第5話 鬼教官のつらい日
午後休憩が終わると大変な時間となる。また智也は資料作成に移る。
「智也君これもお願い」
「あ、はい」
さらに資料が増えた。
「お、田中。ちょうどいいじゃん。ついでにこれも入れといてくれ」
さらに資料が増える。そう。アナログからデジタルにデータを移す作業は新人である智也が担っている。最初は山住で済んだ資料だったが、次第に二段目が形成されていく。
できても一向に減らない資料作成。勉強のために始めたことであるはずが、ひたすら数字を入れてるだけにように変わっていく。
「はぁ」
「あらら資料増えすぎてるね」
一息ついたタイミングで藤原が登場した。資料の量に驚いている。
「まじでやばいっす」
「二日ってところか」
「いやいや、これ二日ってどんだけ残業すれば」
「大丈夫大丈夫。これくらい、ぱぱっとしちゃえばすむから」
「なら先輩やってください」
弱音をぶつける智也。
「やめておけ智也。こいつにやらせるのは」
水を差すように横に入るさぼりに来た藤木。
「なんでですか?」
「なんで俺でなくこいつがお前の鬼教官に選ばれたか…」
そして失言をして空気のように姿を消していく。
智也は鬼と聞こえ少し恐怖を感じる。だが、藤木以外にやさしい先輩だしと安心を少ししている。
「この量はかわいそうだし手伝ってあげるか。これもらってく」
資料の量が多いフォルダーを二冊持っていった。
智也はそのままデータを入力していく。
「次もらうね」
それはほんの数分の話だった。まだ数ページしかできていない状況でそのできごとは起きた。
二冊ファイルを持った藤原が現れた。
「え、なんて?」
「終わったよ。こんなに書かれてるのに必要なの一部だけだからその部分見ればすぐに終わるよ」
「いやいや」
「データ送ったよ」
パソコンに送られたファイルを開いた。すると自分とは全く同じ量。質は完全に藤原のほうが上のはずの完璧な資料となっていた。
「どうやったんですか?」
「その紙なら、それとそこ。これはこれだね」
智也がもっていたファイルから的確に必要なデータをさしてくる。
「なんせ、こいつ研修でいきなり資料に目を通してだいたいの数字を覚えた超即戦力だったからな。そりゃ。この程度の資料早くなるだろう」
そしてまた藤木が現れた。
「なるほど」
さすがの真面目っぷりに関心する。
「ってことで。やり方教えたし二日で終わらせようか。できるまで返さないから」
笑顔で見つめるその顔からは鬼の形相が感じ取れた。藤木のいっていた鬼教官とは圧力の話だったのだ。
「それより、藤木。さっきなんかいったよね」
「お、おれ仕事に戻る」
「智也君。頑張ってね。私は違う人教育するから」
逃げようとする藤木の首ネックをつかみ、引っ張っていった。…
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