第14話 “四天”の1人、来る
ブライ、ホムラ、そして新しく加わったソウガの3人は共に旅をしていた。
3人は魔物や山賊、敵対する貴族やその将兵達とも戦っていく中で経験を積み、ブライの空間魔法で訓練を続けていった。
その途中で彼らは酒場のある小さな国“アムル”へと立ち寄り、そこで食事をしながら情報収集をする事にしたのだが、3人は町に攻め入ってきたドメニア帝国の将軍である
「ふっ!!」ギィィンッ!!
「ぐ、ぐふぅ~!な、なんて馬鹿力だぁ!!?オデの体が圧されるなんてぇ!!」
「こっちも負けるつもりはないんでね、ぇ!!」だぁんッ!!
「げふっ!!?」
ブライはガヴルのでっぷりとした腹を蹴って後ろに飛び退く。
ガヴルは初め、悪食の二つ名の通り、魔法も斬撃も人の肉だろうが石だろうが食べてしまい、吐き出した物体を固めて、得物である石鎚で射ち放ってくるが、ブライは全てを切り裂いた。
眼と体が慣れてきたブライは徐々にガヴルを押し返しつつあった。
「一刀、風斬りっ!!」ビュオオオオオッ!!
「ひんぐううううっ!!!?」ずばああぁっ!!!
ブライの斬撃を受けたガヴルは地面に倒れるのであった。
「ぐぅ~っ!?こ、このガキぃっ!!!よぐもごの悪食将軍であるオデを!!く、喰い殺してやる!!」
「やってみろよ。あと、俺よりも“他”も気にした方がいいぞ?」
「なんだどぉ?「が、ガヴル将軍!?」な、なんだぁどうしだぁ!!?」
「そ、それが!城責めを行っていた兵士達なのですが、表門と裏門にて応戦にしてる2人の戦士によって現在苦戦しております!!」
「な、なに"ぃ!!!?」
◆◆◆
「はあああっ!!
「「「「ぎゃあああああああっ!!?」」」」
城の表門を攻める一団の相手しているのは槍を構えて、門の前に立っているホムラであり、その火力に帝国兵達は苦戦し始めていた。
逃げようとする帝国兵達、しかしホムラは追撃開始する。
「逃がすか!
ゴオオオオオオオオオオオッ!!!
「うわあぁぁぁぁっ!!!!?」
「だ、誰か、助け……!」
火焔地獄の炎と熱にやられていき、次々と倒れていく敵兵士を見ながらホムラは他にも苦戦している仲間達の面へと向かうのであった……。
◆◆◆
「はあああああっ!!」ずばああぁっ!!!
「ぐあああああっ!!?」
「ぎゃあああああああっ!!?」
城の裏門から奇襲を仕掛けようといたところを止めたのは、空から現れたソウガは得物の両刃の手斧グレイシャで切り裂き、粉砕していき、その姿を見た隊長が撤退を命じる。
「ば、化け物だ!!?こんな奴がいるなんて……!て、撤退だ!!てった」
「逃がすかよ!!ブリザードストーム!!!」ドヒュウウウウウウッ!!!
「「「うわあぁぁぁぁっ!!!!?……ーーーーー。」」」パキィィ……っ!
ソウガの放った全てを凍結させる冷気の渦に包まれた帝国兵達は物言わぬ氷像と成り果てたのであった……。
◆◆◆
「2人ともかなり暴れてるなぁ、それじゃあこっちも終わらせるか。」
「ぐ!?ぐぬぬぬっ……!オデを、ドメニア帝国将軍が1人を嘗めるなあぁぁぁぁっ!!!」
「竜牙突!!」ダァン!!
ブライの放った牙突はガヴルの頭に命中し、その頭は抉られ吹き飛んだガヴルは動かなくなり、報告に来ていた兵士は恐怖して逃げ帰り、帝国の兵士達は撤退していったのである。
「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」
襲われていた国の兵士達は勝鬨を挙げ、ブライ、ホムラ、ソウガの3人は国を救った英雄として宴に招かれたのであった……。
◆◆◆
その頃、ブライ達から逃げたドメニア帝国の兵士は、3人のことを報告しに玉座へと向かう。
そこには“凶王”の他に“妖天”のシュラ、“死銀姫”のシルヴィア、“腐海”のアストラの四天の内の3人が控えていた。
兵士は恐怖と重圧に震えながら、報告をする。
「が、ガヴル将軍及び一万の兵士達は、侵攻していた国を落とそうとしておられ、あ、あと僅かという所で陥落する所を、さ、3人の戦士が現れたのです……。」
「3人?たった3人加わった程度でガヴル軍が殺られたのか?アムルくらいの小さな国なら1日で墜ちるはずなのにか?」
「は、はぁ!し、しかし、アムルにいた3人の戦士により、戦線は瓦解し、ガヴル将軍も討ち取られてしまったのです!」
「そうか。よく帰ってこれたな。」
「は、は!わ、私も命からがら!「おいおい、何勘違いしてんだ?」……へ?」
「俺が言ってるのは、よくオメオメと帰ってきたなって意味だよ。敵と戦わずに、あまつさえ逃げ帰ってくるとは……。」
「へ、陛下!?あ、あの、な、なにを……!?」
凶王の雰囲気が変わり、その雰囲気に兵士が震えながらも尋ねた時であった。
「へ……?なにこ」
バクンッ!!!!!!!……ドサッ。
「ちっ、あまり美味くないな。ったく、もう少し料理食っとけっての。」
上半身を喰われた兵士の死体がその場に転がる中、凶王は兵士をそう評価して、物言わぬ肉となった死体の足を掴むと、窓からポイ捨てし、下にあるごみ捨て場に捨てて玉座に座る。
「はぁ~ぁ。ったく、小国1つも落とせないとはなぁ。全く、これならグルーズにお願いすればよかったなぁ。というか、グルーズは?」
「グルーズはいけません陛下。あの馬鹿はやりすぎてしまいます。それに野蛮人の事ですが、今頃何処で何かしている頃でしょう。」
仲間の1人である人物に呆れた様子で答えるシュラに、凶王は静かに頷くのであった……。
とある平原。
「おっ!彼処かぁ、アムルって国は。へへへッ……ジュルッ!腕が鳴るねぇ……!」
◆◆◆
その晩、アムルを守ったブライ、ホムラ、ソウガ達は宿にてゆっくりと休息しており、のんびりとしていた。
昼間は帝国に滅ぼされかけそうになっていたアムルだったが、それもブライ3人に救われた。怪我人は大勢出したが、幸いにも死者は出なかった。
帝国の魔の手から救ってくれたブライ達3人に王は何かお礼をしたいと言ったが、3人はそれを拒否し、民を優先してほしいと言って、城を後にしたのだ。
「勿体無いことしたな?宝くらい要求すればよかったのによ。」
「別にそういうのが欲しくて戦った訳じゃないんだ。旅の金だけくれただけでも御の字って奴だよ。」
ソウガの言葉にブライが返す。
彼の手元には旅の資金が入っており、その中身は金貨50枚であり、額に換算すればかなりの額である。
最初は遠慮したが、それでは気がすまないと言ってブライ達にお礼として渡したのだ。
そんな中、ホムラは考え込んでいた。
「ホムラ、どうした?」
「……ドメニア帝国なんだが、最近版図を無理に拡げてる気がしてなぁ。何か嫌な予感もするし。」
ホムラがそう言うと、窓の外を見る。
ガルニカ火山やこのアムルの国にしても、帝国はまるで凄まじい勢いで攻め入ってきて、版図を拡げようとしているようであった。
それが気になったホムラは腕を組んで考えており、ブライとソウガも静かに聞き入っていた。
その時であった。
ドガアアアアアアアアアッ!!!!!
「「「!!?」」」
けたたましい爆音が外から響き渡り、外は炎が燃え盛っていた。
ブライ達は何があったのかを知るために外に出ると、町は滅茶苦茶に破壊されており、近くに倒れていた男を抱き起こして話を聞くことにした。
「おい!おい、なにがあった!!?」
「て……帝国、の……奴が……“化け物”が…………。」
「おい?おい!!今、帝国って!」
「ドメニアか!?こんなのいくらなんでもやりすぎだろ!?」
「どうするブライ。」
「……ホムラ、町の人たちを避難させてくれ。確か裏は山だった筈だ。避難の間は俺とソウガの2人で行ってくる!行くぞソウガ!」
「分かった!!」
「気を付けるんだぞ!?」
ブライとソウガが爆音のした方へと向かい、ホムラは兵士達と一緒に民の避難を行った。
そして、2人が門の近くまでいくと、そこはひどい有り様だった。
「これは、酷いな……。」
門は粉々に破壊され、さらにはその周りがクレーターが出来ており、その真ん中には“虎のような模様のある金髪壮年の男”が立っていた。
「お前、何者だ!!?」
「あ?生き残りか?まぁなんでも良いさ。」
男はブライ達に腰から抜いた大剣を向けた。
「俺様はドメニア帝国、“四天”が1人!!蛮王のグルーズ!!!!……テメェらも俺様の“糧”となれ!!!!」
グルーズはそう言うと、ブライとソウガに襲いかかるのであった……。
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