第32話 騎士爵様②

「ん? 名前がエドガーで12歳? 其方はここの生まれか!?」

「いえ、ここには先日流刑者として来ました。生まれは王都です」


「やはりストライク家の天才児か!! 何故このような所に!?」

 身元がバレてしまったらしい。


「祝福の儀でスキルを何も授からなかったから流刑と相成りました」

「スキルが‥‥‥何も!? そんな事があるのか‥‥‥?」


 スキルが与えられないというケースは今まで無かったからな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(まてよ、スキルが与えられなかったという事はこれは全て自力で思いついているという事か?)


 パーシヴァルは最初エドガーが【賢者の智慧】や【叡智】などの知恵や知識を得られるスキルを授かったのだと思った。


 だが違うという。スキルの確認は教会に行けばすぐにわかる。ここで嘘をつく理由はない。


(これほどの才能の持ち主を‥‥‥ストライク家はスキルがないという理由で手放したのか!?)


「エドガーよ、実家のストライク家への未練はあるかな?」

「‥‥‥正直なところ、あの家からは追い出されたので。これまで育てていただいた感謝の気持ちはありますが」


 その言葉を聞いたパーシヴァルはエドガーの両肩を強く掴む。

「エドガーよ、其方我が主に仕える気はないか? 私が推挙させてもらう」


 エドガーは想定していた。我ながら上手く戦ったという自負もあった。上の人に報告が行けばこうなる可能性もあるな、と。

 だから返答も考えてあった。


「パーシヴァル様、私はまだここでやる事がありまして‥‥‥今すぐにというわけには‥‥‥」

(今回の戦いでぐちゃぐちゃになった畑を直す指示をした方がいいだろう。何よりドワーフ達との約束『火酒作り』を実現しないと。奴等との約束を反故にして国が傾いたなんて話も聞いた事あるし‥‥‥)


「ふむ、出来る事なら今すぐ連れて行きたいところだが。事情があるなら仕方がない。では一度我が主ウェストール辺境爵に会って話してもらえないだろうか?」

「はぁ、まぁ会うだけならば‥‥‥」


「このパーシヴァル、其方と共に我が主に仕えられるよう全力で力を貸そう! なんでも言ってくれ!」

「では、その話の続きは村長宅で。ここもそろそろ冷えてきましたし‥‥‥」

 日が傾いてきて城壁の上は風が強く吹いてきた。


 降りてきたエドガーを迎えたのは、解散せずにその場に残っていた多くの村民だった。

「エドガーくん、大丈夫だったか!?」

「偉い人と一緒に行ったから心配になっちゃって‥‥‥」

「騎士様! エドガーくんはオラ達の村を救ってくれたんじゃ。お咎めしないでけろ!!」

「騎士様!」

「騎士様‥‥‥!!」


 この光景を見て、この場を制してパーシヴァルは説明する。

「あー、皆のもの。安心せい、エドガーにはお咎めどころか勲章が与えられるぞ」


「!!!? 勲章!?」

「エドガーくん、お貴族様になっちまうだか?」

「あんらー、めでてぇなぁ!!」

「こりゃあお祝いだな、戦も勝った事だし!!」



「そうだ、戦勝祝いだ!」

 

 パーシヴァルはさらに続けた。

「戦に勝ったら祝わねばな! 持ってきた補給物資を使ってもらって構わん。盛大にやろうではないか!!」

「「「おー!!」」」

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