第60話 戻ってみると

 俺がトイレから戻るとみんなで腕相撲大会を開催していた。

 フルルはもちろん見学だ。


「ッシャァ!!!! アタイの勝ちだ!」

「くぅー!! ドワーフと言えど女に負けるなんて‥‥‥」

 イブとマールの勝負はイブの勝ちらしい。


 イブは女性と言えどドワーフだからな。


「次は誰だい? 勝負する奴はいないのかい?」

「はーい! アタシがやるぞ!!」

 立候補したのはセリスだ。


 レフェリーはブルーさん。ブルーさんは参加する気ないな。


「はい、双方腕の力抜いて‥‥‥。レディ‥‥‥ゴー!」


「ぐっ‥‥‥!」

「ぬぬぬ‥‥‥!」

 イブとセリスの腕力はほぼ拮抗していた。若干セリスが押しているか?

 

 テーブルがギシギシいってる。嫌な予感がする‥‥‥。


ガターーン!!!


 腕相撲をしていたテーブルが壊れた。

 なんという腕力の応酬か‥‥‥。

 セリスの手が上になって倒れていた。


「アタシの勝ちだ!! おらぁ! 男ども、だらしねぇなぁ。アタシに勝てんのか!? かかってこいやー!!」


「そこまで言われちゃあワシもやらざるのえんのう‥‥‥」

 セリスとロキソの試合になった。


「さすが、ドワーフ。ゴツい手してるな、オッサン」

 セリスが煽る。


「ふん! 小娘が、調子に乗るでないわ!」

 ロキソが受け答える。


「双方、力抜いて。レディ‥‥‥ゴー!!」


ガッ!!!! ギシギシ‥‥‥!


「ぐっ‥‥‥、なかなかやるのぅ!」

「オッサンこそ! ただ飲んだくれてるだけじゃないんだな‥‥‥」


 ロキソが若干優勢だ。


「くっ‥‥‥、『身体強化』!!!!」

「ぬっ! なっ!? ず、ずるいぞぉ‥‥‥」

 セリスが身体強化を使った。前もってルールとして定められてないから使ってもいいのかもしれないけど‥‥‥。そこまで負けたくないんだ。

 セリスが勝った。



「おい、そこの新人! かかってこい!」


「ふん‥‥‥女相手に勝負する気はねぇよ」

 熊獣人のブランは冷静だ、良かった。


「まぁ、そう言っておけばみんなの前で負けなくて済むもんな」

 やめろ、セリス。煽るな! お前、相当酔ってるな。


「そこまで言われたら黙ってられねぇぞ!? いいだろう、獣人の筋力舐めんなよ!?」


 そんな簡単に挑発に乗るなよ‥‥‥。冷静じゃなかったんだ。


「レディ‥‥‥ゴー!!」

 セリス、今回は最初から身体強化している。が‥‥‥。


「ぐっ‥‥‥、負けらんねぇ!! こなくそー!!」

「ぐぬぬ‥‥‥! うあっ!!」


 セリスの身体強化が切れたらしい。派手に転がっていくセリス。


「っしゃあ!!! じゃあオレ様がこの村一番って事か?」

 勝って喜んでいるブランさん。

 その通りだよ、おめでとう。

 あー、やっと終わるわ。



「‥‥‥お待ち下さい。そのセリフは聞き捨てなりませんね、この村の一番はエドガー様に決まってます」


 ティナ!? 

 おま、せっかく終わりかけたのに‥‥‥!


「エドガー様は貴族ですから直接この様な事は致しません。不肖ながらワタシが受けて立ちましょう。貴方が負けたら今後一切不平不満を言わず、敬語もしっかりと使うように‥‥‥」


「面白い! 俺が勝ったら給料倍にしてもらうぜ」

 おい、待て。


「いいでしょう」

 おいっ! 勝手に決めんな!!



「レディ‥‥‥ゴー!!」

 いきなり勝負始めやがった! 

 ブルーさんまで!? ちょ待てよ!


「ぐっ‥‥‥!?!? なんで!?」

 ブランさんは多分全力だが、ティナの腕は微動だにしていない。


「所詮はこの程度‥‥‥、ハッ!」

「うあっ!!」

 一気をティナが押し返し、先程のセリス同様に派手に転がっていくブランさん。


「‥‥‥この程度でエドガー様の地位を奪おうなど片腹痛いですね」

「な‥‥‥!? なんでそんな細腕で‥‥‥?」


 ティナはノナン族。見た目の腕は細くとも腕力は強い。ドワーフよりも獣人よりも。


「この場においてはワタシが暫定一位です。ワタシの望みは一つ‥‥‥あなた方全員、エドガー様を敬い、従うように。それだけ‥‥‥」

 そこまで言うとティナの酔いが回りきったのか倒れる様に寝てしまった。


 ティナ、お前酒弱かったんだな‥‥‥。


「あー、ティナのさっきの発言はナシで。明日からもよろしく」

 

 誰も本気にしないだろうけど一応言っておいた。

 お開きにしてティナはブランさんに運んでもらった。

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