魔鏡

魔鏡

あきらめるんだ、魔王」

「我は、…終りかも知れん。が、お前だけは」

 見た事のない魔道具、灰色ににごった鏡で何が出来る。

「我の熱い想い、くるおしさ、寂しな、切なさ、全て、全てをこの一撃に」


 バチバチバチ。「得意の雷撃魔法か」

 ぶぅ~~~ん。かざしていた手から鏡が離れ、俺の背後に。

「もう止めるんだ」


 バチバチバチ。どぉーーーん。

「はぁ~、どこに。鉛の盾、だと。熱っ。ぐぉぉぉおおお、背が焼けるっ」

「鏡の名はレントゲン。タングステンと言う金属で造られた魔鏡」


「なんだ、これ」「床を見て」

「!、黒ずんだ中に、…俺の、骨、か」

「鏡は熱い想いの雷撃を受けると、見えない闇の光を放つ」


「こ、この程度の火傷、ヒールで」「火傷はね」

「どう言う」

「お前は年間被ばく量を越えた。不治ふじやまいで死ぬしかないのさ」


 だだだ。「魔王ーーー」どすっ。「ぶっ、…ぐはっ」

「どうしてやめてくれない。逃げれば、また一緒に。なっ」「手、…手を」


「ここ、ここだ、俺の手だ」「…痛かった」

「やってから、言うなよ」

「我は、一途いちずだかな。お前を他の者にたくすのは嫌だ。ごぼっ」


「今っ、今なら治癒ちゆできる」

「お前は助からない。取り残されるのは嫌。この腕の中できたい」


「置いてくな」

「必ずむかえに行く。こほっ、…待って、おれ」ぱさ。


 どたどたどた。「やったのかっ」「おい」

 ばしっ。「れるなぁーーー」


「ちょっ」「何を」

「この子は俺が連れ行くっ」

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