第61話 蒸留所にて

 翌朝。

「うぅ‥‥‥、頭が痛いです」

 完全に二日酔いのティナに水を差し出す。水分摂取してゆっくりしてればじきに治まるだろう。


「うぅ‥‥‥、申し訳ございません‥‥‥」

「無理しないで今日は寝てろ。今日は別に危険な事はないから」


「わかりました‥‥‥すみません」


 さて、じゃあ蒸留所にでも行ってみるか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「エドガー様! おはようございます」

「ブランさん? どうしたの、その言葉使い? あ、おはようございます」


「いや、昨日の件で考えさせられて、ました。エドガー様は小さくても貴族なんだからちゃんと敬語とか使わないとダメだなって」


「あー、昨日の件なら忘れてもらって大丈夫ですよ」

「‥‥‥いや、俺自身がこのままじゃダメだと思ったんだ、です。この蒸留所はこの村の名物を作る場所だ、でしょう? エドガー様よりもっと偉い人も来るかもしれない。そこでオレが変な汚い言葉使いじゃダメだと思った、んです」


 ふむ‥‥‥、確かにそれも一理あるな。俺に敬語は不要だけど他の貴族の人には最低限使えるようにしておかないといけないよな。


「わかりました。じゃあ俺で練習してください。間違ってる場合は指摘しますから」

「ありがとう、ございます。それとオレに丁寧に話すのもやめろ、ください」


「‥‥‥わかった。じゃあこんな感じで話す様にするわ」

「OK そうしてくれ、ください!」



「なんだか楽しそうですね。エドガー様は早速視察ですか?」

 ブルーさんがやってきた。醸造所は隣だから聞こえたのだろう。


「おはようございます、ブルーさん」

「さっき少し聞こえましたが私にも敬語使わないでください。そして是非『ブルー』と呼び捨ててください」


「‥‥‥わかった。ブルー、オリザ酒の具合はどうだい?」

「泡がたくさん出てきて順調に進んでると思いますよ」


 酵母がちゃんと増えて育っている様だな。


「ブラン、ブルーの作った酒を蒸留して蒸留酒を作るんだ。ブランはブルーの醸造の手伝いを、ブルーはブランの蒸留の手伝いをお互いにしてくれよ」


「「はいっ!」」


 二人は案外相性が良さそうだ。


「じゃあ今日はお互いの仕事を見てどう手伝ったらいいか教え合おうか。まずブルーはどう手伝って欲しい?」


 ブルーは悩んだ顔をした後呟いた。

「そうですねぇ‥‥‥、ブランは力が強いから酒の入った樽を運んで欲しいですかね」

「それならお安い御用だ、です」


「ブランは逆にあるか? 手伝って欲しい事」

「オレは酒造りは完全に素人だからいろいろ教えて欲しいかな? です」


 いい感じだな、お互いがない部分を持っている。補い合えば良いコンビになりそうだ。

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