第12話 冷たき狼の涙と鍛練。

「まったく、ブライの奴。どこにいるんだ?宿とか見つかったのか?」


 買い物を終えたホムラはブライを探しに町の中を散策していた。すると、遠くの方で何やらあたふたしているブライを見つけたホムラが小走りで駆け寄る。


「ブライ、お前こんな所でなに油を……ん?なんだ、喧嘩か?」


「い、いや、喧嘩じゃなくて!なんていうか、その!この人の首輪砕いたら何か泣き出して!!?」


「いや落ち着け。取り合えず宿見つけてそこで話を聞こう。」


「分かった。」


 そう言うとブライはソウガに人化の術を掛けると、取り合えず宿まで向かうことにし、そこで休むのと話を聞くことにした。


「はぐっ!!はぐっ!!ガツガツっ!!んぐんぐっ!!」


「「……。」」


 宿に着いた際に食事を頼んだら、かなりの量を平らげた2人であった……。


◆◆◆


「さて、と……。んじゃ、話してもらおうか?この魔封環の首輪とあんたについて。」


「あぁ……。」


 夜が更けた頃、客室に入ったブライ達。


 そこでブライはソウガから話を聞くことにし、ソウガも頷くと何があったのかを話し始めた……。


 ソウガは氷狼族の族長の孫であり、一族でも一番優しい子である。


 彼にとって一族の暖かい家族、優しい仲間達、それらがソウガの宝物であった……。


 人間からは“魔狼”と呼ばれて怖れられており、何より氷の山“ノーザン・ロック”は人間が立ち入れないほどの寒さであったが、氷狼族には関係なかった。


 しかし、ある日、彼ら氷狼族の里が人間に襲われたのだ……。


 彼らは持ち前の力で応戦したが、人間は卑怯にも幼い子供や女性を人質にとって降伏を迫り、それに歯噛みしながらも彼らは降伏し、そこから地獄が始まった。


 人間に捕まってからは、暴力を振られ、痛め付けられ、ペットのように扱われた。しかも逆らえば体に付けられた魔封環に締め上げられて苦しみ、それを見て人間はさらに嘲笑った。 


『良いか!!?お前らは“犬”だ!!人間様に楯突くなよ!!?』


 地獄の中で弱っていく仲間達が多くいるも、魔封環の生命維持の魔法で死ぬことも出来ず、苦しみしなかった。


 その中でソウガを逃がしてくれたのは、族長である祖父であった。彼は残った魔力で魔封を上から凍結させると、彼は外にソウガを逃がし、ソウガはそこから必死に逃げた。


 途中で魔物や野うさぎなどを狩って生き延びたが、生きることに絶望し、仲間や家族の安否を気にするのに神経がやられていった。


 そんな中でソウガが見つけたのが、山賊団を倒していたブライとホムラであり、2人の卓越した戦闘センスと能力に一縷の希望を見出だしたソウガは2人の後を追い、今に至るのであった……。


「人間、か。酷いこと、というか下衆もいい所だな。」


「確かにな。」


「……こんな事を頼むのは筋違いだし、可笑しいかもしれない。だけど!!!俺にはこれしかないんだ!!!頼む!!!みんなを……!!俺達を助けてくれ!!!」


 床に頭を叩き付けるソウガ。そんな中でブライはソウガに手を伸ばす。


「良いぞ。助けるぜ?」


「お、おい!ブライ!!?」


「ほ、本当か!?本当に良いのか……!?」


 まさか了承されるとは思わなかったソウガは、驚きながらもブライを見入る。


「……俺も、人間に故郷を襲われたからな。ソウガの気持ちは分かる。それに、家族は大事だしな!ホムラ、お前はどうする?」


 ホムラはブライからそう尋ねられると、腕を組んで答える。


「……仕方ない。助けるの手伝うよ。まぁ俺も話し聞いててムカついたしな。」


「ブライさん……!ホムラさん……!あり、がとう……!本当にありがとう……!!」


「そうと決まれば、から修行だ。」


「え……?しゅ、修行!?」


 ブライの言葉にソウガが驚いていると、ブライが指を鳴らして空間が入れ換わったのを見た。


「こ、ここは?」


「“時空竜じくうりゅうの巣”……。ここでは何年修行しても外の時間はほとんど動いてないし、鍛えたら鍛えた分だけ自分に還元される。ここで鍛えてからいくぞ。」


「……!?」


「ソウガ、こいつは若干変わってるからあまり気にすんなよ。」


「あ、あぁ、分かった。でも、少しでも強くなりたいってのはある……!みんなを助けたい!!」


 こうしてブライ、ホムラ、ソウガはその異空間で修行を始めたのであった……その期間、ざっとであった……。

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