第11話 パトラの一日 ~午前中~
柔らかな朝日を浴びて私は目を覚まします。
窓の外では小鳥がさえずり、じゃれ合うように飛んでいく影が窓からも見えます。
そして台所からは、お母さんが朝食の準備をする音が聞こえてきます。
私はゆっくりとベッドから起き上がり、寝間着から平服に着替えます。
可愛らしいシャツに袖を通し、ゆったりとしたスカートを履き、髪を整えて、私は寝室を出ます。
「お母さん、おはよ~。」
「おはよう、パトラ。」
台所では、お母さんが鍋をテーブルに置いているところでした。
慌てて食器の準備を始める私を見て
「いつもありがとう、パトラ。」
笑顔の弾けるお母さんです。
「おはよぉ~、アビー、パトラ。」
「おはよう、レイ」
「おはよう、お父さん。」
食器を並べ終える頃、お父さんが上半身裸の上に首にかけたタオルで汗を拭きながら入ってきます。
「「臭うから、ご飯の前に身体を洗ってきて!」」
私とお母さんの一声に、お父さんはソソクサと井戸の方へ向かって行きました。
お父さんが着替えを済ませて戻ってくると、ようやく私たちの朝食が始まります。
「おお、今日はTKGかぁ~。」
「ええ、卵をたくさん頂いたから…ね。」
すっかりご機嫌なお父さんと、お母さんもウィンクで応えます。
はい、TKGとは勿論『たまご掛けご飯』の事です。
我が家の朝食は、お父さんのワガママで『米飯』です…まぁ、お母さんもノリノリなので問題ありません。
問題無いのですが、始めて朝食を見た時に目が点になってしまいました…そもそも『米飯』食の経験がなかったので、本当に戸惑いました。
「「「いただきますっ!」」」
三人が揃ったところで、テーブルに座ると朝食が始まります。
それはそれはTKGを美味しそうに搔き込むお父さん。
そんなお父さんを見て、くすくす笑ってしまうお母さんと私。
「「ごちそうさまでしたっ!」」
食後の挨拶をするお父さんと私。
「はい、お粗末様でした。」
お母さんは笑顔で食器の片付けを始めます、勿論、私もお手伝いします。
「じゃぁ、アビー…行ってくるよ。」
私たちの所作を見届けながらお父さんは自警団の仕事に出かけました。
◇ ◇ ◇
「それじゃぁ、今日は何の話をしようか?」
朝食の片付けも済ませると、お母さんの『お勉強』が始まります。
お母さんの部屋には沢山の本があります…でも、私は文字を読めません。
だから、お母さんが私の希望に沿って本を選び、読んでくれるのです。
お母さんの膝に座り
「今日はね…。」
お母さんはいろんなお話しを知っています…面白い話、楽しい話、悲しい話…そして、嬉しい話。
そして、お母さんはお話をする時は、いつも私の目を見て話します。
少し時間が経つと、お茶菓子を準備してくるお母さん。
お茶菓子の準備が整うと、お母さんはお話しを再開してくれます。
いつか、私がお母さんになった時も、同じ事をしたいと思うほど…私はこの時間がとっても大好きっ!
お茶菓子が無くなったところで、お母さんは掃除、洗濯を始めます。
私もお手伝いをします…出来ることは少ないけど、お母さんはとっても喜んでくれます。
早く大きくなって、お母さんのお手伝いをたくさん出来るといいなぁ…と思うんですけど、お母さんは別のことを期待しているみたいです。
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