第35話 商業施設
☆初ギフトいただきました!!!
☆つまりはじめての人で(ry
☆ありがとうございます! 更新がんばります!!!
☆近況ノートに限定SS載せるのでそちらもお楽しみいただければ幸いです!
向かう場所がはっきりしていることもあり、三人はほぼ直線で商業施設を目指していた。
途中、何度か家の屋根を上ってショートカットしたが、飛べるミカエルのみならず職業レベルが高くステータスが向上している二人にとっても大した作業ではなかった。
「ふぅ……けっこうデカいな」
「ホームセンターに色々くっついてる感じ、かな?」
相変わらず不気味な文字列は何が書いてあるかわからないが、木材が立てかけられたスペースがあったり植木鉢みたいなものが並んでいるスペースがあるところを見ると、朱里の予想も大きくは外れていないだろう。
ただし、
「謎植物も微妙にホラーっぽいな」
「枯れてるっすね」
植木鉢に植えられているのは奇妙な捻じれ方をした樹木だ。すべて枯れているあたり、やはりまともな空間ではないことを災確認させられる。
「とりあえず入ってみるか」
正面入り口は自動ドアになっているようだが、シャッターが下りていて動きそうになかった。錆の浮いた金属のシャッターはこじ開けられないこともないだろうが、それなりに手間がかかりそうである。
何より、破壊音につられてモンスターが集まってきたら目も当てられない。
「別の入口を探しましょ。壊すにしてももう少し目立たないところが良いわよね」
「だな」
ぐるりと壁面を確認しながら歩くこと10分。駐車場から回り込んだところに荷物を搬入するためのガレージがあるのを見つけた。脇には警備員の詰所や喫煙用のスペースもあり、まさに従業員用といった風情だ。
「やっぱり鍵かかってんな」
「でも窓割れてるわよ」
どこか荒廃した雰囲気を感じさせるが、割れた窓から内側に手を入れ、鍵を開ける。
果たして金属の扉は不快な音を響かせながら開いた。
「いくか」
死角が多いこともあってそれぞれ武器を構えながら進んでいく。
意外なことに、中は電気がついていた。
「どこから電気が来てるの……?」
「そもそも
「でも商品の類は一つもないっすね」
店内はがらんとしていた。
本来ならば商品が並べられているはずのところは空の金属棚が並ぶのみで、さびれた雰囲気も相まって潰れた店舗内を見ているようだった。
そろりそろりと進む一行の耳に、聞きなれない音が響く。
——くけぇ。
声帯が潰れたような、無理やり絞り出したような声。
あるいは何か人間以外の鳴き声だろうか。
顔を見合わせ、武器を握り直したところで、空の金属棚の隙間から《それ》が顔を覗かせた。
一見すると恐竜に見える。
ヴェロキラプトルのような、二足歩行するタイプの肉食恐竜だ。
ただし、ヴェロキラプトルの身体は羽毛に覆われているわけではないし、牙の代わりに嘴がついていたりもしない。
「さっきの怪鳥の雛か!?」
雛はカナタたちを見て首をかしげながらも、未知のオモチャを見つけた子供のようにおずおずと近づいてくる。
脇からも数匹。
金属棚を飛び越えてさらに数匹。
あっという間に囲まれてしまう。
慌てて踵を返そうとした三人だが、出入口から轟音が響き渡った。
——グゲェェェェェェッ!!
搬入口から無理やり体を突っ込み、ハマっている怪鳥がいた。
「クソ、倒しながら奥に行くぞ!」
「了解!」
「と、とりあえずこっちっす!」
ミカエルに敵の少ない場所へ誘導してもらいながら、カナタと朱里は必死に走った。
チェーンソーで近くの雛を叩き斬れるカナタはともかく、遠距離を得意とする弓は相性もあまり良くない。
スキルを連発しながら進めば、あっという間に朱里の顔色は白くなっていく。
「朱里、俺が食い止めるからもうスキルは使うな!」
「でも――」
「ここで倒れたらマジで助けられないからな!?」
「そうっすよ! カナタさんが無惨にも四肢や肝臓をつつかれて引きずり出されながら死んでるうちに逃げるっす!」
「ミカエルてめぇぇぇぇぇ!」
逃げ込んだ先、朱里が中央ホール付近のエレスカレーターを駆け上がるのを見て、カナタが仁王立ちになる。
幸か不幸か、ミカエルの暴言への怒りをぶつける相手には事欠かなかった。
一般的に鳥類は空を飛ぶために空洞が多くスカスカな骨をしている。
カナタがチェーンソーを叩きつけると羽毛と血肉が飛沫となり、中の骨が折れる感覚が返ってくる。
即座に光の粒になったりはしないものの、一撃を見舞うだけでも戦闘が難しいレベルのダメージを与えられた。
振りかぶったチェーンソーを横薙ぎに振るえば、雛たちが冗談のように吹き飛びながら墜落する。
「無双ゲーかコレ……!」
カナタは暴れた。
ミカエルへの怒りを発散するかのように。
無双系のゲームに没頭するかのように。
エスカレーターを守るどころか、雛たちが密集しているところに自ら突っ込んでいき、蹴散らす。
倒れた雛の頭を踏み抜き、首をへし折り、嘴を砕きながらチェーンソーを振り回す。
ものの五分程度で、雛たちは多くが経験値へと姿を変えていた。
残った雛たちにも多少の知能はあるのか、むやみやたらにカナタには近づかず、遠巻きに様子を伺っていた。
は、と息をついたカナタはエスカレーターを駆け上がり、緊急停止スイッチを押す。
そのままタラップの隙間にチェーンソーを差し込んで無理やり
「……これで追って気にくくなるだろ」
雛たちがエスカレーターに近づいてこないことを確認してから周囲を伺う。
「どうやって朱里達を見つけようか」
声を出しながら進むのが一番だろうが、雛以外のモンスターがいないとも限らない。
どうしたものか、と見回したところで慌てた様子のミカエルが飛び込んできた。
「カナタさん、大変っす!」
「どうした? 朱里は?」
「その朱里ちゃんが危ないっす! 今すぐこっちにくるっす!」
慌てて駆け出す。金属棚の間を潜り抜けてたどり着いたのは、イベントスペースなんかに使われるであろう、ドーム状の空間だった。
ただし、屋根の部分はガラスが砕け、今は骨組みの一部が残っているだけだ。
「朱里は!?」
「あ、あそこっす……! 急降下してきてガッて掴まれたっす!」
ミカエルが指さしたのは、ドームの遥か先、小さなシルエットになって飛ぶ怪鳥だった。
※ヴェロキラプトル
昔は「爬虫類だし羽毛なんかないっしょ」というのが定説だったが、ちょっと前に「そうとも限らなくね?」とか言われ始め、現在は羽毛恐竜だったと考えられている。
映画『ジュラシック・パーク』『ジュラシック・ワールド』で大活躍(?)したことで有名。
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