第5話 外からの侵略者、その名は…………“人間”。

 ブライが風と土の試練を受けていたちょうどその頃、何時もと変わらない日常を過ごしていたクロムウェルの竜人達。


 そんな中、ドラゴニアの警備兵がクロムウェルに向かってくる大軍勢を見たのであった。


◆◆◆


 その頃、ムフェトは外から感じた違和感に外へと出向こうとした時、ブライが風の魔人フルストと土の魔人マーグとの戦闘を終えて出てきたのである。


「はぁ、はぁ……!!疲れた~。あれムフェト様?どうかしたんですか?」


『外が妙だ。背中に乗れ!!』


 ムフェトの声にブライはムフェトの背中に乗ると、神殿の外に出るとそこは…………阿鼻叫喚の地獄と化していた。


 大人も子供も竜種は無惨に殺されており、それをしているのは自分達と同じように日本足である生き物であった。


「ムフェト、様……!!?あいつらは、何なんですか!?」


『奴等は、“人間”だ。』


「人間?」


『群を作り、それを良いことに多種族を殺してまわったり、奴隷にして傷つけたりする下衆な種族だ。奴等、この国にまで手を伸ばしてきたか……!!』


「そんな…………!!!助けないと!!」


『幼いお前が行っても殺されるだけだ!!我がやる。』


「え……?」


 ムフェトはそう言うと、その口から一滴の光をクロムウェルへと落とした。そして、儚げに呟く………。



守護竜の雫ザ・エンド。』



 その瞬間、クロムウェルの全てを白い閃光が包み、ブライも吹き飛ばされないようにムフェトにしがみつく。


 そして、目を開いた時には…………全てが消えたまっさらな大地が拡がっていた。


 その光景にブライは言葉を無くした。


 自分が昔遊んだ広場も、家も、美味しい果物を作った農園なども全てが消え去っており、さらに、死体なども消し飛んでおり、人間の影なども全て消し飛んでいた。 


「あ……ああ…………!!!」


『すまぬな。こうするしかなかった。奴等に奴隷にされて弄ばれる位ならと思ってしまった。』


「なんで…………!!!ただ追い払うことだって出来た筈だ!!!なのに、なのに!!!!!」


『我はこうする事しか知らぬ……。恨みたければ恨め。』


「~~っ!!!!!うわああああああああああああっっ!!!!!!!?」


 ブライはただそこで泣いた。大声で泣き叫び、声が枯れんばかりに涙をボロボロと流したのであった……。


 その翌日、ブライは塞ぎ混んでいたが、そんな彼にムフェトが後ろから歩み寄る。


『我が憎ければ殴り掛かってこい。』


「っ!!?」


『それで貴様の気が済むのなら殴り掛かってこい。』


「~~っ!!!?ああああああああああっ!!!!」


 ブライはムフェトに殴りかかり、その小さな拳で殴り掛かった。


 拳から血が流れる程に殴り続け、そして、殴り続けていたブライは啜り泣きながら崩れ落ちる。


「お母さん………!!!お父さん…………!!!みんなぁ…………!!!ああああああああああっ…………!!!」


『すまん…………!』


 その後もブライは泣き叫び続け、それは3日間も続いた。


 そんな中、泣き止み塞ぎ混んでいたブライは5日目にはムフェトに話し掛けてきた。


『何だ?』


「強く、なりたい…………!!母さんや父さん達を傷付けて、弄んでいた人間達とか、そう言う奴らよりも、何より…………!よりも!!!!だから、俺に力をくれ!!!!」


『………良いだろう。そこまで言うのであれば、我の力……いや、全てをくれてやろう。着いてこい。』


 ムフェトがそう言うと、ブライは後を追う。


 すると、神殿に戻ってきたブライの前に一振りの黒い刀身の刀剣が渡される。


「これは……。」


『竜刀、黒羽。お前が試練を終えた後につもりだった。それを持っていけ。そして……。』


 ムフェトはブライに爪先を伸ばしてくる。


「これは?」


『我と同化しろ。そうすれば貴様と我は一心同体になり、竜人族本来の能力を全て扱えるようになる。まぁそれも貴様の鍛練次第だ……どうする?』


「やってやるよ……!!!」


 ブライはムフェトの爪先を握ると、ムフェトは光の粒子となり、ブライに吸収されると彼等はまさに一心同体となったのであった。


 その後、ブライは家族の墓を離れた場所に作ると手を合わせて別れを告げていた。


「お母さん、お父さん……。本当にさよならだけど、元気でね。行ってきます。」


 ブライはそう言うと旅に出たのであった……。

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