第13話 パトラの一日 ~真夜中~

 今日は満月がキレイです。

 そっと窓から外を眺めると、お父さんが木刀の素振りをしているのが見えます。

 お父さんは努力家です、そんな事をひけらかすこと無く黙々と見回りの仕事をしているお父さんを私は尊敬しています。


 ふとトイレに行きたくなり、部屋を出ました。

 途中、お母さんの書斎のドアから光が漏れていました。

 そっと扉を開けると、お母さんが本を読んでいました、時折メモを取りながら。

 お母さんに気付かれないように、そっと扉を閉めてトイレに行きます。


 …トイレから戻る時には、お母さんの書斎の光も消えていました。

『お休みなさい、お母さん。』

 習いたての念話で独りごちると

『『お休み、パトラ。』』

 パパとママが念話に応えてくれました。

 驚きと幸福感で飛び上がりそうな自分の心と体を落ち着かせ、自室に戻りベッドに入る私。


 でも、まだまだ寝付けそうにありません。


 だって、明日は学校へ登校する日です。

 どんな子たちが来るのでしょうか?

 男の子、女の子…元気な子、可愛い子…楽しみで仕方ありません。

 もう、興奮して眠れそうにありません。


 そういえば、先生という方が勉強を教えてくれるそうです。

 さてさて、どんな勉強があるんでしょうか、とってもワクワクしています。


 明日はパパと学校へ登校します。

 ママは魔物なので街に入ることは出来ません。

 パパも仕事と買い出し以外では街には入りたがりません。

 何だか心配になってきます。


 そう言えば、パパが最近口を酸っぱくして言ってきます。

「教会と祭祀には注意する事。

 街にいる間は、アビー直伝の隠蔽魔法でスキルを隠し通す事。

 無闇に知らない人のあとについて行かない事。」


 そんなパパの言葉に呆れ顔のママだけど

「何かあったら、すぐに念話で伝えるのよっ!」

 と念押ししてきます。


 街ってそんな恐ろしいところなのでしょうか?

 教会や祭祀って悪い人たちなのでしょうか?


 段々不安が募り、別の意味で眠れそうにありません。

 悶々としていると、寝室の扉が開きママが入ってきました。


「パトラ、一緒に寝ましょ。」

「うん。」

 ママが側に居てくれると、とても安心します。

 ママは柔らかくって、温かくって、いい匂いがして…眠くなってきました。


「ママ、お休み…。」

 私の意識は薄れて行くのでした。


 ◇ ◇ ◇


『レイ、パトラは眠ったわ。』

『そうか…明日のことを考えれば興奮して眠れないのも致し方ないかな。』

『ええ、そうね。』

 木刀で素振りをしていると、アビーから念話が入ってくる。


『君も眠りなさい、アビー。』

『そうするわ。

 おやすみなさい、レイ。』

『ああ、お休みアビー。』

 アビーの念話が途絶えたところで、素振りも一服した。

 今夜も我が家の甘えっ子パトラはアビーの胸の中に眠るのである。

 羨ましいなと素直に思うレイなのでした。

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