第63話 蒸留開始
3日間同じ作業をしたので初日に仕込んだ
「うーん! なんとも言えない香りだ。これを蒸留していくぞ。ブラン、出番だぞ」
「あいよ。でもどうやるのかは詳しくはわかんないぜ、ですぜ」
ウイスキー醪をポットスチルに投入。そして下から火をつける。
覗き窓を見るとモワモワとアルコール蒸気が上がっている‥‥‥のだろうか?
やがて冷却されて垂れてくるニューポットと言われるウイスキーの元。約半日かけて樽一つ分蒸留し終えた。
「これが初留液だな。これを3日分溜めてもう一度蒸留すると酒精は三倍に、量は樽一つ分になる。それを樽に入れて数年熟成させれば完成さ」
「これはまた気の長い仕事ですね」
「出来立てを飲んでみたいですけどね」
ほんの少しだけなら構わないだろう。そんな事を思っていたら‥‥‥。
「なんか美味そうな酒の匂いがして来てしもうた」
ロキソたちドワーフの三人だった。
「出来立てを飲むとかなんとか‥‥‥ワシらにも一口でええから飲ませてくれんかの?」
「この村の蒸留所の初の蒸留酒だからな。ありがたく味わえよ」
長いスポイトで一滴ずつそれぞれの口に垂らす。
「ふむ、ワインより酒精は強いがなんだかよくわからん味だの」
「これが火酒?」
「うーん?」
「これは確かにまだ未完成の味ですね」
「思ってたのとはだいぶ違うな」
俺も一滴だけ飲んでみる。やはり味が尖ってるな。
「これを3日分溜めたもので再度蒸留するんだからな、そこで完成だから」
「その時はまたここに来てもええかのう?」
「止めてもどうせ来るんだろ? また一滴だけだからな」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
三日分溜めた初留液540リットルを再度蒸留していく。
初留ではアルコール分と香りの成分を全て回収する目的なのでわりと大雑把だが、再留に関しては香りの成分を選り分ける目的なので丁寧に蒸留していく。
「初めの前留液と最後の方の余留液は別にするからな」
「そ、それは貰ってもええんかの?」
「夾雑物や刺激臭だぞ? 酒精は飲む以外にも使い途があるからあげないよ」
「ぐぬぬ‥‥‥仕方ないのう」
再留が始まり、前留液を除いて本留液を溜めていく。やがて後半にまた不快な香りの余留液にさしかかるのでこれも取り除く。
「この本留液をワインの入っていた樽に入れるぞ」
「新しい樽は使わないのですか?」
ウイスキーの場合は新しい樽よりも中古の樽の方が良かったはずだ。バーボンに関しては内側をバーナーで焼いた新品の樽でないとダメらしいけど。
「入れたら栓をして保管庫に置くよ。これで何年も寝かせて熟成させたら完成だ」
「そ、その前に一滴だけ飲ませてくれんかの」
先日同様それぞれに一滴ずつ垂らすと
「ゔへぇっ!! ゴホゴホ‥‥‥」
「ケホケホ‥‥‥」
「ゔんっ! ゔんっ!」
みんなが順に咽せた。仕方ないよな、出来立てのウイスキー(ニューポット)はアルコールが70度くらいあるからな。
これから酒造りに関してはこの二人と他のスタッフに任せよう。俺がああだこうだ口を出すよりもその方がきっと上手くいく。
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