第30話 応援
入ってきたヒゲの騎士様に訊ねられた。
「こちらの要塞の責任者は誰か?」
いや、要塞ではないんだけど。
村の城壁‥‥‥いや、それも変な言葉だな。
村壁?
「村長‥‥‥は今居ないんだっけ。そうすると、俺か。はい、ボクです」
「この忙しいのにふざけるんじゃない!!」
えー? 怒られた。
すると怒りを必死に静めた顔ですっと横に立つティナは懐に右手を入れている。
いや、やめなさい。戦いでほとんど出番無かったからって。
村長が息を切らせて走って戻ってくる。おそらく軍と一緒に戻ってきたのだろうな。
「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥」
「村長さん、はい、お水」
「ゴクゴクゴク‥‥‥プハァ! エドガーさん、ありがとうございます。やはりうちの水が一番ですな!」
一気に飲んだ。冷たい水飲み過ぎるなよ。
「‥‥‥テオ殿、この要塞は一体‥‥‥? 誰がこんなものを?」
騎士様が村長に質問する。
息を整えて落ち着いた村長は膝をつき手を胸に当てる。例の『臣下の礼』というやつだ。周りの人も同じようになったので俺もティナもそうした。
「パーシヴァル様、ここは要塞ではありません。私の村、テオドールの村ですよ」
「はぁ!? テオ殿まで‥‥‥、冗談を言っている場合ではないですぞ」
パーシヴァル・リバティス騎士爵。確かウェストール辺境爵の副官だ。性格は真面目で乗馬と剣の腕は一流。
「冗談ではありませんよ。ほら、あそこが私の家です」
立ち上がり自分の家を指し示す村長。
「あのボロ家はたしかに‥‥‥!! いや、失礼致した!」
やっぱり誰が見てもボロ家なんだな。この真面目な騎士様がついポロッと言ってしまうくらいの。
「いえいえ、それは事実なので良いのです。他にも地形とか見覚えがございますでしょう?」
「‥‥‥うむ、言われてみれば。ではここが本当に?」
「ええ、間違いなくテオドールの村です。ご覧の変わりようですのでお疑いになるのも仕方のないことではありますが‥‥‥」
「うむ‥‥‥テオ殿がこのように手掛けたのですか?」
村長は首を横に振って俺に向けて手を指し示す。
「いえいえ、まさか。全てはこちらのエドガー様のご指示によるものです。この防衛戦の指揮も取ったのも彼です」
「なんと‥‥‥」
騎士爵様はこちらを振り向き目を見開いて固まってしまった。
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