第7話 真相
空が闇に染まり、黄金色に輝く月がその姿を現す。
「いやぁ、いい風呂でおじゃった」
「それはよろしゅうございました」
湯浴みから戻った
「そなたは?」
「
そう言って彼女は顔を上げた。
物静かではあるけれど、どこか聡明さのうかがえる印象の女性。
姫君と違うのは、控え目で出過ぎない性格ゆえか。
「では、姫さまがお待ちしておりますのでこちらへ」
彼女は立ち上がると、大納言と共に儀式場へと
庭先ではすでに儀式の準備が整いた。
左右の
すると、冷たい白んだ空気が氷の柱から立ち昇った。
昨今、遥か
なんでも、ザラザラした真っ白い氷のようなものから冷たい煙が噴き出すそうですが、それに近いものを覚えます。
氷の手前には祭壇があり、その上では
向かって左の
「いま、姫さまが
「釣殿で月見とは風流でおじゃるな。のう、
「はっ、さようでございまするな」
大納言の言葉に後ろで控える若侍が同意する。
ちょうど祭壇の上では姫君が祈祷終えてお立ちになられたところである。
池の方を見やると、先端に手鏡を
童子は全部で三人で、残りは
その一人、太刀持ちが鞘を雪洞の方へと
「またせたのぅ皆の衆、とくとご覧あれ!」
姫君が高らかにそう
にわかにゆがむ視界。
舟の上で童子が太刀を抜いた刹那、槍先の鏡が光を放った。
そして——
「なんと! これは一体どうしたことでおじゃるか?」
大納言が驚きのあまり叫び声をあげる。
「見ての通り、空飛ぶ車でありますよ」
懐に忍ばせていた扇を口元で開き、目を細めてお笑いあそばれる姫君。
その姫君を除き、その場にいる全ての者の眼が闇に浮かぶ車に釘付けになった。
予め『種』を明かされていたであろう瀬蓮すらも。
「信じられぬ、姫はよもや天の
「であれば
「では、これは陰陽の術でおじゃるか?」
「はい。『
「しんきろう?」
つぶやきながら若侍
「さよう、天文の
「まさか、帝は
「なれば、まだ救いはありましたでしょう……」
「と申されると?」
「噓の中に
そう答えてから姫君は天を
後に
「そう語る姫さまは、どこか寂しげでありました」と。
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