第4話 若侍
さても美丈夫な
切れ長の
貴族の書き眉とは違う長く伸びた雄々しき眉毛。
その端正な顔立ちの貴公子が再び
「
意外にも、殿方の口からお詫び言葉が飛び出した。
思いのほか
その様子に姫君も感心してか、少し目を細めて曰く。
「くるしゅうない。いやしくも
「まさか
「存じておる。
「これは恐れ入りまする。すでに御耳に入っておられましたか! その姫君、なよ竹の……」
若侍——
ぴしゃり!
強く、されど
「なよ竹などと呼ばわるそうだが、
「いんべ?」
「
そこで若侍、おおぎょうに目を見開いて曰く、
「いつ、
「
そこで、再び扇をぴしゃりと叩く姫君。
「そうそう、今一つ
「おかしき話とは?」
「散吉の山には金の鉱脈があるという」
「まさか、
「それはない。
「なにゆえに、そうお考えあそばれますか?」
「風水よ」
「ふう……すい?」
「さよう、わが
「うらのつかさ……話には聞いておりましたが、よもや
わたくしの家も、お爺様の代までは陰陽寮に務めていたのですが、急速な文明開化と共に廃止となってしまったそうです。
お爺様は時折、そのことで「
「みてくれで人を測るようでは
「これはご無礼
「ま、金というのは
「なんですと?」
「ふふ、正しくは
「こんごう?」
「知らぬかえ? まばゆき輝きを放つ宝の石よ」
「さあ、金剛と言えば仏像くらいしか思い当たりませぬ」
「ふむ、そなた……さてはまだ恋を知らぬな?」
「それがしは侍にて、
「つまらぬのう」
「では、
そこで殿方、妖しき笑みを浮かべるや、袖口から一本の矢を取り出します。
鏃のある先端は布で丁寧に巻き付けてあった。
「なにを隠そう、それがし月の侍と一戦交えておりまする」
「ほう、それは真か?」
「一戦交えたと申しても、こちらから一方的に矢を射ただけで、相手にはされませなんだが……」
言って布を取ると、見事に欠けた
殿方曰く、
「これは、その時の矢にござります」
「何か固いものにでもぶつけたか?」
「いえ、むしろ敵の額を射抜いたものです」
「待て、それが真ならば、その者は死しておろう。それで相手にされなんだは無理がないかえ?」
しかし、若侍はやや困り果てた様子でこう述べる。
「それが、矢は額を射抜いたまま闇の奥へと突き進み、射抜かれたはずの敵兵は何事もなかったかの如くその場を立ち去ったのでござります」
「矢が頭をすり抜けたと申すか?」
「はい」
「ほほぅ、
と、そこで姫君は扇を口に当て、ほんの少し笑みを浮かべ——
一言、こう言い放った。
「
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