第112話 試験会場へ

 紹介された物件は条件に合致しているのだが問題が一つ。

 ‥‥‥出るらしい。


「同居人の方に除霊の出来る方、もしくは魔術師だったり聖職者だったりすればあるいは‥‥‥」


 うーん、魔法陣を描いて除霊出来るかもしれないが‥‥‥。

 汚れているのはティナが綺麗にしてくれるだろうから問題ないし。


「とりあえず押さえておいてください。学院に合格出来るかわからないので」

「かしこまりました。受験頑張ってください!」


 とりあえず辺境爵邸に戻って勉強を仕上げないとな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 受験日当日の朝になった。

「おはようございます!」

「おはよう、エドガー。頑張って来いよ」


 試験会場まで馬車で送ってもらえるらしい。エリーゼ様は先に馬車に乗っていた。教本を読み込んでいるようだ。


「おはようございます、エリーゼ様」

「おはようございます、エドガー様」


 挨拶だけするとまた食い入るように教本を見ていた。

 

『最後の鐘が鳴るまで諦めてはいけません。直前に見た問題が出る事もあります』


 前世の大学受験時によく言われた言葉だ。それをそのままエリーゼ様に伝えた。それを守っているのだろうな。

 俺も最後まで足掻こう。


 馬車の中は二人で無言で過ごした。



「まもなく到着致します」

 御者さんの隣に乗っていたティナから声を掛けられる。


「わかった。エリーゼ様、降りる準備を」

「はい」


 そびえ立つ校門、奥にひかえる大講堂。

 ここが王都学院か‥‥‥。


 王都には住んでいたけどここに来るのは初めてだ。まぁ用事無かったからな。


 つまりここの図書館に入るのも初めてだ。見た事のない魔術書がたくさんあるのだろうか? その点だけでモチベーションが上がってきた。


 それにしてもすごい人数だ。定員二百名のところに5倍の人数くらいいそうだ。


 受付を済ませて校舎内に入る。ティナはここでお別れだ。


「エドガー様! エリーゼ様! ご武運を!!」

「おう」

「ありがとうございますわ」

 ご武運‥‥‥なのかはわからんけどな。


「俺はこっちですね」

「私はこちらですわ。ではエドガー様お互い頑張りましょう」

 教室も違うようだ。エリーゼ様と別れる。


 自分に割り当てられてる席に座る。


「ふう‥‥‥、いよいよだな」

 今のうちにトイレに行っておく。本番中にも行けるかもしれないが時間をロスしちゃうからな。


 トイレから戻り席につき筆記用具などの準備を整える。


 席が埋まってきてほぼ全員揃った。


 試験官であろう人が前に出てくる。

「それでは王都学院入学試験を始めます。全員席に着いてください」

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