第6話 続く不安

「これはひどいね」

 由香の元に戻った彩音は涙はこらえている。目の前にあるのは一冊のノートだが、そのノートはズタボロにされ中を見れるような状態でない。今にでも涙が出そうだ。

「いったい誰が。私何かしたかな?」

 嫌がらせをされるということは原因がある。自分が何か悪いことをしたのではないかと考える。

「どうせ妬みでしょ。あんた成績いいし。先生の評価も誰よりも高いからね」

「どうしよう」

「大丈夫だから。しばらくは物は常に持ち歩いてた方がいいかも。ほかにとられたものとかある?」

 もっていたばっくを確認する。

「大丈夫」

「ならよかった」

 彩音が感じる恐怖は今まで経験のないほどすさまじいものだ。今だけなら、まだ落ち着けるのかもしれないが、これからも同じように攻撃を受ける可能性がある。それもいつどこでか予測できない状況。

「由香。私」

「落ち着いて。私と一緒にいれば大丈夫だから」

 表情で由香はどれほど怖い思いをしているのかを感じ取れた。


 午後の授業になる。しかし、恐怖のせいで全く授業参加することができない。常にあたりを見回し誰も手をださないか確認をする。

「彩音授業中だから。落ち着いて」

「ごめん」

 いまは気にせず授業に集中しようと思っている。だが、あらゆるところから感じる視線は彼女の集中力をさいていく。

「由香ごめん」

 たえることができなくなり、教室を出た。

「え、えーと」

 彩音が心配になるも授業からは抜け出せない由香。


 教室をでた彩音は荒くなった息を整えるために深呼吸をする。


 そうだ、智君に連絡しよう。でも、いやダメだ。心配させるわけにはいかない。私はしっかりできる。頭もいい。みんなから期待されてる。ここで誰かに頼ってみとっもない姿をみせらない。


 誰かに助けてもらいたいと思っていてもみんなの理想の自分から離れる可能性がある。そうなれば、誰も仲良くしてくれない。そんな恐怖が彼女を襲う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る