第3話



 あれから、数体の魔物を倒した。


 絵本から出てきたような口の大きなオオカミ型のモンスターと、肩幅の広いオークみたいなやつとかが出てきたので、それを倒して『食べた』。


 特段、覚えるほどもない雑魚ばかりだ。しかし、倒したことで確実にレベルアップしている実感はある。ただ、レベルアップが体感なのでイマイチ分かりづらい。もっとこう、パっと見てステータスが分かればいいのにな。


 少なくとも、ゲームでいうところの、まだチュートリアルだ。



 すっかり有頂天な俺だったが、ふと冷静になって足元を見て見ると、コンクリートで舗装されているのかと思いきや、よく見たらふにゃふにゃしていて、ところどころ素の地面が顔を出していた。まるで粘土細工を敷き詰めたような出来だ。どんな整備してるんだろう。



 そんなどこか歪な街並みの中で、あるひとつの文言を見つけた。



『進め。進まなければ死ぬぞ』



 壁にナイフで傷つけたような文字なので、なかなか物騒だ。


 が、俺の心は踊った。


 そうそう、こういうのを待ってたんだよ。


 俺はこういう分かりやすい指示がないと動けない受動的な人間だからさ。


 看板のする方へ進んでいくと、やがて荒廃した舞台が待ち受けるようになった。


 建物なくなり、アレみたいな場所が延々と続いていた。塩湖。地面が空と同じ色をしているような場所だ。と言っても空は爽やかなブルーじゃない。空は、俺が起きたときからずっと夜空だ。そんな銀河のような背景が、ずーっと、延々と続いている。


 そこを歩ききれば、まるで爆発が起こったような黒ずんだ煤が周囲に散乱しており、戦ったかのような後が残っていた。


 銃の痕のような穴もあれば、剣を走らせたような跡、等々。激しい戦いがあったようだ。



 その戦いの跡地の奥に、開けた巨大な鉄のような扉がある。


 奥は階段になっているようで、地下に続く階段があるようだ。下りてみよう。


 階段は、まるで銀河の中を下っているかのような景色が続いた。すごい、星の中を一歩一歩下りているような感じだ。今まで俺は宇宙にでもいたのかもしれないとさえ思える。


 とはいえ、感動は一瞬。興奮はすぐに冷めた。元々こんなプラネタリウムみたいなアトラクションを楽しむようなタチじゃない。さっさと地に足つけた異世界バトルをしたいものだ。

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