの父にそう言う。


 奴隷達を解放した後、ソウガ達と合流したブライとホムラはノーザン・ロックの近くにある人の居ない小さな村に集まり、そこで氷狼族達に自分達の種族を露にすると驚かれたが、歓迎され、宴を開くことになったがブライ達はただ泊めてくれれば良いと一晩泊まったのだ。


 その事にお礼をしたいと彼らは言うが、ブライとホムラは気にしないでくれと行っていた。


「んじゃあ、俺らお世話になり「待ってくれ~!!」ん?あ、ソウガ。」


「はぁ、はぁ……!頼む!俺も、俺も連れていってくれ!」


「「はぁ!?」」


「そ、ソウガなにを!?」


「父様。俺、この人達に鍛えてもらったんだ。それに俺、この人達と旅をしたい!だからお願い!!俺を同行させて!!」


「そ、ソウガ……。」


 真っ直ぐ自分を見つめてくる息子に、ソウガの父は頭を抱えてため息を吐くも、ソウガに伝える。


「風邪や病気に気を付けるんだぞ……!」


「はいっ!!行ってきます!!!宜しく!ブライ、ホムラ!!」


「仕方ない……。行きますか!」


「はぁ……。やれやれだよ。」


 ブライ、ホムラは新たにソウガという仲間を得て旅を再開するのであった……。

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