第92話 辺境爵邸
三日間馬車に乗り、辺境爵領都メッサーラに到着した。馬車を交換するために辺境爵邸に向かう。
「まもなく着きますな。ここまで無事に護衛出来まして良かったです」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
その後無事に館に到着した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おっ? テオドール卿のお帰りだな?」
「ゲオルグ様、揶揄うのはよしてください。無事に王都に行って帰って来られました。パーシヴァルさんにも護衛していただきありがとうございました」
「ティナ殿が強すぎて我々はあまり意味が無かったように思いますが‥‥‥」
「そんな事はありません。私はほとんど接近戦しか出来ませんし、複数に囲まれたら対処に困ります」
ティナの言葉は半分本当で半分は謙遜だ。
ティナは拳銃も使うが接近戦の方が強いという意味だ。
「エドガー様、おかえりなさいませ!! ハァ、ハァ‥‥‥」
息を切らせて部屋に入ってきたエリーゼ様。
そんなに走らんでも‥‥‥。
「エリーゼ様、ただいま戻りました」
「お父様との話は終わりましたの?」
「あ、いえ。まだ‥‥‥」
「エドガーと話したいからと言ってそんなに急かすな、エリーゼ。エドガーはさっき帰ってきたばかりだよ」
むーっと膨れるエリーゼ様。かわいい。
「エドガー、今日はもう暗くなるからここに泊まれ。テオドールに戻るのは明日にしなさい」
「その方がようございます」
セバスさんが背後にいた、いつの間に!?
「エドガー様、皆様の仰る通りかと‥‥‥」
ティナも賛成らしい。
「わかりました。ではお言葉に甘えて泊めさせていただきます。‥‥‥ゲオルグ様、少々お話ししても宜しゅうございますか?」
「うむ、なんだ?」
ここで話すのは少し‥‥‥。
「ふむ、ここでは話しにくいか。良い、荷物を部屋に置いてオレの部屋に来い。セバス、頼む」
「かしこまりました。エドガー様、こちらです」
さすがは辺境爵、あの雰囲気を感じ取って対応してくれた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
部屋に荷物を置いてゲオルグ様の執務室に。
「‥‥‥セバス、お前も部屋の外で待て」
「かしこまりました」
これでゲオルグ様と二人きりだ。
「さぁ話してみろ? 王都で何があった?」
「実は‥‥‥」
かくかくしかじか‥‥‥実家の悪行について相談した。
「‥‥‥という訳なのです。どうしたらよろしいでしょうか?」
「ふむ‥‥‥、エドガーよ。其方はまだ12歳だよな? ときどき忘れがちにはなるが」
「はい、もうすぐ13歳になりますが‥‥‥」
「そのような子供がそこまでの心配をするものではない。このオレが話は聞いた、あとは大人達に任せておけ」
それを聞いて安心したのか、俺の目から涙が溢れてきた。
「‥‥‥ありがとうございまず」
「うむ、実の親の犯罪をどうしたらよいか悩んでおったのだな。まだこんなに小さいのに。気付けなかった不甲斐ない大人達を許してくれ」
ゲオルグ様は大きな手で俺の頭を撫でてくれた。それで余計に涙が出てきた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「‥‥‥失礼いたしました。お恥ずかしいところをお見せしました」
ひとしきり泣いてしまった。気持ちは落ち着いたけど辺境爵様の前でみっともないところを見せてしまった。
「うむ、気にするな。普段大人びてるお前の子供らしいところが見られたのは珍しいことだ。良かった良かった、ハハハ」
うー、急に恥ずかしくなってきたぞ。
「ゲオルグ様、どうぞ先程の失態はご内密に‥‥‥」
「うーん、どうしようかなぁ?」
うーわ、やめてほしい‥‥‥。こういう人だったっけな。よりにもよってこの人の前で泣くとは‥‥‥やっちまったぜ。
「‥‥‥冗談だよ。そういえばテオドール村から報告が来てたな。なんだったか‥‥‥」
「え、そうなんですね」
「報告が来たことしか知らん。詳しくはセバスに聞いてくれ」
ゲオルグ様がドアに向かって歩き、ドアを開けるとセバスさんが入ってきた。
「お話は終わりましたかな? テオドール卿宛にご連絡が来ております。読み上げてよろしいですかな?」
「はい、お願いします」
「『エドガー様へ 村に温泉が湧きました。至急お戻りください』 以上です」
!? 温泉だと!?
「ゲオルグ様、これは一大事です。温泉が湧いたそうです」
「エドガーよ、温泉とはなんだ?」
ゲオルグ様でも知らないか。
この世界には基本温泉も風呂もないんだもんな。
「急いで帰らねばなりません」
「待て待て、今からでは暗くなる。明日の早朝に出立しろ」
そうか、しまった‥‥‥。
暗い中を馬車で移動するのは危険があぶない。
「‥‥‥わかりました、そうします。温泉が湧いたとなると更にテオドールの開発援助をお願いしたいです」
温泉がどういうものか説明する。
「‥‥‥ほほう。それは良さそうだな。人も金も貸してやる。早急に取り掛れ」
「わかりました!」
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