第27話 襲撃

 予定日当日の朝、大森林の奥からたくさんの鳥達が一斉に飛び立ったのが見えたとフルルから報告を受けた。


 いよいよ来たか‥‥‥。


 ふぅ、と一息吐いてから。

「早鐘を鳴らせ! 全住民を急いで避難させろ。門は全開にして」

 次々と指示を出した。


カンカンカン!! カンカンカン!!


 早鐘が鳴り響く。訓練してあるからすぐにやってくるだろう。


「セリス!! 一番奥の住民宅へ!! 避難誘導を頼む!」

「任せとけって! 行くぞ、お前ら!」


 セリス達は馬に乗って城門から出て行った。

 住民は逆に次々と入ってきた。


「門に入ったらすぐに立ち止まるな。中央まで進め。後続が入れなくなる!」


「エドガー様! モンスターが森の端に見えました。約2キロです!!」

 フルルが叫んだ。


「フルル、射程距離に入ったら住民とセリス達に気をつけて援護射撃しろ!」

「はいっ!!」

 フルルは俺のあげたポーションを飲み、栓をして懐にしまった。


「辿り着いた男衆は城壁に登れ! 各自配置につけ!! 銃撃の準備だ!」

 長距離射撃を期待出来る者はフルルを除いたらもう一人だ。確実に当たる距離まで引きつけた方がいい。


 俺の肉眼でもモンスターが見えてきた。思ったよりも進軍が速い。


ガチャッ!! 

 フルルのライフルのボルトアクションの音。


「‥‥‥射程距離に入りました。一番近いモンスターから確実に一体ずつ仕留めます」

「任せた。住民達の銃撃が始まったらお前は見張り台へ移動してくれ」


 パキュッ!!!!


 最後尾の住民に一番近いゴブリンの頭が弾けた。豆粒よりも小さくしか見えないのに‥‥‥。

 さすがはフルルだ。


 フルルの射撃音はサイレンサーをつけた様な銃声になっている。風精霊の影響らしい。


ガチャッ!!!! キィンッ!

パキュッ!!!!

 再びボルトアクションでライフルから排莢され、狙いをつけて撃つ。

 弾丸は六発入る。フルルの足元には同じライフルがもう一挺置いてある。


 あっという間に六発、弾を使い切る。


「はいっ!! フルルさん、充填はボクに任せて!」

「‥‥‥ありがと、はいっ」

 弾を充填してライフルを渡すのはジョイだ。


 充填役はジョイ自ら立候補した。超一流のスナイパーの技術を目の前で見られる滅多にない機会ではある。

 憧れるのはいいが、凡人に到達出来る域ではないけどな。


 フルルの援護射撃により無事最後尾の住民が門の中に入れた。あとはセリス達が駆けてくるのが見える。

「セリス! もう大丈夫だ! 門に逃げ込め!!」

「わかった! 戻るぞ、お前ら!」


 セリス達はモンスター達に囲まれる事もなく門内に飛び入った。


「内門を閉めろ!!」

 ガラガラガラ!!!! ガシャン!!


 城門は落とし格子という西洋の城でよく見る格子状の鉄の扉だ。内側と外側にある事で門の中で閉じ込める事が可能だ。

 もちろん罠が仕掛けてある。

 こっちの世界ならではのな。


 モンスターの群れは勢いを増したように進んでくる。


「全員準備出来たか!? 撃ち方用意!!」

「撃ち方用意!!」

「‥‥‥ち方用意!!」

「‥‥‥用意!!」


 端まで声が届く様に全員で叫ぶ様にした。

 

「撃てぇ!!!!」


ババババババババンッ!!!!!!!!

 一斉射撃により多くのモンスターが倒れ、群れの動きが止まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る