第104話 受験勉強


 エリーゼ様から問題集が届いた。この冬の時期は農繁期でもないのでやることは格段に減る。

 人口も増えてきて家や農地も増えた。醸造所も蒸留所も順調に稼働している。


 なのでしっかり受験勉強が出来るというわけだ。


「エドガー様、捗っておりますか?」

「あぁ、ティナ。村の方は問題ないか?」


「エドガー様、つかぬことをおききしますが。王都学院に合格したら王都にお戻りになるのですよね?」

「もちろんだ、ここからじゃ通えないからな」


「‥‥‥ですよね? はぁ‥‥‥」

 ティナがため息を吐くのは珍しいな。


「どうした? ここには優秀なカール様も来るし問題ないだろ?」

「いえ、そちらは良いのですが‥‥‥」


 聞いてみると王都について来たいという者が多すぎて困っているようだ。特にフルルとロキソが聞き分けがないらしい。


「フルルはこの村の治安に欠かせないし‥‥‥、ロキソだってこの村で必要だろう?」

「フルルちゃんは絶対についていくと断言して譲りません。エドガー様から説得してくれませんか?」


 受験勉強にも少し疲れたので息抜き代わりに話をしてみるか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ‥‥‥はい、息抜きなんてとんでもなかったです。


「ヤダヤダヤダ!! エドガー様のいないテオドールなんて知らない!!」


 床に寝そべり、手足をバタバタしている。まるで駄々っ子だ。こんなフルル見たことない。

話を切り出すといつもこうなってしまうらしい。


「フルルは俺について来たいのか? 王都に行ったら何をするんだ?」

「行ってもいいの!?」


「いや、言ってないよ」

「ヤダヤダヤダ!!‥‥‥」

 と、この繰り返しだ。


 見張り台に登って警備隊長に話を聞いてみた。

「エドガー様が王都に行っちまうかもと聞いてからは見張り業務にも全然気持ちが入っていなくて‥‥‥」


「警備隊には代わりはいるのか?」

「新入りが入ったのでフルルさんが抜けても頭数だけは変わりないんですがね」


 新入りはジョイだ。以前のモンスター襲撃で活躍してくれた俺の一つ下の少年だ。

 ジョイのスキルは『射撃』 なもんでまだ12歳だけどライフルの使用を特別に許可した。メキメキと腕は上がっているようだが超天才フルルの技術には遠く及ばない。


 フルルのスキル『エイミング』は特殊スキルで狙いをつけた所や物に当てられるというもの。

 それは弓であってもライフルであっても例えばゴミ箱に投げ入れようとしたクシャクシャに丸めた紙クズであってもだ。


 だからライフルで言えば弾を発射出来れば狙った所に当てられるのだ。


 一方でジョイの『射撃』はライフルの扱いが格段に上手くなるというものだ。

 このまま腕を上げていけば将来は世界一のスナイパーにもなれるだろう‥‥‥フルルを除けば。


「フルルちゃんに指導してもらうのはどうですか?」

「‥‥‥まぁ、そうだな」

 その線で進めてみるか。


 まだ駄々っ子状態のフルルに話を持ち掛けてみる。


「フルル、王都について来たいならジョイを鍛えてくれ。お前じゃないとわからない感覚とかあるだろう、その辺をだな‥‥‥」

「ジョイはどこ!? さっさと訓練するよ!!」


 切り替え早っ!!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 ジョイはフルルに長距離射撃のコツ?感覚?を教わって良くなったそうだ。


 フルルの様にスコープ無しではキロ単位の標的までは見えないのでスコープ付きでの話だが。

 この辺が種族の違いにより少し食い違って最初揉めたみたいだが。結果良ければ全て良しだな。

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