第11話 幻の餓狼、“氷狼族”。
コモレビを旅立ったブライとホムラの2人は、新たな目的地である“パシュール”という小さな町を目指していた。
「えっと、パシュールまでは……あと半日で着くな。今回はそこにある宿に泊まるか。」
「だな、ここ数日は野宿とかだったからな。少し買い足しとかも出来ればなぁ。」
「んじゃ、パシュールに着いたら……ん?ブライ!」
「ん?……おっと。」
ホムラの声に反応したブライは自分達に向かって飛んできたナイフを避けると、ナイフは樹に刺さった。
「誰だ?隠れてるのは分かってる。出てこい。」
ブライがそう言うと、柄の悪く斧や弓矢を持った者達が下卑た笑みを浮かべて現れた。山賊団であった。
「きへへ!おい兄ちゃん達、この辺りを通るなら俺らに通行料払いな。」
「黙って身ぐるみ置いてけば良し。逆らうなら半殺しにして奴隷として捕まえてやるがな!!」
「「「「くくくくっ!!」」」」
「って言ってるが、どうするブライ?」
「渡してやろうぜ?俺らなりの通行料。」
「仕方ない。まぁ、良い運動にはなるかな?」
「ガキどもがっ!おいてめぇら!!構うことねぇ!!やっちまえ!!!!」
「「「「おおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」」
ブライとホムラを取り囲んでいた約50人程の山賊団は、一斉に2人に襲い掛かるが、ブライとホムラは全員を相手にして行き……。
「ず、ずびばぜんでじだ……!」
ボコボコに殴られて半殺しにあった山賊団の頭が2人に謝る。
「ふぅ、軽い運動にはなったな。ブライ、何人くらい倒した?」
「そのお頭さん込みで26人だ。しかし、まぁまぁ数は多かったな。」
ボロボロになっている上に滅茶苦茶に殴られて膨らんでいる山賊の頭の頭を掴んでいるホムラにブライがそう答える。周囲には逆に半殺しにあってボコボコにされている山賊たちがいる。
ブライとホムラは純粋な徒手空拳だけで山賊団を倒していき、その力に山賊団の頭は驚いていたが、その間にブライによって返り討ちにされてしまった。
2人からすれば帝国の将軍である、ゼルゲアに勝っているので山賊程度なら苦にはならない。
「さて、こいつどうする?襲ってきたからには倒しとくか。」
「ひ、ひぃっ!?わ、悪かった!!?お、お前たちには襲い掛からねぇし、山賊辞めるから!!命だけは助けてくれぇ!!?」
「ふぅん?それなら命はとらないよ。但し、また悪事とかやってたら……今度は潰すから。」
「は、はいいいぃぃっ!?あ、ありがとうございますぅぅぅっ!!!?」
山賊団の頭はそう言うと、仲間たちを起こして逃げ去っていくのであった。
「良いのか?もしやり返しに来たら面倒だぞ。」
「その時はぶっ倒すから良いよ。それより腹減ったから行こうぜ。」
ブライとホムラは再びパシュールに向かって進むのであったが、その光景を見ている者がいたのであった……。
「……。」
◆◆◆
その頃、ドメニア帝国の城の中になる広い部屋、そこには、大きなテーブルが置かれており、そこには多種多様な料理と酒があり、その席には凶王と四天が食事をしている。
「はぐっ!あぐっ!!んぐんぐっ!!ぷはぁ!!美味いなぁ!!酒も飯もよぉ!!」
「グルーズ、食事中に喋るな。唾が飛ぶ。」
「品のない……。」
「相変わらずですね。」
「何だよ?喰い方に文句を付けるなよな?どう喰おうが俺の自由だろ。あぐっ!!」
グルーズの食事の仕方にそれぞれ非難の視線を向けるシュラ、シルヴィア、アストラ。そんな中で凶王は静かにステーキを切り分けて食べながらワインを飲む。
そんな話題に挙がったのは、ガルニカ火山で戦死した将軍ゼルゲアの事であった。
「そう言えば、将軍の1人……確かゼルゲアという者が倒されたらしいな?兵達が動揺していた。」
「ゼルゲアぁ?誰だそれ?」
「数多いる将軍の内の1人だ。力自慢であり、我々の席を虎視眈々と狙っていた男だ。不遜な輩だが、多少は実力があった……。」
「探索に出た人の話だと、部下の兵士たちも全員殺られたらしいよ?どんな人が倒したんだろう……。」
アストラの言葉に3人が考え込むが、凶王は5枚目のステーキを平らげて、ナフキンで口を拭く。
「……誰であろうと構わない。必要なのは、我々の国の将軍が殺られたということだ。この大陸を支配するためにも、障害は排除するさ。あぁ、それと障害といえば、かの国は?傘下に加わると言ってきたか?」
「陛下、返答なのですが……相も変わらず“断る”との事でした。何でも女王が突っぱねているとの事です。」
「そうか。なら、仕方無いね……。シルヴィア、将軍の中で動ける者は?」
凶王の言葉にシルヴィアはその眼を見て答えた。
「ちょうど将軍の1人……“
◆◆◆
山賊団を撃退したブライとホムラはパシュールの町に到着した。
パシュールは小さいながらも賑わっており、野菜や果物の市が盛んであり、様々な道具も売っていた。
「へぇ、すごい賑わいだなぁ。」
「ここだったら何でも揃いそうだな。んで、どうするよブライ。」
「まずは宿の確保だな。それから次の目的の計画を立てよう。んじゃ、俺は宿見つけてくるわ。後でここに集合な。」
「分かった。」
ブライとホムラは別れて用事を済ませに向かうと、町の中を進んでいくのであったが、そんなブライの後を追うローブを頭まで被った“追跡者”がおり、その者は背中に何やら背負っている。
そんな中、ブライが建物と建物の間に入っていくのが見えたのを追うと、そこにはブライはおらず、行き止まりであった。
「なっ!?何処に行った!?」
「……お前か、俺達をつけ回してたのは。」
「っ!?」
背後に立っていたブライに驚いたその者は振り返ると、後ろに大きく飛び退いて背中のソレに手を掛ける。
そんな中、ブライは腰に差している竜刀を手にしながらも追跡者に尋ねる。
「やる気なら相手になるが、こっちは何者かをただ尋ねただけだ。戦う気はない。」
「……。」
「まぁと言っても名乗らないと信じてはくれないよな?俺はブライ。ブライ・グローリアだ。名前、なんて言うんだ?あと、顔も見せてくれると助かる。」
「……分かった。」
ブライの言葉に頷くと、追跡者はローブの下げると、そこから出てきたのは“白”であったが、その首には“首輪”されていた。
「ん?お前は……。」
「俺は、“ソウガ”。獣人、“氷狼族”のソウガだ。」
「氷狼族……。聞いたことがある。確か、“餓狼族”という狼の獣人の稀少上位種で、個体数がかなり少ないと。」
“氷狼族”、それはこの大陸に存在する狼の獣人“餓狼族”の中でも珍しい種族である。
人が立ち入れない氷の山、“ノーザン・ロック”に棲むとされており、高い戦闘能力と国1つを凍らせる程の氷の力を自在に操れる。
仲間意識が強く、種族の男女全てが家族の様に強い絆で繋がっているので、群で狩りをする。
「これは驚いた。だが、氷狼族がなんでこんな所に?それに、その首輪は……。」
「それを説明する為にも、俺の“願い”を聞いて欲しい。」
「“願い”?もしかして、その首輪に関係が?」
「この首は魔封環……つまり枷にもなってる。だがこいつはかなり頑強で『バギィッ!!』へ?」
「頑強?軽く壊せたぞ。」
首輪が壊された魔封の首輪を見て、ソウガは目をシパシパさせるが、次の瞬間、膝を付いて静かに涙を流したのだ……。
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