第8話 勇気

 由香が迎えに来た。しかし彩音は疲れ切った様子をしていた。体調を崩していたのだった。

 由香は彩音の体調が急変したことが心配になり休んで看病をすることにした。

 体を起こすのもつらそうにする彩音。会話もあまりできないようだ。

「昼食べれる?」

 彩音は小さくうなずいた。食べやすいようにおかゆを作り始める。

「ご、め、ん」

 彩音のかすれた声が聞こえてくる。

「気にしないで。こういう時にと助けるのが友達ですから」

 この原因はおそらく嫌がらせからでてくるストレスだと推測している。そして何かをきっかけに爆発してしまい一気に体調を崩してしまった。


「ほらできたよ。体起こすよ」

 彩音の背中に手を当ててゆっくりと起こした。

「ありがとう」

 スプーンでおかゆを救い彩音の口の中にいれる。口に入れると少しだけだが笑顔が戻ってきた。

「おいしい」

「ありがと」

 食事を進めいていくとだんだん彩音の声も戻ってきて最後の方では自分で食べれるようになっていた。

「由香ごめんね。こんなんじゃだめだよね」

「いいんじゃないたまには。ここ最近の出来事はただごとじゃないし。それでつかれるのも納得できる。早く犯人見つけないとね。そういえば彼氏君には相談したの?」

「…してない」

 いつもの彼氏でない返答はしなかった。

「した方がいいと思うよ。少しでも気が楽になると思う」

「昨日電話あって。話したんだよちゃんと。楽しかった。でも、あのことについては話そうと思ったんだけど怖くなって学校は楽しいっていっちゃった。電話切ったらさ今までは耐えれたのに急に怖くって孤独に感じて涙が止まらなかった」

「それで体調が急変したわけか」

 彩音にとって嫌がらせは耐えれていた。誰にも話さず何をされても気持ちをしっかり持って生活できていた。しかし智也に話せないほど追い詰められているという現実を目の当たりにしたときに限界を感じてしまっていた。これいじょう嫌がらせに合えば自分が壊れてしまうと思ってしまったのだ。それが彼女に今までは感じなかった疲労を与えてしまい体調がわるくなったのだ。

「やめようかな。私にはやっぱり無理なんだよ」

 つい本音が漏れてしまった。

 由香は形相を変え彩音に詰め寄る。

「ダメだよ。彩音はなんも悪くない。きっと嫌がらせする連中は彩音をやめさせるために嫌がらせしてるんだよ。成績もよくて人気もある。嫉妬からされる可能性だってあるんだよ彩音は。すぐに立ち直るのは難しいかもしれない。嫌ならまた休めばいい。出席日数が大丈夫ならあんたなら簡単に卒業できる。だから」

 由香にはわかっている自分の言葉に力がないことを。彩音はずっと強かった。誰にどんな視線を向けられようと自分を保てる力がある。そんな彩音がここまで弱くなるとなるとそれはもう限界なのだと。やめるといったこの一言には重みがあるのだ。

「ありがとう。でも、由香に何かあったら私…」

「私の心配するならもう心配なさそうね。とにかくすぐにやめるとは言わないでね。彩音いないと楽しくないし」

「約束はできないけど頑張るよ」

 手を後ろで組む彩音。その手からを汗がたれ震えが止まらなった。

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