第7話 ホムラの“傷”と“帝国”の計画
翌日、コモレビの町で朝を迎えたブライはガルニカ火山に目を向ける。その火山は前よりも赤々と輝いており、今にも噴火するのではないかと思ってしまう。
しかし、それとは別にブライは何か“嫌なモノ”を感じていた。
「何回やな予感がなぁ……。ん?あれは……。」
「……。」
そんな中、町の外へと出ていくホムラを見かけたブライは、何処に行くのか気になってその後をこっそり着いていく。深い山々の間を歩いていくホムラは途中で花を幾つか摘むと、ガルニカ火山の麓にある巨木の下へとやって来た。
そこでブライが見たのは、そこには簡素だが小さな墓があり、その墓に花を置き、悲しげな表情で手を合わせるホムラの姿であった。
「(あれは、墓か。一体誰の)…『パキッ!』…あっ。」
「誰だ!?って、お前!!」
「ご、ごめん!!覗いちゃって……!けど、何だか気になって。」
「さっさと出ていけと言った筈だぞ。人の後を追うなんて良い趣味してるな?」
「ごめん、勝手に後を付けて来た事は謝る。けど気になったんだ。よかったら聞かせてくんないか?」
「……聞いたら帰れよ。」
そこでホムラが話しをしてくれたのは、自分の過去についてと彼が手を合わせていた墓の人物、父についてであった……。
ホムラは元々コモレビの民ではなく、ガルニカ火山の麓で両親と暮らしており、コモレビの町には狩りで捕まえた獲物を鑑定に出すために訪れていた。
ホムラの父である“グレン”はとても穏やかだったが、誇り高い人物であり、山賊や魔物にも毅然と挑み、勝利してきたらしく、そんな父をホムラは誇りに思っていて憧れていた。
しかし、ある日家に訪れた鎧を着た男と父が口論をしているのを見ていたホムラはグレンに尋ねるも「お前は気にするな。」の一点張りであり、その日からコモレビの町の民達はグレンやホムラを遠目に見るようになっていた……まるで化け物でも見るかのように。
そんな中でホムラはグレンと些細なことで喧嘩をしてしまい、家を飛び出したのだが、その際に何者かに襲われそうになり、何とか応戦するもその者の持つハンマーに吹き飛ばされ、捕まりそうになっていた所を父に助けられた。
父はその者と戦ったが、傷付いたホムラを狙ってきた事でホムラを庇った事でグレンはハンマーによって瀕死の重傷を負ってしまったのだ。
『お父さん!!?お父さん!!?』
『ぐ……っ!ぐっ……ホム、ラ……逃げ……』
『お父さん!!?お父さん!!!!?』
父が殺られた事でパニックになってしまったホムラ、そんな彼にトドメを刺そうとした謎の者だったが、仕入れのために森に来ていた鑑定屋の主人に助けられたが、グレンはすでに事切れていた。
『お父さん……?お父さん……!!うあああああああああっ……!!!!?』
父の死を目の当たりにしたホムラは泣き叫んだが、その後に気絶してしまった。その後はコモレビの鑑定屋の主人が用意してくれた家に住んでいるが、民達はホムラが来たことで作物の不作が続いた事で彼を煙たがり、厄災の子と呼んだのだ……。
「じゃあ、その墓は父親の?」
「……お父さんとお母さんの墓だ。俺はたまにここに来て手を合わせてるんだ。」
「そうか……。」
「……ほら、話をしたんだからさっさと。……ん?」
「どうした……?」
ホムラがブライに帰るように言おうとした時、ホムラはガルニカ火山に向かう謎の集団を見てその後を追い始め、ブライも後を追った。
「……あいつら、何してるんだ?」
「……見た感じだと、ただハイキングや洞窟探検に来た感じじゃないな?」
謎の集団は多くの荷物を持ってきては、ガルニカ火山の洞窟へと入っていき、黒い鎧を着た者達が作業をしていた。一方の集団がでは何か鉱物らしき物を採掘しているが、もう一方の集団が火山のマグマに何かを落としている。
その指揮をしているのは、黒い牛を連想させる巨大な戦鎚を持った男であった。
「お前ら、今日中にこの“火山を噴火”させるぞ!!そして近隣の町や村から民を拐って労働力にするんだ!!手ぇ抜くなよ!!!?これは俺達“ドメニア帝国”の発展の足掛かりになる!!!」
「「「「はいっ!!!ゼルゲア様!!」」」」
ゼルゲアと呼ばれた鎧の男は戦鎚を地面に叩き付けると、集団の者達は力強く応える。その一方で火山を噴火させると聞いてしまったブライとホムラは隠れて、戦々恐々としていた。
「……ホムラ、ドメニア帝国ってのは?」
「……北北東にある巨大な帝国だ。何でそんな連中がこんな所に……?それより、あいつらこの火山を噴火って……!!?」
「……なぁ、もしこの火山が噴火したら、コモレビの町は……!!」
「誰だ!?そこにいるのは!!!?」
2人が話しているとゼルゲアが叫び、彼の部下達が臨戦態勢になり、それを見たブライはホムラに隠れながら必死の形相で伝える。
「ホムラ、お前が町まで行って避難をさせろ!俺があいつらの相手をしておくから!」
「なっ!?お、おま「早く!!」っ!わ、分かった!」
ブライは腰に指していた愛刀の黒羽を抜くと、彼らの前に姿を現し、ホムラは歯を食い縛ってコモレビの町へと走って向かうのであった……。
◆◆◆
「ゼルゲア様!ガキが1人っ!?」
「知られると厄介だな。おい、お前ら。あのガキを「させるかよ!」っ!」
ガギィィィンッ!!!
ブライの黒羽とゼルゲアの戦鎚がぶつかり、互いに鍔是りをしながら睨み合うがゼルゲアはブライを殴り飛ばそうとするも、ブライは即座に後ろに跳んで避ける。
さらにホムラを追おうとした者達に魔法を放つ。
「
「「「ぎゃああああああああっ!!?」」」
ブライの放った火球が兵士らしき者たちを焼き、それを見たゼルゲアは眉間にシワを寄せて、ブライを睨み付ける。
「ガキがぁぁっ……!」
「……悪いけど、誰も行かせないぞ!」
「面白ぇ、叩き潰してやるよ……。大人をナメるなよ?くそガキ!!」
そう言って戦鎚を振るうゼルゲアとブライは相対するのであった……。
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