第2話 守護竜“ムフェト”と試練
翌日、ブライ・グローリアは両親と親戚と共にクロムウェルにある聖地、“竜の神殿”へと来ていた。
そこは物々しい雰囲気が漂っており、神殿の中央には巨大な竜の頭が彫られており、それを見るだけでブライはゴクリと唾を飲み込んだ。
ブライは最後に両親と抱き合うと神殿に向かって歩き出す。
「……ブライ。」
「それじゃ……行ってきます!!!」
ブライはそう言うと、神殿の中に入る。すると、神殿の石の扉が閉じていき、奥へ奥へと燈籠に火が灯っていき、ブライは恐怖しながらも真っ直ぐ前へと進んでいく。
「(あ、灯りのお陰で明るいけど、何だか不気味だなぁ……。それに、“ムフェト”様ってどんな竜なんだろ。)って!オレは竜人族なんだから、怖がってたら駄目だよな。頑張っていかないと!」
ブライはそう意気込むと真っ直ぐ前へと進んでいく。
すると、目の前に階段が現れた。その階段は下に続いており、ブライはゆっくりと奥へと進んでいく。
「ずいぶん長い……。ん?」
階段が終わり、開けた場所に辿り着くブライ。
そこは燈籠に囲まれた円形の広場であったが、それ以外は何もなく、ただ広い場所であった。
「変なところに出ちゃった。道間違えたかな?『間違ってなどおらぬよ。小僧。』………………え?」
ブライが頭の中に聞こえてきた声に戸惑って辺りを見渡すが、どこにもそれらしき影はない。
すると、奥からズシンッ……!ズシンッ……!と足音が聞こえてきたのである。
「ごくっ……!!だ、誰?」
ブライが声を掛けるも応じることはなく、ただズシンッ……!ズシンッ……!と足音が聞こえてくるだけであった。が、しばらくすると、奥から1体の赤黒い鱗の巨大な“竜”が現れたのであった。
「え…………?」
『ほう?お前が“試練”を承ける小僧か。ちっこいのに、こんな奥地まで来るとはな。…………おい、どうした?』
「で、デかい………………。」
ブライは目の前に現れた竜にそう言う。
その竜は確かに巨大であり、翼も巨大で、頭には立派な角が数本生えており、尾にも幾本もの棘が生えている。
しかし、ブライからすれば見えているのは体と頭だけであり、自分を見下ろしている竜に対しての感想はそれだけであったが、それを聞いた竜はブライを不思議そうに眺める。
『お前、中々面白いやつだな?我を見ても気絶せんとは。まぁいい、我は守護竜“ムフェト”、貴様に試練を与えるのだが、貴様の名は?』
「っ!?は、はい!ブライ、ブライ・グローリアです!!竜人です!5歳です!!」
『歳は良い。それより、ブライか。中々勇ましい名前ではないか?』
「は、はい!両親が付けてくれました!自慢の両親です!」
『そうかそうか。ところでブライよ?試練については聞いているか?』
「は、はい。確か6つの試練を受けて、合格すると旅に出るって聞いてます。」
『そうだ。まぁ試練の内容だが簡単に言えば、この先にある6つの扉を潜り、その中で6つの魔人と戦ってもらう。』
「魔人、魔族のですか?」
『火は怒り、水は悲しみ、風は嫉妬、土は罪悪、光は孤独、闇は不安だ。そいつらに勝てば我と盟約を交わし、真の竜人となる。敗ければ“死”だ。……やるか?』
ムフェトの言葉にブライはゴクリ……と、唾を飲み込む。
恐怖で足が浮きそうになるが、ブライはムフェトに対して言い切った。
「やります!!オレは、竜人です!!」
『……その覚悟や良し。ならば。』
ムフェトがブライに投げ渡したのは、火、水、風、土、光、闇の記されたサイコロと一振りの剣であった。
『その剣がお前の武器、その賽が受ける試練を示している。完了すれば絵が消えて真っ白の賽になる。さぁ、賽を振れ。』
ブライはサイコロを高く上げる。
そして、サイコロは地面に転がり、コロコロっと転がって現れたのは……水の試練であった……。
『まずは水の試練か。来い、扉には水の印が彫られている。』
「はい!!」
ブライは返事をするとムフェトに案内されて、奥へと向かうとそこには確かに6つの扉があり、ブライが水の印が彫られている扉の前に立つと扉がゆっくりと開く。
「…………行くぞ!!」
ブライは深呼吸すると、水の扉の中へと入って行ったのであった……。
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