第10話 近づく関係
「へぇ八雲くんすごいね」
彩音と由香のもとに現れた八雲。調子の回復をしない彩音を気遣い近づいてきた。彼も成績優秀で高校まではつねに一番をとっていた。大学で初めて見つけた自分を超える人を見つけた。次のテストで勝つために彩音には万全でいてほしいと思っているのであった。
休み時間も八雲との会話は広がった。
「ぜんぜん。周りの人が優秀だったから最後までちゃんとできてたくらいだからさ」
八雲が中学、高校と生徒会長をしていたことをほめる彩音。八雲は少し照れつつも生徒会執行部が優秀だったと話す。
「八雲君頭いいからね。みんなを引っ張るリーダーって感じがする」
さっきまで誰なのかもわかっていなかった彩音も話をうまく合わせている。
「高嶺さんに褒められるとかうれしい」
「…」
優等生二人の会話に入り込めない由香は不満そうな顔をしている。
「そういやば高嶺 さんってコンクールに選ばれてたよね。進捗はどう?」
「うーん。まぁいいかんじかな。八雲君ならもう終わってそうだよね」
成績優秀な生徒が選ばれるコンクールがある。順当に行けば八雲であったが成績をみて彩音が選ばれていた。
「高嶺さんが良ければ協力するよ。俺もやる予定だったし、任せた人にはいい成績収めてほしいし」
「え、いいの?助かる」
「…売店いってくる」
由香がたちあがる。不満をためるのに限界だった。
「わかった。いってらっしゃい」
彩音と目を合わせず教室を出ていく。
「俺のせいかな」
「全然。由香さ私を助けてくれたから多分疲れてるんだよ」
由香に申し訳ない気持ちはある。だが、八雲と一緒にいることは嫌がらせのこない一番の抑止力となるのは明らかだ。だから、多少話に入りづらい状況になっても八雲を優先したい。
「朝のこと?」
「うん。それもそうなんだけどいろいろあって・・・」
「そっか。何かあったら頼ってくれよ。彼女も休みことも必要だと思うし」
「ありがとう。八雲君って優しいね」
たった一日で彩音は八雲の良さを知る。八雲コミュニケーションも相まって関係はすぐに近づけた。
「あ、次移動だった。それじゃ」
「うん。またね」
八雲も教室をでていった。
一人になる。由香は戻ってくるとしても、この数分だけでも怖くなってくる。自然と周りを警戒してしまう。
「由香早く戻ってきて」
手の震えは止まらずまただんだんと体調が悪くなる感じがしてきた。呼吸もだんだんと荒くなり始める。体も熱くなっていき汗をかき始める。
「大丈夫?」
由香が戻ってきた。
「由香!」
ぎゅっと抱きしめた。涙がでてきた。
「どうしたの?」
驚く由香。
「ううん。大丈夫」
涙をぬぐう。由香が戻ってきたことで安心して力が抜けた。
「まったく。しょうがないんだから」
彩音の回復はまだ時間がかかるようだ
Beyond Despair 蓮蠱 @rusiruhu
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