第31話 騎士爵様

「先程は大変失礼致した。エドガー殿で良いかな?」

 騎士爵様が平民の俺に向けて手を胸に当て頭を下げる。貴族的には有り得ない事だ。

 この腰の低い騎士爵様の振る舞いはごく自然体だ。おそらく普段からこうするのが当たり前の誠実な人なのだろう。


「頭をお上げください、パーシヴァル様。そしてどうかエドガーと呼び捨てにしてください」


「うむ、では遠慮なくいろいろと聞かせてもらおう。エドガー、この要塞の様な城壁はなんだ? 以前ここに参った時はこんなもの無かったはずだが?」

「はい、ドワーフの建築魔法で作りました。まだ途中ではあるのですが。ご興味がお有りですか?」


「この様な見事な城壁、辺境領都にも是非作って貰いたいものだと思ってな」

「わかりました。後ほど作ったドワーフを紹介させていただきますね。よろしければ城壁をご案内致しますが?」


「ふむ、実際にどう戦ったのか見てみよう。案内を頼む」

「承知致しました。足元にお気をつけて」


 城壁に登ったパーシヴァル卿。

「‥‥‥なんだか妙な形をしておる気がするが」

「説明させていただきますね。この城壁はこう五芒星の形をしております。まぁこれは完成形の話で今はまだ一部しか出来ていないのですが」


「ほう、わざわざこういう形状にしたのは理由があるのだろう?」

「もちろんでございます。例えば方行(四角形)の形状であるとこう死角が存在します」

「うむ、そうだな」


「ここの場合はこういう形でここに門があります。敵は城壁が高いので門を突破しようと門に集中します。すると‥‥‥こう、こちらは二方向から攻撃出来る事になります」

「おお!!!! なるほど!! この高さがあれば並みのモンスターでは乗り越えられぬだろうの。しかしどう戦ったのか? 住人全てが弓の使い手なのか? それとも魔法使いでもいたのか?」


「いえ、こちらの魔道具を使いましてございます」

 騎士爵様に小銃を見せる。もちろん弾は抜いた。訝しげに銃を手に取りしげしげと眺める。


「この魔道具は如何にして使用するのだ?」

 かくかくしかじかと銃という兵器の説明をする。


「なるほど‥‥‥、弓に矢が必要なようにこの銃には弾が必要なのか。これは其方が考えついたものなのか?」


 うーん、前世の知識とこちらの素材の知識で作ったものなんだけど。『はい』で良いのかな?


「本を読んで載っていたものを私なりに改良したものでございます」

「うーむ‥‥‥見事である。其方、歳はいくつになる?」


「先日12歳になりました」

「なんと‥‥‥!! その若さでこのようにいろいろと!!」

 なんだかこの人驚いてばっかりだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る