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 情報提供者である美術部員の彼は、美術準備室について、めったに使わない物置と化していて開かずの部屋みたいなものだと言っていたけれど、そのせいなんだろう、部屋の天井には小さな蛍光灯がついていたんだけど、もう球が切れかかっているようで、気味の悪い感じに点滅を繰り返すんだ。


 明るくなったと思ったら、キンッといったような嫌な高い音をたてて、一瞬明かりが消える、そしてまた光る、これが続く。


 ホント、七不思議の最後のオオトリにふさわしいムードの悪さだった、最高だ、って僕はそのとき思った」



 いやいやいやいやいや、無理無理無理…やだって叫んだ女子の気持ち、俺、超わかるよ、わかりみがすぎるよ、そんなムーディーな部屋マジで入れない、速攻で犬彦さん呼ぶわ。



 「だけどあおいには、そんなこの部屋の雰囲気がそうとう堪えるようだった、ついには僕の腕にしがみつきはじめた。



 そんな彼女に僕が、「だいじょうぶ? あおい」と声をかけるのと同時に、またイライラした様子で千秋が、「おい、ビビり過ぎなんだよ、なぎから離れろよ」って、あおいにつっかかるんだ」



 (※五十嵐くんの下の名前は、梛(なぎ)という)



 「あおいは怖いものが苦手なんだ。

 それでも今回の『血の涙を流す絵画』の捜索にあおいも参加することになったのは、彼女自身の強い希望があったからだ。


 例の怪奇現象の検証をするためには、どうしても実行時には夜になってしまう、だから今回の取材は僕と千秋の二人だけで行ったほうがいいんじゃないかって事前に提案していたんだけど、千秋、そしてあおい自身が、それを善しとしなかったんだ。


 あおいには、新聞部のメンバーとして、それがいかなる内容の取材であっても部員として全うしなければならないという決意があり、さらには千秋からの「なんだよ、こんな簡単な内容の取材が怖いのかよ、根性ねーなー」という言葉に、絶対に屈服したくないという意地があったから。


 点滅する光のなかで、あおいの顔が、恐怖で歪んでいるのが見えた。


 あおいは、今にも涙がこぼれてしまいそうな潤んだ瞳で、僕をみつめている。

 そして、こわばった声で、こんなことを言ったんだ。



 「な、なぎ、だって、壁…。

 壁が、シミだらけで、な、なんか、血が飛び散ってるみたいな…。

 …気持ち悪くないの?」



 「壁がシミだらけだって?」



 あおいの言葉に、僕と千秋は周囲の壁を見渡してみた。


 

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