第9話 ライバル

 由佳から勇気をもらえた彩音は1日だけ休み学校に復帰した。

 普段通りバスに乗ると由佳がいた。

「おはよ」

「おはよ。昨日が嘘みたいに回復してるじゃん」

 昨日一緒に過ごした由佳からも余裕が見えるほど落ち着くことができていた。

「昨日はありがとう。私頑張ってみる」

 大丈夫という言葉にホッとするとともにもう大丈夫だと確信を持ち始めた。

 

 バスが校門前に到着。

「ふぅ」

 回復したと言っても学校を目の前にすると恐怖が復活してきた。

「ほら、いくよ。あたしもいるからさ」

 そんな彩音の背中を押す由佳。

「ありがとう」

 大きく息をはく。

「大丈夫」

 一息つけ学校の中に入っていく。

 何も変わらない学校。それでも一歩一歩がものすごく重く感じる。ほんの数日の出来事だったはずが自分の考えてる以上に足が重いのだ。

 由佳も自分の考えてる以上に彩音が今回の件どほどおもく感じてるかを理解し始める。

「帰る?」

「ここまできたんだし、頑張る」


「大丈夫?」

 ゆっくりと進む2人に声をかけてくる男子がいた。

「う、うん」

「ならいいんだけど。体調悪いなら無理するなよ。それじゃ」

 陽気な男はすぐにいなくなった。

「誰?」

「えーと見たことあるような。あれだ。八雲君って」

「あーあの人ね」

 八雲周はイケメンの人気者だ。成績も彩音の次と言えるほど優秀。理事長の孫ということもあり、裏に何かあるとも言われている。

「急にどうしたんだろうね」

「いやあんたあんな暗くなってたら声かける人はかけるでしょ」

「そうかな?とりあえず行こっか」

 八雲の唐突な声かけからのすぐに姿を消した一瞬の出来事。そのおかげで少しは軽くなった」

「うん」

 教室に入った。特に何もないことにほっとした。

「大丈夫そう」

「ならよかった」

 二人は席についた。


「隣いい?」

 八雲が現れた。

「あ、うんどうぞ。さっきはありがとう」

「そんな俺は対したことしてない。同じ学科の優等生が次のテストで離脱してほしくないし。俺よりも上なんて珍しいしさ」

 八雲はずっと成績1番をはってきた。しかし、大学に来て彩音という自分よりも上の存在に出会った。

「へぇいうじゃん。ま、勝てるもんならやってみな。うちの彩音はかんぺきだから」

「なんで由佳がいばるの。大丈夫。テストはちゃんとするから」

「そうしてくれ」

 思っていた通り八雲は気さくで優しかった。彩音も八雲と話したことで重く考えていたことを少し軽く見ることもできた。


「ねぇねぇ。きいた?」

「あー本人に接触したんでしょ?テストが終わってからって聞いてたけど早いよね」

「潰すタイミングなんだろうな」

 だが終わるはずの日に本当に意味で彼女を苦しめる出来事が始まろうとしていた

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