第15話 パトラとペット

「お母さ~~んっ!」

 学校から帰宅したパトラが黒い物体を抱えたまま玄関を開けて家に入ってくる。


「お母さ~~んっ!」

 台所のドアを開き、勢いよく入ってくるパトラ。


「どうしたのパトラ、お行儀が悪い。」

 アビーが扉に視線を送るとパトラが青い顔をしている。


「この子…この子に回復魔法が効かないの!」

 黒い物体をアビーに見せるパトラ。

 アビーはゆっくりとパトラの胸に抱かれている物体を見る。


「モフモフの…ケルベロス?」

 アビーは固まる

「けろべろすぅ?」

 パトラは首を傾げる


 黒いモフモフは衰弱しきっている。

「パトラ、すぐに祝別を!」

 アビーは慌ててパトラに指示を出す

「は、はいっ!」

 パトラは黒いモフモフに祝別を行う。

 淡い光に包まれた黒いモフモフは白金プラチナのモフモフになった。

「次、回復魔法っ!」

「は、はいっ!」

 息のあった親子の手当で幾分落ち着きを取り戻した白金プラチナモフモフ。


「とりあえず、この子は預かるから、パトラはこの子を包むためのタオルを準備して!」

「はい、お母さん。」

 パタパタと衣装部屋へ移動するパトラ。


 アビーは抱きかかえた白金プラチナモフモフに念話で話しかける。

『ケルベロスが何故こんなところに?』


 白金プラチナモフモフは片目を開き

『オレの正体を知っている…婦人は何者だ?

 …ああ、我々の同族か。

 …なぜ、魔物が人間とともに住んでいる?』


『けろべろすちゃん、元気になったの?』

 突然、パトラが念話に割り込み、アビーとケルベロスはびっくりして目を丸くする。

 すると、タオルを抱えたパトラがアビーの前に姿を見せる。


 ◇ ◇ ◇


「ケルベロスを拾ってきたぁ?」

「ええ。」

『世話になる。』

 パドラが眠った後、ここはレイ自宅の食堂。

 給仕をするアビーの足元には白金モフモフケルベロス


「ケルベロスってのは、こんな人間社会の近所に生息してるものなのかい?」

 呆れ顔のレイ

「そう…ねぇ…。」

 アビーも戸惑っている。

『…』

 事情があるのか、ケルベロスはだんまりを決め込んでいる。


「で、どうするんだ?」

 レイは食事を済ませ、ケルベロスをジッと見る。

「どうしましょうか…。」

 アビーもケルベロスに視線を向ける。


「聖獣?

 …どういうことだ?」

『!!!』

 レイの視線と飛び出た言葉に絶句するケルベロス。


『何故、我のことを理解している?』

 ケルベロスが牙を剥き出しにして身構える。


 アビーはポンと手槌を打つ。

「パトラの祝別ね!」


 ギョッとしてアビーの方に視線を向けるレイ。

 アビーはテヘペロし、そんなアビーを見たケルベロスは牙を仕舞い、半目になってしまう。


「まぁ、いいか。

 お前たちには話しておいたほうがいい事だしな。」

 レイは、アビーとケルベロスを食台に座るよう促しパトラの話を始める。


 それは、これから彼女パトラの身に起こり得る数奇な運命の事であった。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝…


「お母さ~~ん、行ってきま~す。」

 元気な声を上げ、玄関を開けるパトラ。

 しかし扉の先に父親はおらず、かわりにケルベロスが鎮座している。


「あれぇ~、お父さ~~ん!」

 パトラの声を聞きつけ玄関にやって来たアビー


「今日からは、お父さんのかわりにケロちゃんが一緒に学校に行ってくれるわ。

 学校の中でも一緒にいるのよ、分かった?」

 アビーは優しい眼差しでパトラを諭した。


「うん、分かった。

 ケロちゃん宜しくね。」

 ケロちゃんは喉を鳴らしながら、パトラに擦り寄った。


「じゃぁ、行ってきま~~す。」

「いってらっしゃ~い。」

 母と娘は手を振り合いながら、娘は学校へ、母はそんな娘を見送った。

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