第7話 疲弊した少女

 仕事も忙しくなり彩音からも連絡が来なかったことからやり取りをしていなかった智也。仕事も落ち着き久しぶりに彩音に電話をかけようと思っていた。

 毎日起こる些細な嫌がらせを受ける彩音。由香に支えられなんとか学校に行くことができていたが限界に近づいていた。智也に相談をしたいと思う気持ちはあったがまだ何も話せていない。

 智也が携帯を取り出し彩音にかけてみる。

「…」

 部屋で一人涙をながす彩音。目の前の携帯から着信が鳴り驚く。だが名前に智也と見えほっとする。

「智君久しぶり」

 涙をこらえいつも通り話そうとする彩音。

「久しぶり。最近忙しくてさ」

「そうなんだ。私もいろいろ立て込んでてなかなか電話できなかったんだ。ごめんね」

 久しぶりに会話ができて双方うれしくなる。

「学校はどうだ?」

 辛い。助けてほしい。もうやめたい。…

「もうね。毎日楽しすぎてさ夜すぐねちゃうんだよね」

 本当のことを伝えたい気持ちはあるが嘘をついてしまう。

「そうなんだ。俺なんて先輩がさ・・・」

 智也が仕事場であった出来事を次々にはなしていった。

「智君も楽しそうだね」

「会社には恵まれているな」

「あ、課題忘れてた」

 智也と話すこし落ち着くことができて前から配れていた明日提出予定の課題を思い出した。

「めずらしいなお前が後回しにするなんて」

「うん。だよね。もっとしかっりしないと」

「あんま無理すんなよ」

「大丈夫だよ。いつものことだから・・・。ごめんキルね」

 智也の反応を待たず電話をきった。智也は少し心配にはなったが課題の量が多いのかと思い何もせず終えた。


 彩音は電話を閉じた同時に涙が止まらなくなった。今の環境がつらく課題すら忘れるようになった。みんなの理想が醜態をしている。ちゃんとしないといけない。嫌がらせも注目を浴びているせいだからと暗示をかけるように言い続ける。智也に助けてほしい。由香に迷惑をかけたくない。

「もう限界なのかも」

 課題を終えた彩音は一気に力が抜けたように倒れこみそのまま眠りについた。


「彩音ー」

 目が覚めるとインターホンと同時に由香の声が聞こえた。時計をみると抗議に送れるギリギリの状態。

「由香ごめん先に行ってて」

「彩音大丈夫?」

 力のない彩音の声に心配する。

「ごめん。ちょっと体調悪くて」

 話しながら力が入らないことを感じていた。いつもとは違う。

 カギを開ける音が聞こえると扉があいた。あの日から何かあると悪いからとスペアのカギを由香に渡していたのだ。

 部屋に入ると顔色がものすごく悪い彩音がいた。

「ほんと大丈夫?」

「私はみんなの理想。理想はみんなのお手本にならないといけない。どんなに嫌がらせを感じてもいか…」

 抜けた力から涙がこぼれだした。

「今日休みな。一日付き合うから」

 ずっと耐えていた彩音に限界がきてしまった。それを見た由香は一人にさせるわけにもいかず自分も休んで看病することにした。

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