脳みそ交換クラブの件《くだり》

 ここ、花のみやこ鹿児島かごしまの、大通りのはなやかさと申しますと、ほかるいを見ません。

 両側にずらりと並ぶ洋館ようかん造りの店、小僧こぞう達がわれ先にと客を引きます。

 カフェ~の女給じょきゅう達も着飾きかざった姿に割烹着かっぽうぎで、おしとやかにお声がけをし、あない致します。

 建物の間には、大通りにまじわる細い道、所謂いわゆる路地道があります。



 足をみ入れれば、これまた面妖めんような店がのきつらねているのです。

 あやしげな古書を売る店、占いに呪術じゅじゅつては何をあきなっているのか謎の店まで、こうした商店が、ご法度はっと品々しなじなを売っていないかを見て回るのもN岡警部けいぶとその配下の者達の仕事なのです。

 そして昨今さっこんみやこさわがせる事件はあったのです。



 人の脳みそがてられた事件があり、その後脳みそのない人の死体が見つかったのです。

 検死けんしの結果、おでこの真ん中あたりから上が綺麗きれいに切り取られ、あるはずの物がきれいさっぱり無くなっていたのです。

 数日前の脳みそは、死体の物であるとし、身元は色々な事情から色街いろまちに売られ、姿を消した少女でした。



 この事件が起こる少し前、N岡警部けいぶは気になるうわさを耳にしていたのです。

 色事いろごとき、人を甚振いたぶるのにもき、薬にもきた、道楽三昧どうらくざんまいの金持ちがかようと言う脳みそ交換クラブ。

 もし本当にあるなら人だけでせるはずはない、鬼神きしん邪神じゃしんたぐいが関わっている。

 そして残念な事にそれはあったのであります。



 それも大通りの真ん中のカフェ~、何食わぬ顔であきないをし、店の地下に脳みそ交換クラブがある事を突きとめたのです。

 今、N岡警部けいぶと配下の者達で取り囲み、何故なぜ鬼天竺鼠おにてんじくねずみに、人ならざる者が関わっているとなれば水守みずもり家の巫女みこ異能いのう者めぐる、妹にあだなす者はゆるすまじと、配下の者にまぎれる怪盗かいとうサクヤ。



 前代未聞ぜんだいみもん大捕おおとり物は、始まろうとしているのであります。

 はてさてこの結末や如何いかります事か。


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