第3話 来客
聞くところによると、
それがある夜、一人の娘を授かってから次第に羽振りが良くなり、ついには村の長者となって
山で隠された金塊でも見つけたか、あるいは……
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などと、姫君が思案にふけっていたところへ、
「たのもう!」
その殿方の声が聞こえてきた。
声の主はこう名乗ったという。
「それがし、
わずかと言えども寝殿にまで響いてきたことを考えると、おそらく馬上から声を張り上げたものと推測されるでしょう。
仮にも貴人の家の前で馬も降りずに声をかけるなど無礼千万。
姫君がご
そこで姫君、侍女の
膝元の小さな手鏡を握りしめ。
「楽しみよのぅ、いったいどこの馬の骨……もとい貴公子が来るのやら」
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姫君、身支度を整えると
左手を見やると、
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ここで
うきふねや いざよいすぎて わびしけり
かけたる
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なすていおん?
たしか
やや、疑問の残る言葉ですが、わたくしは取り合えず先を進めることにします。
「あの……姫さま?」
間の悪いことに、後ろから
「え、えっと……ほら、
「ええ、もちろんです。それは見事な真円でしたから」
「さよう、それで月見舟を浮かべて楽しんでいたのに、十六夜も過ぎた今では誰にも使われずに停まっているので、かつての淡い恋が終わったような侘しさを感じておったのよ」
「さようで……それで、その『なすていおん』というのは?」
「それはのう……て、
「あ、はい……」
半ば呆れるような目で姫君を見やる瀬蓮。
後に姫君はこの時のことを、
「主に対しなんと無礼な侍女であろうかと思ったものよ」
などと語り草にしていたという。
「さようなことより、先程から殿方が
「そうであった。では、参ろうか」
「はい」
きびすを返し、釣殿と反対側にある
そして
「われがここの当主、
「はっ」
透るような声で返事して、ゆっくりと殿方は顔を上げる。
それは、凛とした偉丈夫……いや、美丈夫の貴公子であった。
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