第111話 不動産屋②

「不動産屋って思ってたよりもないんですね、エドガー様」

「だな‥‥‥。少し歩き疲れたよな」


 広場のベンチに座って休んでいたところ、誰かが走ってくる。


「あ! いました、店長!」

「すみませーん!! そこのベンチに座ってる方!!」


 ん? 俺たちか? 走ってきた男二人のうち一人はさっきの不動産屋の受付じゃないか?

 怒りのあまり探しにきたのか?


 ビビりながら待つと男二人は目の前でスライディング土下座した。


「エドガー様!! 先程は大変失礼いたしました!!」

「どうかお許しくださいぃぃ!!」


 え? なに? なんかあったんか?

 広場の人たちの注目を浴びるからやめてほしい。


「よくわかんないけど頭を上げてください。なんなんですか?」

「先程はこいつが大変申し訳ない勘違いをしまして‥‥‥、どうか店にお戻りいただけますでしょうか?」

「大変申し訳ございませんでした!」


 事情を聞いた。

 歩きだから普通民の小金持ちの商人の子供だと思った。

 学生だから購入でなく賃貸の客だと思った事。

 種族にノナン族、ドワーフ、エルフと書いてあって完全にふざけていると思った事。

 後から来たセバスさんに話を聞いて青ざめて急いで探しに来た、と。


 あー、最初に名乗れば良かったな。辺境爵家からの紹介だって。


「わかりました。こちらも勘違いさせてしまったので。不敬罪とかにはしませんのでお気になさらず」

「‥‥‥ふ、不敬罪?」


 ん? どこまで話を聞いたんだ? 一応ちゃんと名乗るか。


「エドガー・テオドール五爵と申します」 

「「!? ははぁー!!」」


 再度土下座した二人。注目を浴びる俺。

 いや、もうやめてくれ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 結局他の不動産屋が見つからなかったので店に戻ってきた。セバスさんがいた。


「エドガー様、申し訳ございませんでした。こんな所を紹介してしまって‥‥‥」

「いえ、俺も名乗りそびれたのでお互い様というか。不幸な事故だったと思いましょう」


 再度頭を下げてくる不動産屋の二人。

「改めて申し訳ございませんでした!!」

「あ、もういいですから‥‥‥」


「先程の条件で探させていただきます! 少々お待ちくださいませ!」

「あ、ありがとうございます。お願いします」

 見つかるのかな‥‥‥賃貸じゃなければあるのかな?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「エドガー様、申し訳ございません。こちらの鍛冶スペースはドワーフの方のためですね。それは良いのですがこの射撃スペースというのは一体‥‥‥?」

 あー、射撃場って言ってもわかんないか。まだ銃が一般的じゃないもんな。


「‥‥‥弓を射れるスペースがありましたら」

「なるほど! エルフの方は弓が得意と言いますものね。わかりました!! なるほど、『密集地は避けて』ってのも音に気を遣っていただけての話ですね。鍛冶はどうしても大きい音しますからね!」

 店長はまた向こうに戻っていった。


 いや、うちの鍛冶師ロキソはほとんど音はしない。ついでに言うならうちの狙撃手フルルも音はほとんどしない。

 大きな音がするとしたらティナの射撃くらいだ。


「‥‥‥条件に合致する所が一件ございました。ですがご紹介して良いかどうか‥‥‥」

 ん? なんだろ、事故物件?


「ここは少々問題がありまして‥‥‥いわゆる出るんです」

 

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