第25話 出立の朝
レイの家の玄関先には、
「お父様、お母様、行って参ります。」
両親に深々と頭を下げる旅装束姿のジュリア。
レイはポロポロと大粒の涙を流す
「気を付けて行っておいで。
先方の人達に迷惑をかけないようにね。」
満面の笑みで頷きながら愛娘の門出を祝っているアビー。
「はいっ!」
アビーの激励に元気な声で答えるジュリア。
「お姉様、行って参ります。」
「ええ、気を付けてね。
今度は皇都で再開しましょうね。」
笑顔の
「女神様、お世話になりました。
ジャクリーンは、皇国のために働きに出ます。」
ジュリアは外套を取り、アイリスに深々と頭を垂れる。
「ええ、ジャクリーン、立派に成長しましたね。
きっとお父上もお母上もお慶びでしょう。」
アイリスの言葉にウルッとするジュリア。
「ほらほら、涙を拭いて…。
そう、貴女には笑顔が一番似合うのだから。」
ジュリアの涙をハンカチで拭い取り、両肩に手を置き、ハッパをかけるアビー。
「はい、お母さん。
では、女神様…行って参ります。」
アビーとアイリス双方に挨拶を済ませ、街道への道を歩み始めるジュリア。
街道との交差点では、二人の近衛騎士がジュリアを待っている。
三人は合流し、二言三言かわした後、皇都に向けて歩き始めた…振り返ること無く。
「行ってしまいましたね。」
ジュリアの立ち去った方角を眺めるアビーのそばに来て耳打ちするアイリス。
「そうね…一時は心配したけれど、もう大丈夫ね。」
アビーの応えにアイリスは目を細め、彼女もジュリアの立ち去った方角に視線を送る。
「もう、お父さん、何をそんなに泣いてるの?」
パトラは涙ぐんでいるレイを窘めている。
「え~…グズッ!だって、おまえよう…うちの可愛い娘が…グズッ!」
レイさん、もう涙と鼻水で顔面が大変な事になっています。
「そんな、今生の別れでもないのだし。」
レイの背中を優しく擦るパトラ。
「でもなぁ…グズッ!でもなぁ…グズッ!」
レイさん、思い出し泣きに突入。
「もう、分かったわよ!納得行くまで泣きなさいっ!
全く、私の時には大泣きしなかったくせに…嫉妬しちゃうわ。」
そう言って、パトラもジュリアの立ち去った方角を眺めた、その顔は満面の笑みに溢れていた。
◇ ◇ ◇
いろいろとダメ親父になっているレイを仕事へ送り出し、食堂に集まるアビーとパトラ、そしてアイリス。
「お父さん、大丈夫かしら?」
不安そうなパトラ。
「まぁ、大丈夫でしょ。」
楽天的なアビー。
「そうね、明日にはカラッと忘れてるわよ。」
微笑むアイリス。
「「「まぁ、明日まで持てば良いんだけど。」」」
三人揃って同じセリフを吐き、大笑いする女性陣。
「ッブゥエックショィ~ッ!」
「うぉ?」
「モンスターが現れたか?」
「総員戦闘態勢!!」
同じ頃、郊外を散策していたレイさん、大きなクシャミをして同僚たちに盛大にビビられる…のでした。
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