第62話 酒作り

「エドガー様、辺境爵様からの荷馬車十台分の荷物が届きましたよ」

「おお! やった。これで酒造りが進められる」


 頼んでいた荷物は大量の小麦と大麦、そして追加のオリザだ。


 酒造りに必要な穀物を使い過ぎて食料として不足してしまっては困る。

 だから食べる用の小麦、大麦を貰った。酒造りには全てテオドール産の材料の方が良さそうだからな。


 届いた食料は村の倉庫に。逆に置いてあったテオドール産の大麦を醸造所に持っていく。


「まずは麦芽汁を作る。と言っても途中まではエールの作り方とほとんど同じだ。麦芽を焙煎してから糖化させる」

「焙煎は何故させるのですか?」


「麦芽自体の成長を止めるため、そして香りをつけるためだな」

「あー、そういう意味があったのですね。知らずにやってました」


 ブルーは親か誰かに教わった酒造りを忠実に守ってきたのだろうな。作業の理由があっても知らずに。

  

「こいつはここに入れちゃって良いのですか?」

 ブランは本当に力持ちだ。100キロはあるだろう大麦麦芽の麻袋をを軽々と持ち上げる。


「あぁ、頼む。俺たちじゃとても持ち上げられないから助かるよ」

「これくらいは朝飯前ですよ」


 約100キロの麦芽にテオドール村の水を入れる事約600リットル。

 初留(一回目の蒸留)で約三割になってしまう。3日分の初留液約540リットルを再留(二回目の蒸留)で約180リットルに。

 およそ3日で樽一つ出来る計算だな。


 村の規模からすればこれくらいで良いかもしれないな。


 麦芽汁を温める、60度くらいに。

 どんどん糖化してくれよ、頑張れアミラーゼ。


「なんだか甘い香りになってきましたね」

 糖度計の魔道具も作った。目標は23度くらいだ。


 目標に到達したら今度は冷ます。30度くらいまで下げたら‥‥‥

「そろそろ出番だぞ、酵母ちゃん」


 酵母と甘々麦芽汁を合わせて混ぜる。これが醗酵作業だ。アルコール分が7〜8%になるまで3日かかる。

 その間温度が上がり過ぎない様に気を配る。

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